枕草子 第150段 類聚的章段
うつくしきもの
かわいらしいものとして、ちごの顔、鼠鳴きをすると跳ねて来る雀の子、小さな塵を見つけて大人に見せる幼児、髪が目にかかっても払わずに物を見る尼削ぎの子、人形遊びの道具、小さな蓮の浮き葉、雛鳥などを挙げ、何でも小さいものはかわいらしいという。
- 1うつくしきうつくしきうつくしきものものもの題
- 2ふりふりふりににに書書かきききたるたるたるちごちごちごののの顏顏かお。。。雀雀すずめののの子子このののねずねずねずなきなきなきするするするにににをどりをどりおどりくるくるくる。。。又又またべにべにべになどなどなどつけつけつけてててすゑすゑすえたれたれたればばばおやおやおや雀雀すずめののの蟲蟲むしなどなどなどもてもてもて來來きてててくゝむるくゝむるくくむるもももいといといとらうたしらうたしろうたし。。。三三みつつつばかりばかりばかりなるなるなるちごちごちごののの急急いそぎぎぎててて這這はひひいくるくるくる道道みちににに、、、いといといとちひさきちひさきちいさき塵塵ちりなどなどなどのののありありありけるけるけるをををめざとめざとめざとににに見見みつけつけつけててて、、、いといといとをかしげをかしげおかしげなるなるなるおよびおよびおよびにににとらへとらへとらえててておとなおとなおとななどなどなどににに見見みせせせたるたるたるいといといと美美うつくしくしくし。。。あまあまあまにににそぎそぎそぎたるたるたる兒兒ちごののの目目めににに髪髪かみのののおほひおほひおおいたるたるたるををを掻掻かきききはやらはやらはやらででで、、、うちうちうちかたぶきかたぶきかたぶきててて物物ものなどなどなど見見みるるるいといといとうつくしうつくしうつくし。。。たすきたすきたすきがけがけがけにににゆひゆひゆいたるたるたる腰腰こしのののかみかみかみののの白白しろうううをかしげをかしげおかしげなるなるなるももも見見みるるるにににうつくしうつくしうつくし。。。おほきおほきおおきにににはははあらあらあらぬぬぬ殿上殿上てんじょうわらはわらはわらわのののさうぞきさうぞきそうぞきたてたてたてられられられてててありくありくありくもももうつくしうつくしうつくし。。。をかしげをかしげおかしげなるなるなるちごちごちごのののあからさまあからさまあからさまにににいだきいだきいだきてててうつくしむうつくしむうつくしむほどほどほどににに、、、かいかいかいつきつきつきててて寢寢ね入入いりりりたるたるたるもももらうたしらうたしろうたし。。。ひゝなひゝなひいなののの調度調度ちょうど。。。はちすはちすはちすのののうきうきうき葉葉はのののいといといとちひさきちひさきちいさきををを池池いけよりよりよりとりとりとりあげあげあげててて見見みるるる。。。葵葵あおいのののちひさきちひさきちいさきもももいといといとうつくしうつくしうつくし。。。なになになにもももなになになにもももちひさきちひさきちいさき物物ものはははいといといとうつくしうつくしうつくし。。。いみじういみじういみじゅう肥肥こえええたるたるたるちごちごちごののの二二ふたつつつばかりばかりばかりなるなるなるががが白白しろううううつくしきうつくしきうつくしきががが、、、二藍二藍ふたあいのののうすものうすものうすものなどなどなど、、、きぬきぬきぬながくながくながくてててたすきたすきたすきあげあげあげたるたるたるががが這這はひひい出出いでででくるくるくるもももいといといとうつくしうつくしうつくし。。。八八やつつつ九九ここのつつつ十十とおばかりばかりばかりなるなるなるをのこをのこおのこののの、、、聲聲こえ幼幼おさなげげげにてにてにて文文ふみよみよみよみたるたるたるいといといとうつくしうつくしうつくし。。。