枕草子 第176段 随想的章段
雪のいと高くはあらで
雪が薄く降ったのも趣があるが、深く積もった夕暮れ、気の合う女房たちと火桶を囲んで語り合っていると、思いがけない男が雪見舞いに訪ねて来る。夜明けまで語り合い、男は「雪何の山にか満てる」と口ずさんで帰って行く。女だけではそうはできなかったと、楽しい一夜を描く。
- 1雪雪ゆきのののいといといと高高たかくくくはははあらあらあらでででうすらかうすらかうすらかににに降降ふりりりたるたるたるなどなどなどははは、、、いといといとこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。又又また雪雪ゆきのののいといといと高高たかくくく降降ふりりり積積つみみみたるたるたる夕暮夕暮ゆうぐれよりよりより、、、端端はしちかうちかうちこう同同おなじじじ心心こころなるなるなる人人ひと二三人二三人ふたりみたりばかりばかりばかり火桶火桶ひおけなかなかなかにににすゑすゑすえててて、、、物語物語ものがたりなどなどなどするするするほどほどほどににに暗暗くろうううなりなりなりぬれぬれぬればばば、、、こなたこなたこなたにににははは火火ひもももともともともさささぬぬぬににに、、、大大おおかたかたかた雪雪ゆきののの光光ひかりいといといと白白しろううう見見みえええたるたるたるににに、、、火箸火箸ひばししししててて灰灰はいなどなどなどかきかきかきすさびすさびすさびててて、、、哀哀あわれなるなるなるもももをかしきをかしきおかしきもももいひいひいいあはするあはするあわするこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。よひよひよいももも過過すぎぎぎぬぬぬらむらむらんととと思思おもふふうほどほどほどににに、、、履履くつののの音音おと近近ちこううう聞聞きこゆれゆれゆればばば、、、怪怪あやしししととと見見み出出いだしししたるたるたるににに、、、時々時々ときどきかやうかやうかようののの折折おり、、、おぼえおぼえおぼえなくなくなく見見みゆるゆるゆる人人ひとなりなりなりけりけりけり。。。今日今日きょうののの雪雪ゆきをををいかにいかにいかにととと思思おもひひい聞聞きこえええながらながらながら、、、なんでふなんでふなんでう事事ことにににさはりさはりさわりそこそこそこににに暮暮くらしししつるつるつるよしよしよしなどなどなどいふいふいう。。。今日今日きょう來來こむむむ人人ひとをををなどなどなどやうやうようのののすぢすぢすじをををぞぞぞいふいふいうらむらむらんかしかしかし。。。晝晝ひるよりよりよりありありありつるつるつる事事ことどもどもどもをををうちうちうちはじめはじめはじめててて萬萬よろずののの事事ことをををいひいひいい笑笑わらひひい、、、わらふだわらふだわらうださしさしさし出出いだしししたれたれたれどどど片片かたつかたつかたつかたののの足足あしはははしもしもしもながらながらながらあるあるあるににに、、、鐘鐘かねのののおとおとおとののの聞聞きこゆるゆるゆるまでまでまでににになりなりなりぬれぬれぬれどどど、、、內內うちにににもももとととにににもももいふいふいう事事ことどもどもどもははは飽飽あかかかずずずぞぞぞおぼゆるおぼゆるおぼゆる。。。あけぐれあけぐれあけぐれのののほどほどほどにににかへるかへるかえるとてとてとて「「「雪雪ゆき何何なにののの山山やまににに滿滿みてるてるてる」」」とととうちうちうちずんじずんじずんじたるたるたるはははいといといとをかしきをかしきおかしきものものものなりなりなり。。。女女おんなのののかぎりかぎりかぎりしししてててはははさささもももえええゐゐいあかさゞらあかさゞらあかさざらましましましををを、、、たゞたゞただなるなるなるよりよりよりはははいといといとをかしうをかしうおかしゅう過過すぎぎぎたるたるたる有樣有樣ありさまなどなどなどををを言言いひひい合合あわせせせたるたるたる。。。
現代語訳
雪がたいそう深くはなく、薄く降ったのなどは、たいそう趣がある。また、雪がたいそう深く降り積もった夕暮れから、縁側近くで、気の合う人が二、三人ほど火桶を真ん中に据えて、話などをしているうちに暗くなったので、こちらでは灯火もともさないでいるのに、あたり一面の雪の光がたいそう白く見えているところで、火箸で灰などを何となくかきまわしながら、しみじみとしたことも、おもしろいことも話し合うのはおもしろい。宵も過ぎただろうと思うころに、沓の音が近くで聞こえるので、変だと思って外を見ると、時々こういう折に、思いがけなく姿を見せる人なのであった。「今日の雪をどうご覧になっているかと思い申し上げながら、つまらない用事にさしつかえて、そこで一日を過ごしてしまった」ということなどを言う。「今日来む人を」などという歌の筋を言っているのだろう。昼から起こったことなどを話し始めて、いろいろなことを話して笑い、円座を差し出したけれど、片方の足は縁から下ろしたままでいるうちに、鐘の音が聞こえるまでになってしまったけれど、御簾の内でも外でも、話すことは尽きないように思われる。明け方の薄暗いころに帰るといって、「雪何の山にか満てる」と口ずさんだのは、たいそう趣のあるものである。女だけでは、とてもこのように夜を明かすことはできなかっただろうに、男がいたので、普通の時よりもたいそうおもしろく過ぎて、その様子などを後で言い合った。
意訳
雪の夜の、女房たちのくつろいだひとときを描いた段である。灯火もつけず、雪明かりの中で火桶を囲み、火箸で灰をいじりながら語り合う。そこへ思いがけず、雪見舞いを口実に男がやって来る。縁に半分腰かけたまま夜明けまで話は尽きず、帰りぎわには雪にちなむ詩句を口ずさんでいく。雪の白さ、夜の静けさ、尽きない会話の楽しさが溶け合った、美しい一場面である。
語釈・文法注
文法
- 「今日來む人を」
- 『拾遺和歌集』の平兼盛の歌「山里は雪降り積みて道もなし今日来む人をあはれとは見む」による。雪の日に訪ねて来た人の言い訳を、この歌の心に重ねている。
- 「わらふだ」
- 円座。藁などを渦巻き状に編んだ丸い敷物。
- 「雪何の山に滿てる」
- 『和漢朗詠集』の謝観の詩句「暁入梁王之苑、雪満群山」による。
- 「あけぐれ」
- 明け暗れ。夜明け前のまだ薄暗いころ。
解説
雪明かりの中で灯火もともさずに語り合う場面は、『枕草子』の中でも特に印象深い情景の一つである。光と闇、静けさと語らいの対比が美しい。
男の訪問を、恋の場面としてではなく、気の合う友人との語らいとして描いているところに、宮廷の男女の交際の一面がうかがえる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、302頁(コマ154)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日