枕草子 第149段 類聚的章段
胸つぶるるもの
どきどきするものとして、競べ馬の見物、元結をよること、親の病気、口のきけない幼児が乳も飲まずに泣き続けること、思いがけない人の声、自分のうわさ話、憎い人の来訪、恋人からの後朝の手紙の遅れ、思う人からの手紙を挙げる。
場面イラスト(準備中)
- 1むねむねむねつぶるゝつぶるゝつぶるるものものもの題
- 2くらべくらべくらべうまうまうま見見みるるる。。。もとゆひもとゆひもとゆいよるよるよる。。。親親おやなどなどなどののの心心ここちちちあしうあしうあしゅうしししててて例例れいならならならぬぬぬけしきけしきけしきなるなるなる。。。ましてましてまして世世よののの中中なかなどなどなどさわがしきさわがしきさわがしきころころころ萬萬よろずののの事事ことおぼえおぼえおぼえずずず。。。又又また物物ものいはいはいわぬぬぬちごちごちごののの泣泣なききき入入いりりりててて乳乳ちももも飮飮のまままずずず、、、いみじくいみじくいみじくめのとめのとめのとのののいだくいだくいだくにににもももやまやまやまででで久久ひさしうしうしゅうなきなきなきたるたるたる。。。例例れいののの所所ところなどなどなどにてにてにて殊殊ことににに又又またいちじるからいちじるからいちじるからぬぬぬ人人ひとののの聲聲こえ聞聞ききききつけつけつけたるたるたるはははことわりことわりことわり。。。人人ひとなどなどなどのののそのそのそのうへうへうえなどなどなどいふいふいうにににまづまづまずこそこそこそつぶるれつぶるれつぶるれ。。。いみじくいみじくいみじくにくきにくきにくき人人ひとのののきききたるたるたるもももいみじくいみじくいみじくこそこそこそあれあれあれ。。。よべよべよべきききたるたるたる人人ひとのののけさけさけさののの文文ふみのののおそきおそきおそき、、、聞聞きくくく人人ひとさへさへさへつぶるつぶるつぶる。。。思思おもふふう人人ひとののの文文ふみとりとりとりてててさしさしさし出出いでででたるたるたるもももまたまたまたつぶるつぶるつぶる。。。
現代語訳
どきどきするもの。
競べ馬を見るの。元結をよるの。親などが気分が悪くて、いつもと違う様子なの。まして世の中に疫病などがはやって騒がしいころは、何もかも手につかない。また、まだ口のきけない幼児が泣き入って、乳も飲まず、乳母が抱いてもひどく泣きやまず、長い間泣いているの。いつもの所などで、とりわけまた、はっきりとはわからない人の声を聞きつけたのは、どきどきするのも当然だ。人がその人のうわさなどを言うときも、まずどきりとする。ひどく憎い人が来たのも、たいそうどきどきする。昨夜来た人の、今朝の手紙が遅いのは、人ごとに聞いてさえどきどきする。思う人の手紙を受け取って差し出されたときも、またどきどきする。
意訳
不安や緊張、期待で胸が高鳴る場面を集めている。競べ馬の勝負、親の病気、泣きやまない幼子、恋人の噂話、後朝の手紙が来ない不安、そして思う人からの手紙を受け取ったときのときめき。不安のどきどきと喜びのどきどきが、同じ「むねつぶる」の中に並べられているのがおもしろい。
語釈・文法注
文法
- 「むねつぶる」
- 胸がつぶれるように、どきっとする。驚きや不安、期待で胸が騒ぐ。
- 「もとゆひよる」
- 元結(髪を束ねる紐)をよって作ること。切れはしないかと気をもむ。
- 「いちじるからぬ」
- はっきりしない。
解説
不安と期待という正反対の感情が、身体の感覚としての「胸つぶる」で一括されているところに、類聚的章段の面白さがある。
後朝の手紙が遅いのは、自分のことでなくても聞くだけで胸がどきどきするという指摘は、恋愛が宮仕えの女房たちにとって身近な関心事であったことを示している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、288頁(コマ147)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日