鷄鷄にわとりののの雛雛ひなののの足足あしだかだかだかににに白白しろうううをかしげをかしげおかしげにににきぬきぬきぬみじかみじかみじかなるなるなるさまさまさましししててて、、、ひよひよひよひよひよひよとととかしがましくかしがましくかしがましく鳴鳴なきききててて、、、人人ひとのののしりしりしりににに立立たちちちてててありくありくありくももも、、、又又また親親おやのののもともともとにににつれつれつれだちだちだちありくありくありく見見みるるるもももうつくしうつくしうつくし。。。かりかりかりののの子子こ、、、さりさりさりののの壺壺つぼ、、、瞿麥瞿麥なでしこののの花花はな。。。
現代語訳
かわいらしいもの。
瓜に描いた幼児の顔。雀の子が、ちゅっちゅっと鼠鳴きをすると、跳ねるようにしてやって来るの。また、紅などをつけて据えておくと、親雀が虫などを持って来て口移しに食べさせるのも、たいそうかわいい。三歳ほどの幼児が、急いで這って来る途中に、たいそう小さな塵などがあったのを、目ざとく見つけて、たいそうかわいらしい指でつまんで、大人などに見せているのは、たいそうかわいらしい。尼削ぎにした子が、目に髪がかぶさっているのをかき払いもせず、首をかしげて物などを見ているのは、たいそうかわいらしい。たすき掛けに結んだ腰の上の方が白くかわいらしいのも、見るとかわいらしい。大きくはない殿上童が、装束をきちんと着せられて歩き回っているのもかわいらしい。かわいらしい幼児を、ちょっと抱いてあやしているうちに、しがみついて寝入ってしまったのも、いじらしい。人形遊びの道具。蓮の浮き葉のたいそう小さいのを、池から取り上げて見るの。葵の小さいのも、たいそうかわいらしい。何でも何でも、小さいものはみなたいそうかわいらしい。たいそう太った二歳ほどの幼児で、色白でかわいらしいのが、二藍の薄物などを、着物が長いのでたすきで結い上げて、這い出して来るのも、たいそうかわいらしい。八つ、九つ、十ほどの男の子が、幼い声で書物を読んでいるのは、たいそうかわいらしい。鶏の雛が、足が長く、白くかわいらしく、着物を短く着たような様子で、ぴよぴよとやかましく鳴いて、人の後について歩いたり、また親鳥のそばについて歩いたりしているのを見るのもかわいらしい。雁の卵。瑠璃の壺。なでしこの花。
意訳
「うつくし」は、小さいもの、幼いものをいとおしむ気持ちを表す言葉である。作者は、雀の子や幼児、雛鳥など、小さな生き物の何気ないしぐさを次々にとらえていく。床の塵を見つけて大人に見せる幼児、髪が目にかかったまま首をかしげて物を見る子、抱いているうちにしがみついて眠ってしまう子。「なにもなにもちひさき物はいとうつくし」という一文は、この段の主題をまとめるとともに、作者の美意識をよく表している。
語釈・文法注
文法
- 「ふりに書きたるちごの顔」
- 三巻本などでは「瓜にかきたるちごの顔」。瓜に描いた子どもの顔の絵。
- 「ねずなき」
- 鼠鳴き。鼠の鳴き声をまねて、口をすぼめてちゅっちゅっと鳴らすこと。小鳥などを呼ぶときにする。
- 「あまにそぎたる」
- 尼削ぎ。少女の髪を肩のあたりで切りそろえた髪型。
- 「さりの壺」
- 瑠璃(るり)の壺とする説、舎利の壺とする説などがある。
解説
『枕草子』の中でもよく知られた段の一つである。小さいものへの愛着を、具体的な場面の積み重ねによって描き出している。
幼児の動作の描写は特に細やかで、塵をつまむ小さな指、目にかかる髪を払わずに首をかしげる姿など、作者の観察の確かさがうかがえる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、288–289頁(コマ147)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日