枕草子 第182段 随想的章段
野分の又の日こそ
台風の翌日の情景を描く。倒れた立蔀や透垣、吹き倒された草木、格子の目に吹き込んだ木の葉。夜の嵐で眠れなかった美しい女性が、乱れた髪で起き出してくる姿や、若い女童が倒れた草花を起こしてまわる姿を趣深くとらえる。
- 1野分野分のわきののの又又またののの日日ひこそこそこそいみじういみじういみじゅうあはれあはれあわれにににおぼゆれおぼゆれおぼゆれ。。。たてじとみたてじとみたてじとみすいがいすいがいすいがいなどなどなどのののふしふしふしなみなみなみたるたるたるににに、、、せんざいせんざいせんざいどもどもども心心こころぐるしげぐるしげぐるしげなりなりなり。。。大大おおきききなるなるなる木木きどもどもどもたふれたふれたうれ枝枝えだなどなどなど吹吹ふききき折折おららられれれたるたるたるだにだにだに惜惜おしきしきしきににに、、、萩萩はぎ女郞花女郞花おみなえしなどなどなどのののうへうへうえににによろぼひよろぼひよろぼい這這はひひい伏伏ふせるせるせる、、、いといといとおもはずおもはずおもわずなりなりなり。。。格子格子こうしのののつぼつぼつぼなどなどなどにににさささときはときはときわをををことさらことさらことさらにににしししたらたらたらむむんやうやうようににに、、、こまごまこまごまこまごまととと吹吹ふききき入入いりりりたるたるたるこそこそこそあらかりあらかりあらかりつるつるつる風風かぜのののしわざしわざしわざともともともおぼえおぼえおぼえねねね。。。いといといと濃濃こききききぬきぬきぬのののうはぐもりうはぐもりうわぐもりたるたるたるににに、、、朽葉朽葉くちばののの織物織物おりものうすものうすものうすものなどなどなどののの小袿小袿こうちききききててて、、、まことしくまことしくまことしく清清きよげげげなるなるなる人人ひとのののよるよるよるははは風風かぜのののさわぎさわぎさわぎにににねざめねざめねざめつれつれつればばば、、、久久ひさしうしうしゅう寢寢ねおきおきおきたるたるたるまゝまゝままににに、、、鏡鏡かがみうちうちうち見見みてててもやもやもやよりよりより少少すこしししゐざりゐざりいざり出出いでででたるたるたる、、、髪髪かみははは風風かぜににに吹吹ふきききまよはさまよはさまよわされれれててて少少すこしししうちうちうちふくだみふくだみふくだみたるたるたるががが肩肩かたにににかゝりかゝりかかりたるたるたる程程ほど、、、まことにまことにまことにめでたしめでたしめでたし。。。物物ものあはれあはれあわれなるなるなる氣色氣色けしき見見みるるる程程ほどににに、、、十七八十七八じゅうしちはちばかりばかりばかりにににやややあらあらあらむむん、、、ちひさうちひさうちいそうはははあらあらあらねねねどどどわざとわざとわざとおとなおとなおとなごとごとごとははは見見みえええぬぬぬががが、、、すゞしすゞしすずしののの單衣單衣ひとえのののいみじういみじういみじゅうほころびほころびほころびたるたるたる。。。花花はなもももかへりかへりかえり濡濡ぬれれれなどなどなどしししたるたるたる。。。薄色薄色うすいろのののとのゐとのゐとのいものものものををを着着きててて、、、髪髪かみははは尾花尾花おばなのののやうやうようなるなるなるそぎそぎそぎすゑすゑすえももも、、、たけたけたけばかりばかりばかりはははきぬきぬきぬののの裾裾すそにににはづれはづれはずれててて、、、袴袴はかまのみのみのみあざやかあざやかあざやかにてにてにてそばそばそばよりよりより見見みゆるゆるゆるわらはべわらはべわらわべののの若若わかききき人人ひとののの根根ねごめごめごめににに吹吹ふききき折折おららられれれたるたるたるせんざいせんざいせんざいなどなどなどををを、、、取取とりりり集集あつめめめ起起おこししし立立たてててなどなどなどするするするををを羨羨うらやましげましげましげににに推推おししし量量はかりりりてててつきつきつき添添そひひいたるたるたるうしろうしろうしろもももをかしをかしおかし。。。
現代語訳
台風の翌日こそ、たいそうしみじみとした趣があると思われる。立蔀や透垣などが倒れ伏しているところに、庭の植え込みがいたいたしい様子である。大きな木々が倒れ、枝なども吹き折られているのさえ惜しいのに、萩や女郎花などの上に倒れかかり、這うように伏しているのは、たいそう思いがけない。格子の目などに、木の葉をわざわざそうしたかのように、こまごまと吹き入れてあるのは、あの荒々しかった風のしわざとも思われない。たいそう濃い色の衣で、表面の光沢があせたものに、朽葉色の織物や薄物などの小袿を着て、いかにも美しい人が、夜は風の騒ぎに目を覚ましたので、長く寝過ごして起きたままに、鏡を見て、母屋から少しいざり出ているのが、髪は風に吹き乱されて少しふくらんでいるのが肩にかかっている様子は、本当にすばらしい。しみじみとした景色を眺めているうちに、十七、八歳ほどだろうか、小さくはないけれど、とりたてて大人とは見えない者が、生絹の単衣のひどくほころびて、色もあせ、濡れなどしているのに、薄紫の宿直衣を着て、髪は尾花のように切りそろえた末も、背丈ほどはあって衣の裾から外れて見え、袴だけが鮮やかで、そばから見える。女童や若い女房たちが、根こそぎ吹き折られた庭の草木などを取り集め、起こして立てたりしているのを、うらやましそうに推し量って、付き添っている後ろ姿もおもしろい。
意訳
台風一過の朝の情景である。荒れた庭、倒れた草木、格子の目に細かく吹き込んだ木の葉。その中に、夜の嵐で眠れなかった美しい女性が、乱れた髪のまま縁先に出てくる。続いて描かれる十七、八の娘は、ほころびた単衣に宿直衣という無造作な姿で、草花を起こして回る女童たちを、自分も手伝いたそうに見守っている。荒々しい自然の跡と、人の姿の美しさとが重なる、絵画的な場面である。
語釈・文法注
文法
- 「野分」
- 野の草を分けて吹く風。秋の台風。
- 「たてじとみ」
- 立蔀。目隠しのために立てる、格子に板を張った衝立。
- 「すいがい」
- 透垣。間を透かして作った垣根。
- 「もや」
- 母屋。寝殿造りの建物の中央の部屋。
解説
『源氏物語』野分の巻にも通じる、台風の翌日の情景を描いた名高い段である。荒れた庭の描写に、人物の姿を配して絵のような場面を作り上げている。
格子の目に木の葉が細かく吹き込んでいるのを、「あらかりつる風のしわざともおぼえね」と言うところに、作者の繊細な感覚がうかがえる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、308–309頁(コマ157)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日