枕草子 第155段 類聚的章段
えせものの所得るをりの事
つまらない者が得意になる折として、正月の大根、行幸の時の姫大夫、六月・十二月の晦日の夜居の蔵人、季の御読経の威儀師、御読経や仏名の時の所の衆、春日祭の舎人、正月の薬子、卯杖の法師、五節の御髪上げ、節会の陪膳の采女、七月の相撲、雨の日の市女笠、渡しの舟の楫取りなどを挙げる。
場面イラスト(準備中)
- 1えせものゝえせものゝえせものの所所ところうるうるうるをりをりおりののの事事こと題
- 2正月正月しょうがつのののおほねおほねおおね、、、行幸行幸ぎょうこうのののをりをりおりのののひめまうちぎみひめまうちぎみひめもうちぎみ、、、みなみなみな月月ずき、、、十二月十二月しわすのののつごもりつごもりつごもりのののよをりよをりよおりののの藏人藏人くろうど。。。季季きののの御讀經御讀經みどきょうのののいぎしいぎしいぎし、、、赤袈裟赤袈裟あかげさきてきてきて僧僧そうののの文文ふみどもどもども讀讀よみみみあげあげあげたるたるたるいといといとらうらうしらうらうしろうろうし。。。御讀經御讀經みどきょう佛名佛名ぶつみょうなどなどなどののの御御おんさうぞくさうぞくそうぞくののの所所ところののの衆衆しゅう、、、春日祭春日祭かすがまつりののの舍人舍人とねりどもどもども、、、大饗大饗だいきょうののの所所ところのののあゆみあゆみあゆみ、、、正月正月しょうがつのののくすりこくすりこくすりこ、、、卯杖卯杖うづえののの法師法師ほうし、、、五五ごせちせちせちのののこゝろみこゝろみこころみのののみくしみくしみくしあげあげあげ、、、節會節會せちえ御御おばいぜんばいぜんばいぜんののの釆女釆女うねめ、、、大饗大饗だいきょうののの日日ひののの史生史生ししょう、、、七月七月しちがつのののすまひすまひすまい、、、雨雨あめ降降ふるるる日日ひのののいちめいちめいちめ笠笠がさ、、、わたりわたりわたりするするするをりをりおりのののかんどりかんどりかんどり。。。
現代語訳
つまらない者が得意になる折のこと。
正月の大根。行幸の折の姫大夫。六月と十二月の末日の、夜居の蔵人。季の御読経の威儀師が、赤い袈裟を着て僧たちの名を記した文などを読み上げているのは、たいそう物慣れていて立派である。御読経や仏名会などの際の、御装束を整える蔵人所の衆。春日祭の舎人たち。大饗の時の所の歩み。正月の薬子。卯杖を献上する法師。五節の試みの御髪上げ。節会で御陪膳をする采女。大饗の日の史生。七月の相撲人。雨の降る日の市女笠。川を渡る時の楫取り。
意訳
ふだんは目立たない身分の低い者や、ありふれた物が、特定の行事や場面でだけ重宝され、得意げになる。そうした「晴れ舞台」を集めた段である。正月の歯固めに使われる大根、雨の日の市女笠、川を渡るときの船頭など、物から人まで幅広い。作者は少し皮肉な目で見ながらも、行事を支える人々の姿をよく見ている。
語釈・文法注
文法
- 「所うる」
- 所を得る。その場にふさわしく、得意げにふるまう。
- 「ひめまうちぎみ」
- 姫大夫。行幸の際、馬に乗って供奉する女官。
- 「いぎし」
- 威儀師。法会で儀式の進行を取りしきる僧。
- 「くすりこ」
- 薬子。正月の御薬(屠蘇)の毒味をする少女。
解説
宮廷の年中行事に詳しい作者ならではの段である。行事ごとに一時的に脚光を浴びる人々の姿を、冷静に、かつ興味深く書き留めている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、290–291頁(コマ148)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日