枕草子 第180段 類聚的章段
したり顔なるもの
得意顔なものとして、元日の朝一番にくしゃみをした人、蔵人に子を任じられた親、除目で一の国を得た人、多くの候補の中から選ばれて婿になった人、物の怪を調伏した験者、韻塞ぎの勝者、小弓の勝者などを挙げる。さらに、受領になった人や昇進した人の喜びようを描き、位の高さが人の扱いを一変させることを述べる。
- 1したりがほしたりがほしたりがおなるなるなるものものもの題
- 2正月正月しょうがつ一日一日ついたちのののつとめてつとめてつとめてさいそさいそさいそにににはなはなはなひひひたるたるたる人人ひと。。。きしろふきしろふきしろうたびたびたびののの藏人藏人くろうどにににかなしうかなしうかなしゅうするするする子子こなしなしなしたるたるたる人人ひとのののけしきけしきけしき。。。ぢもくぢもくじもくにににそのそのその年年としののの一一いちののの國國くに得得えたるたるたる人人ひとのののよろこびよろこびよろこびなどなどなどいひいひいいててて、、、「「「いといといとかしこうかしこうかしこうなりなりなり給給たまへへえりりり」」」などなどなど人人ひとのののいふいふいういらへいらへいらえににに、、、「「「何何なにかかかいといといとことやうことやうことようにににほろびほろびほろびててて侍侍はべるるるなれなれなればばば」」」などなどなどいふいふいうもももしたりしたりしたり顔顔がおなりなりなり。。。又又また人人ひと多多おおくくく挑挑いどみみみたるたるたる中中なかにににえええられられられててて聟聟むこににに取取とららられれれたるたるたるももも我我われはははととと思思おもひひいぬぬぬべしべしべし。。。こはきこはきこわきものゝけものゝけもののけてうじてうじちょうじたるたるたる驗驗げんしやしやしや。。。ゐふたぎゐふたぎいうたぎのののあけあけあけとうとうとうしししたるたるたる。。。小弓小弓こゆみ射射いるるるににに片片かたつつつ方方かたののの人人ひとしはぶきしはぶきしわぶきをををししし紛紛まぎらはしらはしらわしててて騒騒さわぐぐぐににに、、、念念ねんじじじててて音音おと高高たこううう射射いてててあてあてあてたるたるたるこそこそこそしたりしたりしたり顏顏がおなるなるなるけしきけしきけしきなれなれなれ。。。棊棊ごをををうつうつうつにににさばかりさばかりさばかりととと知知しらららでででふくつけさふくつけさふくつけさははは、、、またまたまた異異こと所所ところにににかゝぐりかゝぐりかかぐりありくありくありくににに、、、ことことこと方方かたよりよりより目目めもももなくなくなくしししててて多多おおくくくひろひひろひひろい取取とりりりたるたるたるももも嬉嬉うれしからしからしからじじじややや。。。ほこりかほこりかほこりかににに打打うちちち笑笑わらひひい、、、たゞたゞただののの勝勝かちよりよりよりはははほこりかほこりかほこりかなりなりなり。。。ありありありありありありてててずりやうずりやうずりょうににになりなりなりたるたるたる人人ひとののの氣色氣色けしきこそこそこそうれしげうれしげうれしげなれなれなれ。。。僅僅わずかにににあるあるあるずんざずんざずんざのののなめげなめげなめげにににあなづるあなづるあなずるももも妬妬ねたしししととと思思おもひひい聞聞きこえええながらながらながら、、、いかゞいかゞいかがせせせむむんとてとてとて念念ねんじじじ過過すぐしししつるつるつるににに、、、我我われにににもももまさるまさるまさるものものものどもどもどもののの、、、かしこまりかしこまりかしこまり「「「唯唯ただおほせおほせおおせ承承うけたまわらららむむん」」」ととと追追ついしようしようしようするするする樣樣さまははは、、、ありありありししし人人ひととととやややははは見見みえええたるたるたる。。。