枕草子 第181段 類聚的章段
風は
風として、嵐、木枯らしを挙げ、三月の夕暮れに吹く花風、八、九月の雨まじりの風、明け方に顔にしみる嵐、九月末から十月初めに木の葉を散らす風の趣を述べる。
場面イラスト(準備中)
- 1風風かぜははは題
- 2嵐嵐あらし、、、木枯木枯こがらし。。。三月三月さんがつばかりばかりばかりののの夕暮夕暮ゆうぐれにににゆるくゆるくゆるく吹吹ふきききたるたるたる花花はな風風かぜいといといとあはれあはれあわれなりなりなり。。。八九月八九月はちくがつばかりばかりばかりににに雨雨あめにににまじりまじりまじりててて吹吹ふきききたるたるたる風風かぜいといといとあはれあはれあわれなりなりなり。。。雨雨あめのののあしあしあし橫橫よこさまさまさまににに騒騒さわがしうがしうがしゅう吹吹ふきききたるたるたるににに、、、夏夏なつとほしとほしとおしたるたるたる綿綿わた絹絹ぎぬののの汗汗あせののの香香かなどなどなどかわきかわきかわき、、、すゞしすゞしすずしのののひとへひとへひとえににに引引ひききき重重かさねねねててて著著きたるたるたるもももをかしをかしおかし。。。このこのこのすゞしすゞしすずしだにだにだにいといといとあつかはしうあつかはしうあつかわしゅう捨捨すてててまほしかりまほしかりまほしかりしかしかしかばばば、、、いついついつのののまにまにまにかかかうううなりなりなりぬぬぬらむらむらんととと思思おもふふうもももをかしをかしおかし。。。あかつきあかつきあかつき格子格子こうし妻戶妻戶つまどなどなどなど押押おしししあけあけあけたるたるたるににに、、、嵐嵐あらしのののさとさとさと吹吹ふききき渡渡わたりりりててて顏顏かおにににしみしみしみたるたるたるこそこそこそいみじういみじういみじゅうをかしけれをかしけれおかしけれ。。。九月九月くがつつごもりつごもりつごもり、、、十月十月じゅうがつ一日一日ついたちのののほどほどほどののの空空そらうちうちうち曇曇くもりりりたるたるたるににに、、、風風かぜのののいたういたういとう吹吹ふくくくににに黄黄きなるなるなる木木こののの葉葉はどもどもどものののほろほろほろほろほろほろとととこぼれこぼれこぼれ落落おつるつるつるいといといとあはれあはれあわれなりなりなり。。。櫻櫻さくらののの葉葉は椋椋むくののの葉葉はなどなどなどこそこそこそ落落おつれつれつれ。。。十月十月じゅうがつばかりばかりばかりににに木立木立こだち多多おおかるかるかる所所ところののの庭庭にわはははいといといとめでたしめでたしめでたし。。。
現代語訳
風は。
嵐。木枯らし。三月ごろの夕暮れに、ゆるやかに吹いている花風は、たいそうしみじみとした趣がある。八、九月ごろに、雨にまじって吹いている風は、たいそう趣がある。雨脚が横なぐりに、騒がしく吹きつけているときに、夏の間ずっと着ていた綿入れの衣の汗の匂いなども乾き、生絹の単衣に引き重ねて着ているのもおもしろい。この生絹さえたいそう暑苦しく、捨ててしまいたいくらいだったのに、いつの間にこう涼しくなったのだろうと思うのもおもしろい。明け方に格子や妻戸などを押し開けると、嵐がさっと吹き渡って顔にしみるのは、たいそうおもしろい。九月の末、十月の初めごろの空が曇っているときに、風がひどく吹いて、黄色い木の葉がはらはらとこぼれ落ちるのは、たいそうしみじみとした趣がある。桜の葉や椋の葉などが、特に早く散る。十月ごろに、木立の多い所の庭は、たいそうすばらしい。
意訳
季節ごとの風の趣を描いた段である。春の夕暮れの穏やかな花風、秋の雨まじりの風、明け方に顔を打つ冷たい嵐、晩秋に木の葉を散らす風。とりわけ、夏の暑さで捨てたいほどだった生絹の単衣に、いつの間にか綿入れを重ねている、という季節の移ろいへの気づきが印象深い。
語釈・文法注
文法
- 「すゞし」
- 生絹。練っていない生糸で織った、薄くて張りのある絹。夏の衣に用いた。
- 「あつかはしう」
- 暑苦しく。
解説
風を通して季節の変化を感じとる作者の感覚が、肌に触れる感触や匂いなどとともに描かれている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、308頁(コマ157)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日