枕草子 第170段 類聚的章段
井は
井戸として、堀兼の井、逢坂の走井、浅いもののたとえとなった山の井、催馬楽で水の冷たさがほめられた飛鳥井、玉の井、少将井、桜井、后町の井、千貫の井を挙げる。
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現代語訳
井戸は。
堀兼の井。走井は、逢坂にあるのがおもしろい。山の井は、どうしてあれほど浅いもののたとえになり始めたのだろう。飛鳥井は、「御水も寒し」とほめているのがおもしろい。玉の井。少将井。桜井。后町の井。千貫の井。
意訳
歌枕や名高い井戸を並べた段である。逢坂の走井、催馬楽に歌われた飛鳥井など、和歌や歌謡に詠まれた井戸が多い。山の井が「浅き」のたとえになったのは、『古今和歌集』の「浅香山影さへ見ゆる山の井の浅き心を我が思はなくに」の歌によるもので、作者はそれを不思議がっている。
語釈・文法注
文法
- 「堀兼の井」
- 武蔵国(埼玉県)にあった井戸。掘りかねるほど深いといわれ、歌枕となった。
- 「みもひも寒し」
- 催馬楽「飛鳥井」の「飛鳥井に宿りはすべし、や、おけ、蔭もよし、御水も寒し、御秣もよし」による。
- 「后町の井」
- 宮中の常寧殿(后町)にあった井戸。
解説
類聚的章段の中でも、地名や名所を集めた「もの尽くし」の一つである。歌や物語に親しんだ作者の知識がうかがえる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、299頁(コマ152)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日