枕草子 第175段 随想的章段
宮仕へ人の里なども
宮仕えの女房の里の家について、両親がそろっていて人の出入りが多いのはよいが、訪ねて来た男がなかなか帰らないのを親や家の者が嫌がって門を閉めたがるのは憎らしいと述べる。兄弟の家なども気詰まりで、宮仕えの者どうしが集まる気楽な家で冬の夜を語り明かすのがおもしろいという。
- 1宮宮みやづかへづかへずかえ人人びとののの里里さとなどなどなどももも親親おやどもどもども二人二人ふたりあるあるあるはははよしよしよし。。。人人ひとしげくしげくしげく出出いででで入入いりりり、、、奧奧おくのののかたかたかたにににあまたあまたあまたさまざまさまざまさまざまののの聲聲こえ多多おおくくく聞聞きこえええ、、、馬馬うまののの音音おとしししててて騒騒さわがしきがしきがしきまでまでまであれあれあれどどどかなしかなしかなし。。。されどされどされど忍忍しのびびびてててもももあらはれあらはれあらわれてててもももおのづからおのづからおのずから、、、出出いででで給給たまひひいけるけるけるををを知知しらららでででともともとも又又またいつかいつかいつか參參まいりりり給給たまふふうなどなどなどもももいひいひいいにににさしさしさしのぞくのぞくのぞく。。。心心こころがけがけがけたるたるたる人人ひとはははいかゞいかゞいかがはははととと門門かどあけあけあけなどなどなどするするするををを、、、うたてうたてうたて騷騷さわがしうがしうがしゅうあやふげあやふげあやうげににに夜夜よなかなかなかまでまでまでなどなどなど思思おもひひいたるたるたるけしきけしきけしきいといといとにくしにくしにくし。。。「「「大御門大御門おおみかどはははさしさしさしつつつややや」」」などなどなど問問とはははすれすれすればばば、、、「「「まだまだまだ人人ひとのののおはすれおはすれおわすればばば」」」などなどなどなまなまなまふせがしげふせがしげふせがしげににに思思おもひひいててていらふるいらふるいらうるににに、、、「「「人人ひと出出いででで給給たまひひいなななばばばとくとくとくさせさせさせ。。。このこのこのごろごろごろははは盜人盜人ぬすびといといといと多多おおかりかりかり」」」などなどなどいひいひいいたるたるたるいといといとむつかしうむつかしうむつかしゅううちうちうち聞聞きくくく人人ひとだにだにだにありありあり。。。このこのこの人人ひとののの供供ともなるなるなるものものものどもどもども、、、このこのこのかくかくかく今今いまややや出出いづるづるずるととと、、、絕絕たえええずずずさしさしさしのぞきのぞきのぞきてててけしきけしきけしき見見みるるるものものものどもどもどもをををわらふわらふわらうべかべかべかめりめりめり。。。まねまねまねうちうちうちするするするももも聞聞ききききてててはははいかにいかにいかにいとゞいとゞいとどきびしうきびしうきびしゅういひいひいい咎咎とがめめめむむん。。。いといといと色色いろににに出出いでゝでゝでていはいはいわぬぬぬももも、、、思思おもふふう心心こころなきなきなき人人ひとははは必必かならずきききなどなどなどやややするするする。。。されどされどされどすくよかすくよかすくよかなるなるなるかたかたかたははは夜夜よ更更ふけけけぬぬぬ。。。「「「御門御門みかどもももあやふかあやふかあやうかなるなるなる」」」ととといひいひいいてててぬるぬるぬるもももありありあり。。。誠誠まことににに志志こころざしことことことなるなるなる人人ひとははははやはやはやなどなどなどあまたゝびあまたゝびあまたたびやらはるれやらはるれやらわるれどどど、、、猶猶なお居居いあかせあかせあかせばばばたびたびたびたびたびたびありくありくありくににに、、、あけあけあけぬぬぬべきべきべきけしきけしきけしきををを珍珍めずらからからかににに思思おもひひいててて、、、「「「いみじきいみじきいみじき御門御門みかどをををこよひこよひこよいらいさうらいさうらいそうとととあけあけあけひろげひろげひろげててて」」」ととと聞聞きこえええごちごちごちてててあぢきなくあぢきなくあじきなく曉曉あかつきにににぞぞぞさすさすさすなるなるなる。。。いかゞいかゞいかがにくきにくきにくき。。。親親おやそひそひそいぬるぬるぬるははは猶猶なおこそこそこそあれあれあれ。。。ましてましてまして誠誠まことならならならぬぬぬはははいかにいかにいかに思思おもふふうらむらむらんとととさへさへさへつゝましうつゝましうつつましゅうててて、、、せうとせうとしょうとののの家家いえなどなどなどもももげにげにげに聞聞きくくくにににはははさささぞぞぞあらあらあらむむん。。。