枕草子 第154段 類聚的章段
むつかしげなるもの
うっとうしく見えるものとして、刺繍の裏、猫の耳の中、まだ毛の生えない鼠の子が巣から転がり出たところ、裏をつけていない皮衣の縫い目、きれいでない所の暗がり、子だくさんで世話に追われる人、男にとってさほど愛情のない女が長く病んでいることを挙げる。
場面イラスト(準備中)
- 1むつかしげむつかしげむつかしげなるなるなるものものもの題
- 2ぬひものゝぬひものゝぬいもののうらうらうら、、、猫猫ねこののの耳耳みみのののうちうちうち。。。鼠鼠ねずみのののいまだいまだいまだ毛毛けももも生生おひひいぬぬぬををを、、、巢巢すのののうちうちうちよりよりよりあまたあまたあまたまろばしまろばしまろばし出出いだしししたるたるたる。。。裏裏うらまだまだまだつかつかつかぬぬぬかはぎぬかはぎぬかわぎぬのののぬひめぬひめぬいめ。。。殊殊ことににに淸淸きよげげげならならならぬぬぬ所所ところのののくらきくらきくらき。。。ことなることなることなる事事ことなきなきなき人人ひとののの、、、ちひさきちひさきちいさき子子こなどなどなど數多數多あまた持持もちちちてててあつかひあつかひあつかいたるたるたる。。。いといといと深深ふこうううしもしもしも志志こころざしなきなきなき女女おんなののの心心ここちちちあしうあしうあしゅうしししててて久久ひさしくしくしく惱惱なやみみみたるたるたるももも男男おとこののの心心こころののの中中うちにににはははむつかしげむつかしげむつかしげなるなるなるべしべしべし。。。
現代語訳
うっとうしく見えるもの。
刺繍の裏。猫の耳の中。鼠の、まだ毛も生えていない子を、巣の中からたくさん転がり出させたの。裏をまだつけていない皮衣の縫い目。特にきれいでもない所の暗がり。たいしたこともない身分の人が、小さい子などをたくさん持って世話をしているの。それほど深く愛してもいない女が、気分が悪くて長く病んでいるのも、男の心の中ではうっとうしく思われることだろう。
意訳
「むつかし」は、ごたごたしていて気分がふさぐ、うっとうしいという意味である。刺繍の裏の糸の乱れ、猫の耳の中、毛のない鼠の子など、見た目にごちゃごちゃして気持ちの悪いものから、子だくさんで手に負えない暮らし、愛情の薄い相手の長患いといった人の事情にまで話が広がる。最後の例には、男の身勝手な心理を見抜く作者の冷静な目が感じられる。
語釈・文法注
文法
- 「むつかしげなる」
- うっとうしく、わずらわしく感じられる様子。
- 「かはぎぬ」
- 皮衣。毛皮で作った衣。
解説
見た目の不快感から、人間関係のわずらわしさへと連想を広げていく構成である。最後の一例は、女房として多くの男女関係を見てきた作者ならではの観察といえる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、290頁(コマ148)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日