枕草子 第166段 類聚的章段
昔おぼえて不用なるもの
昔は立派だったが今は役に立たないものとして、古びた繧繝縁の畳、傷んだ唐絵の屛風、藤のからまった枯れ松、色のさめた地摺りの裳、目の悪い衛士、古びた几帳の帷子、帽額のなくなった簾、赤茶けた七尺のかもじ、色あせた葡萄染の織物、老いぼれた色好み、木立の焼けた風流な家を挙げる。
場面イラスト(準備中)
- 1むかしむかしむかしおぼえおぼえおぼえてててふようふようふようなるなるなるものものもの題
- 2うげんべりうげんべりうげんべりののの疊疊たたみのののふりふりふりてててふしふしふし出出いででできききたるたるたる。。。唐繪唐繪からえののの屏風屏風びょうぶののの表表おもてそこなはそこなはそこなわれれれたるたるたる。。。藤藤ふじのののかゝりかゝりかかりたるたるたる松松まつののの木木き枯枯かれれれたるたるたる。。。ぢずりぢずりじずりのののものものもの花花はなかへりかへりかえりたるたるたる。。。衞士衞士えじののの目目めくらきくらきくらき。。。几帳几帳きちょうのののかたびらかたびらかたびらのののふりふりふりぬるぬるぬる。。。もかうもかうもこうのののなくなくなくなりなりなりぬるぬるぬる。。。七尺七尺しちしゃくのののかづらかづらかずらのののあかくあかくあかくなりなりなりたるたるたる。。。えびぞめえびぞめえびぞめののの織物織物おりものののの灰灰はいかへりかへりかえりたるたるたる。。。色色いろ好好ごのみみみののの老老おいいいくづほれくづほれくずおれたるたるたる。。。おもしろきおもしろきおもしろき家家いえののの木立木立こだちやけやけやけたるたるたる、、、池池いけなどなどなどはははさながらさながらさながらあれあれあれどどど、、、うきくさうきくさうきくさみくさみくさみくさしげりしげりしげりててて。。。
現代語訳
昔は立派だったと思われるのに、今は役に立たないもの。
繧繝縁の畳が古びて、節が出てきたの。唐絵の屛風の表が傷んでいるの。藤のからまっている松の木が枯れたの。地摺りの裳の色があせたの。衛士の目の悪いの。几帳の帷子が古びたの。簾の帽額がなくなったの。七尺もあるかもじが赤茶けたの。葡萄染の織物の色があせて灰色になったの。色好みの男が年老いて衰えたの。風流な家の木立が焼けたの。池などはそのまま残っているけれど、浮き草や水草が茂って。
意訳
かつての華やかさや立派さが、時とともに失われてしまったものを集めている。最高級の繧繝縁の畳も古びれば節が出て、唐絵の屛風も傷み、七尺もの見事なかもじも赤茶けてしまう。その中に「色好みの老いくづほれたる」が交じっているのが痛烈である。最後の、木立が焼けて池に水草が茂る家の情景には、栄華の跡のもの寂しさがにじむ。
語釈・文法注
文法
- 「うげんべり」
- 繧繝縁(うんげんべり)。色を段階的にぼかした錦の縁。天皇や上皇などが用いる最上級の畳の縁。
- 「ぢずり」
- 地摺り。模様を摺り出した裳。
- 「もかう」
- 帽額。御簾の上部に横に張る布。
- 「花かへりたる」
- 色があせた。
解説
過去の栄光と現在の衰えとの対比が、この段の主題である。宮廷の調度品が多く挙がっているが、人間の老いも同列に並べられているところに、作者の冷徹な目が感じられる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、298–299頁(コマ152)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日