女房女房にょうぼううちうちうちつかひつかひつかい見見みえええざりざりざりししし調度調度ちょうどさうぞくさうぞくそうぞくのののわきわきわきいづるいづるいずる。。。ずずず領領りょうしししたるたるたる人人ひとののの中將中將ちゅうじょうににになりなりなりたるたるたるこそこそこそもともともと君達君達きんだちのののなりなりなりあがりあがりあがりたるたるたるよりよりよりもももけけけ高高だこうううしたりしたりしたり顏顏がおにににいみじういみじういみじゅう思思おもひひいためためためれれれ。。。位位くらいこそこそこそ猶猶なおめでたきめでたきめでたきものものものにににはははあれあれあれ。。。おなじおなじおなじ人人ひとながらながらながら大夫大夫たいうののの君君きみややや侍從侍從じじゅうののの君君きみなどなどなど聞聞きこゆるゆるゆるをりをりおりははは、、、いといといとあなづりあなづりあなずりやすきやすきやすきものものものををを、、、中納言中納言ちゅうなごん、、、大納言大納言だいなごん、、、大臣大臣だいじんなどなどなどににになりなりなりぬるぬるぬるはははむげむげむげにににせせせむむんかたかたかたなくなくなく、、、やんごとなくやんごとなくやんごとなく覺覺おぼえええ給給たまふふう事事ことのののこよなさこよなさこよなさよよよ。。。ほどほどほどほどほどほどにににつけつけつけてててはははずりやうずりやうずりょうもももさささこそこそこそはははあああめれめれめれ、、、あまたあまたあまた國國くにににに行行ゆきききててて大貳大貳だいにややや四位四位しいなどなどなどににになりなりなりててて上達部上達部かんだちめににになりなりなりぬれぬれぬればばばおもおもしおもおもしおもおもし。。。されどされどされどさりとてさりとてさりとてほどほどほど過過すぎぎぎ何何なにばかりばかりばかりののの事事ことかかかはははあるあるある。。。またまたまた多多おおくくくやややはははあるあるある。。。ずずず領領りょうののの北北きたののの方方かたにてにてにてくだるくだるくだるこそこそこそよろしきよろしきよろしき人人ひとのののさいはひさいはひさいわいにににははは思思おもひひいてててあああめれめれめれ。。。たゞたゞただ人人びとののの上達部上達部かんだちめのののむすめむすめむすめにてにてにて后后きさきににになりなりなり給給たまふふうこそこそこそめでたけれめでたけれめでたけれ。。。されどされどされど猶猶なお男男おとこははは我我わががが身身みのののなりなりなり出出いづるづるずるこそこそこそめでたくめでたくめでたくうちうちうち仰仰あおぎぎぎたるたるたるけしきけしきけしきよよよ。。。法師法師ほうしのののなにがしなにがしなにがし供奉供奉ぐぶなどなどなどいひいひいいてててありくありくありくなどなどなどははは何何なにとととかかかははは見見みゆるゆるゆる。。。經經きょうたふとくたふとくたうとく讀讀よみみみ、、、みめみめみめ淸淸きよげげげなるなるなるにににつけつけつけてててももも女女おんなにににあなづらあなづらあなずられれれてててなりなりなりかゝりかゝりかかりこそこそこそすれすれすれ、、、僧都僧都そうず僧正僧正そうじょうににになりなりなりぬれぬれぬればばば佛佛ほとけののの現現あらわれれれ給給たまへへえるるるにににこそこそこそとととおぼしおぼしおぼし惑惑まどひひいててて、、、かしこまるかしこまるかしこまるさまさまさまははは何何なににににかかかははは似似にたるたるたる。。。
現代語訳
得意顔なもの。