夜中夜中よなか曉曉あかつきともともともなくなくなく門門かどいといといと心心こころがしこくがしこくがしこくもももなくなくなく、、、何何なにののの宮宮みや、、、內內うちわたりわたりわたりののの殿殿とのばらばらばらなるなるなる人々人々ひとびとののの出出いであひあひあいなどなどなどしししててて格子格子こうしなどなどなどもももあけあけあけながらながらながら冬冬ふゆののの夜夜よををを居居いあかしあかしあかしててて、、、人人ひとののの出出いでででぬるぬるぬる後後のちももも見見み出出いだしししたるたるたるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。有明有明ありあけなどなどなどはははましてましてましていといといとをかしをかしおかし。。。笛笛ふえなどなどなど吹吹ふきききててて出出いでででぬるぬるぬるををを我我われははは急急いそぎぎぎてててもももねねねられられられずずず、、、人人ひとのののうへうへうえなどなどなどもももいひいひいい、、、歌歌うたなどなどなど語語かたりりり聞聞きくくくまゝまゝままににに寢寢ね入入いりりりぬるぬるぬるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。
現代語訳
宮仕えする女房の里の家なども、両親がそろっているのはよい。人がしきりに出入りし、奥の方ではたくさんのさまざまな声が多く聞こえ、馬の音がして騒がしいほどだけれど、それもいとおしい。けれども、こっそりでもおおっぴらにでも、自然と、「宮中から退出なさったのを知らないで」とか、また「いつ参上なさるのか」などとも言いに、男がのぞきに来る。好意を寄せている人の場合は、どうしてそのままにしておけようと門を開けたりするのを、家の者がいやに騒がしく、物騒そうに、夜中までなどと思っている様子は、たいそう憎らしい。「表の門は閉めたか」などと尋ねさせると、「まだお客様がいらっしゃるので」などと、なんとなく迷惑そうに思って答えるので、「お客様がお帰りになったら、すぐに閉めさせよ。このごろは盗人がたいそう多い」などと言っているのは、たいそういやな感じで、ちょっと聞く人でさえある。この客の供の者たちは、この客が今にも出て来るかと、絶えずのぞいて様子を見ている家の者たちを、笑っているようだ。その口まねをするのも、家の者が聞いたら、どんなにいっそう厳しくとがめ立てることだろう。たいそうはっきりと口に出しては言わないけれど、思う心のない人は、きっと来たりするだろうか。けれども、まじめな人は夜が更けてしまう。「御門も物騒だ」と言って寝てしまう者もいる。本当に志の深い人は、「早く」などと何度も追い返されるけれど、それでも座り明かすので、家の者がたびたび見回りに来るが、夜が明けそうな様子を珍しく思って、「たいそうな御門を、今夜は開けっ放しにして」と聞こえよがしに言って、不愉快そうに明け方になって閉めるそうだ。なんと憎らしいことか。親が付き添っているのはまだよい。まして実の親でない人はどう思うだろうかとまで気がねされて、兄弟の家なども、なるほど、聞くところではそういうものだろう。夜中も明け方も区別なく、門もたいして用心深くもなく、何々の宮や、宮中あたりの殿方に仕える人々が出会ったりして、格子なども上げたまま冬の夜を座り明かして、男が帰って行った後も外を見やっているのはおもしろい。有明の月のころなどは、なおいっそうおもしろい。男が笛などを吹いて帰って行ったのを、自分は急いでも寝られず、人のうわさなどもし、歌などを語り聞くうちに寝入ってしまうのはおもしろい。
意訳
宮仕えの女房が里に下がったときの住まいについて、作者の本音が語られる。親のいる家はにぎやかでよいが、訪ねて来た男がなかなか帰らないと、家の者が露骨に嫌な顔をして門を閉めたがる。「盗人が多いから早く閉めろ」と聞こえよがしに言ったり、明け方に「今夜は門を開けっ放しで」とぼやいたりするのは、たまらなく憎らしい。その点、宮仕えの仲間どうしが気兼ねなく集まる家は、男を見送ったあとも夜通し語り合えて楽しい。女房の自由な交際を理解しない世間への不満がにじむ段である。
語釈・文法注
文法
- 「なまふせがしげに」
- なんとなく迷惑そうに、面倒くさそうに。
- 「すくよかなる」
- まじめな、実直な。
- 「らいさう」
- 意味がはっきりしない。開けっ放しにすることをいう言葉か。
- 「聞えごちて」
- 聞こえよがしにつぶやいて。
- 「せうと」
- 兄人(せうと)。女から見た兄弟。
解説
宮仕えの女房にとって、里下がりの家での男性との交際がどのように見られていたかがよくわかる段である。門の開け閉めをめぐる家の者とのやりとりが、いきいきと描かれている。
最後の、仲間どうしで冬の夜を語り明かす場面は、宮廷の外でも続く女房たちの社交の楽しさを伝えている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、300–301頁(コマ153)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日