元日の早朝に、真っ先にくしゃみをした人。競い合っている蔵人の欠員に、かわいがっている子を任じさせた人の様子。除目で、その年の第一の国を得た人が、喜びの言葉などを言われて、「たいそうご立派になられました」などと人が言う返事に、「何の、ひどく妙な具合に落ちぶれまして」などと言うのも得意顔である。また、大勢の人が争っている中から選ばれて婿に迎えられたのも、自分こそはと思うだろう。手ごわい物の怪を調伏した験者。韻塞ぎで、早く韻を当てたの。小弓を射るときに、相手方の人が咳払いをしてごまかして騒ぐのに、こらえて音高く射当てたのこそ、得意顔の様子である。碁を打つときに、相手がそれほどとも知らずに欲張って、また別の所をあちこち攻めているうちに、こちらは別の方から、目もなくして多く石を拾い取ったのも、うれしくないことがあろうか。得意げに笑って、普通の勝ちよりも得意そうである。長年待ったあげく受領になった人の様子こそ、うれしそうである。わずかばかりいる従者が無礼に軽んじるのもしゃくだと思いながら、どうしようもないと我慢して過ごしてきたのに、自分よりも身分の上の者たちが、かしこまって「ただ仰せのとおりに」と追従する様子は、以前と同じ人とは見えない。女房を使い、これまで見たこともなかった調度や装束が湧き出てくる。受領をした人が中将になったのこそ、もともとの貴公子が昇進したのよりも、気位高く得意顔で、たいそう思っているようだ。位というものは、やはりすばらしいものである。同じ人でも、大夫の君とか侍従の君などと呼ばれているときは、たいそう軽んじやすいのに、中納言、大納言、大臣などになってしまうと、むやみに手出しもできず、尊く思われなさることの格段なことよ。身分相応には、受領もそうであるようだ。多くの国の国司を歴任して、大弐や四位などになって上達部になると重々しい。けれども、そうはいっても、どれほどのことがあろうか。また、そういう人は多くもない。受領の北の方として任国に下るのを、まあまあの身分の人の幸いと思っているようだ。普通の家柄の上達部の娘で、后におなりになるのこそすばらしい。けれども、やはり男は、自分の身が出世するのこそすばらしく、仰ぎ見るような様子だよ。法師で、何某供奉などと言って歩き回っているのは、何ほどにも見えない。経を尊く読み、容貌もきれいだというにつけても、女に侮られて言い寄られたりするけれど、僧都や僧正になってしまうと、仏が現れなさったのだと、人々は思い惑ってかしこまる様子は、何に似ていようか。
意訳
得意満面の人々の姿を集めた段である。くしゃみ一つ、韻塞ぎや小弓の勝ちといった小さな得意から始まり、受領になった人の変わりよう、昇進によって周囲の態度が一変するさまへと話が広がる。長年軽んじられてきた人が、受領になったとたん、目上の者までが「仰せのままに」とへつらうようになる。作者は「位こそ猶めでたきものにはあれ」と言いながら、その変わりように皮肉なまなざしを向けている。最後の、僧都や僧正になると仏が現れたかのように人々がかしこまる、という一文は痛烈である。
語釈・文法注
文法
- 「さいそにはなひたる」
- 元日の朝一番にくしゃみをすること。年の初めのくしゃみは縁起がよいとされたか。
- 「ゐふたぎ」
- 韻塞ぎ。漢詩の韻字を隠して当てさせる遊び。
- 「ずんざ」
- 従者(ずさ)。
- 「追しよう」
- 追従(ついしょう)。こびへつらうこと。
- 「供奉」
- 内供奉。宮中の内道場に仕える僧。
解説
得意顔の人々を描きながら、後半では官位によって人の評価が大きく変わる社会への観察に話が及ぶ。受領階級出身の作者自身の体験も反映しているのだろう。
「位こそ猶めでたきものにはあれ」という言葉は、身分社会の現実を率直に認めるものであると同時に、昇進した人へのへつらいを冷ややかに見る目も含んでいる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、307–308頁(コマ156–157)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日