枕草子 第139段 随想的章段
なほ世にめでたきもの
やはりこの世ですばらしいものとして、臨時の祭を挙げる。清涼殿の庭での儀式、舞人たちの東遊、宴の後の盃や取り食みの騒ぎを描き、賀茂の臨時の祭では還立の御神楽が心を慰めるという。神社まで見に行った夜の情景や、亡くなった舞人の少将への思いも書きとめる。
- 1なほなほなお世世よにににめでたきめでたきめでたきものものもの題
- 2臨時臨時りんじののののののおまへおまへおまえばかりばかりばかりののの事事ことははは何事何事なにごとにににかかかあらあらあらむむん。。。もももいといといとをかしをかしおかし。。。春春はるははは空空そらのののけしきけしきけしきのどかのどかのどかにてにてにてうらうらうらうらうらうらとととあるあるあるににに、、、清涼殿清涼殿せいりょうでんののの御御おまへまへまえののの庭庭にわににに、、、かもりづかさかもりづかさかもりずかさのののたゝみたゝみたたみどもどもどもをををしきしきしきててて使使つかいははは北北きたおもておもておもてににに、、、まひまひまい人人びとははは御御お前前まえのののかたかたかたににに、、、これらこれらこれらはははひがひがひが事事ごとにににもももあらあらあらむむん。。。
- 3所所ところののの衆衆しゅうどもどもどもついがさねついがさねついがさねどもどもどもとりとりとりててて、、、前前まえごとごとごとにににすゑすゑすえわたしわたしわたし、、、もももそのそのその日日ひははは御御お前前まえににに出出いででで入入いるるるぞぞぞかしかしかし。。。くぎやうくぎやうくぎょう殿上人殿上人てんじょうびとはははかはるがはるかはるがはるかわるがわる盃盃さかずきとりとりとりててて、、、はてはてはてにににはははととといふいふいう物物ものをのこをのこおのこなどなどなどのののせせせむむんだにだにだにうたてうたてうたてあるあるあるををを、、、御御お前前まえににに女女おんなぞぞぞ出出いでゝでゝでて取取とりりりけるけるける。。。思思おもひひいかけかけかけずずず人人ひとやややあらあらあらむむんとととももも知知しらららぬぬぬににに、、、ひたきひたきひたき屋屋やよりよりよりさしさしさし出出いでゝでゝでて多多おおくくく取取とらららむむんととと騷騷さわぐぐぐものものものははは、、、なかなかなかなかなかなかうちうちうちこぼしこぼしこぼしてててあつかふあつかふあつかう程程ほどににに、、、かろらかかろらかかろらかにににふとふとふと取取とりりり出出いでででぬるぬるぬるものものものにににははは後後おくれれれててて、、、かしこきかしこきかしこきをさめどのをさめどのおさめどのににに火火ひたきたきたき屋屋やをををしししててて取取とりりり入入いるゝるゝるるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。かんもりづかさかんもりづかさかんもりずかさのののものものものどもどもどもたゝみたゝみたたみとるとるとるやややおそきおそきおそきととと、、、とのもりづかさとのもりづかさとのもりずかさののの官人官人かんにんどもどもども手手て毎毎ごとにににはゝきはゝきははきとりとりとりすなごすなごすなごならすならすならす。。。承香殿承香殿しょうきょうでんののの前前まえののの程程ほどににに笛笛ふえををを吹吹ふきききたてたてたて拍子拍子ひょうしうちうちうちててて遊遊あそぶぶぶををを、、、とくとくとく出出いでででこここなむなむなんととと待待まつつつににに、、、うたひうたひうたいててて竹竹たけのののませませませのののもともともとににに歩歩あゆみみみててて出出いでゝでゝでて、、、みことみことみことうちうちうちたるたるたる程程ほどなどなどなど、、、いかにいかにいかにせせせむむんとととぞぞぞ覺覺おぼゆるゆるゆるややや。。。一一いちののの舞舞まいのののいといといとうるはしくうるはしくうるわしく袖袖そでをををあはせあはせあわせててて二人二人ふたりはしりはしりはしり出出いでゝでゝでて西西にしにににむかひむかひむかいててて立立たちちちぬぬぬ。。。つぎつぎつぎつぎつぎつぎ出出いづるづるずるににに足足あしぶみぶみぶみををを拍子拍子ひょうしににに合合あわせせせてててははは、、、はんびはんびはんびののの緖緖おつくろひつくろひつくろい、、、かうぶりかうぶりこうぶり、、、きぬきぬきぬのののくびくびくびなどなどなどつくろひつくろひつくろいててて、、、あやあやあやもももなきなきなきこまこまこま山山やまなどなどなど歌歌うたひひいててて舞舞まひひい立立たちちちたるたるたるははは、、、すべてすべてすべていみじくいみじくいみじくめでたしめでたしめでたし。。。おほひれおほひれおおいれなどなどなど舞舞まふふうははは日日ひ一一ひと日日ひ見見みるるるともともとも飽飽あくくくまじきまじきまじきををを、、、はてはてはてぬるぬるぬるこそこそこそいといといと口口くちをしけれをしけれおしけれどどど、、、又又またあるあるあるべしべしべしととと思思おもふふうはははたのもしきたのもしきたのもしきににに、、、みことみことみことかきかきかきかへしかへしかえしてててこのこのこのたびたびたびやがてやがてやがて竹竹たけのののうしろうしろうしろからからから舞舞まひひい出出いでゝでゝでてぬぎぬぎぬぎ垂垂たれれれつるつるつるさまさまさまどもどもどものののなまめかしさなまめかしさなまめかしさははは、、、いみじくいみじくいみじくこそこそこそあれあれあれ。。。かいねりかいねりかいねりののの下襲下襲したがさねなどなどなど亂亂みだれれれあひあひあいててて、、、こなたこなたこなたかなたかなたかなたにににわたりわたりわたりなどなどなどしししたるたるたる、、、いでいでいで更更さらにににいへいへいえばばばよよよのののつねつねつねなりなりなり。。。このこのこのたびたびたびははは又又またもももあるあるあるまじけれまじけれまじければばばにににややや、、、いみじくいみじくいみじくこそこそこそはてはてはてなななむむん事事ことははは口口くちをしけれをしけれおしけれ。。。上達部上達部かんだちめなどなどなどもももつゞきつゞきつづきててて出出いででで給給たまひひいぬれぬれぬればばば、、、いといといとさうざうしうさうざうしうそうぞうしゅう口口くちをしきをしきおしきににに、、、賀茂賀茂かもののの臨時臨時りんじののの祭祭まつりはははかへりだちかへりだちかえりだちののの御御み神樂神樂かぐらなどなどなどにににこそこそこそなぐさめなぐさめなぐさめらるれらるれらるれ。。。庭火庭火にわびのののけぶりけぶりけぶりののの細細ほそうううのぼりのぼりのぼりたるたるたるににに、、、神樂神樂かぐらののの笛笛ふえのののおもしろうおもしろうおもしろうわなゝきわなゝきわななき、、、ほそうほそうほそう吹吹ふきききすましすましすましたるたるたるににに、、、歌歌うたののの聲聲こえもももいといといとあはれあはれあわれにににいみじくいみじくいみじくおもしろくおもしろくおもしろく、、、寒寒さむくくくさえさえさえ氷氷こおりりりてててうちうちうちたるたるたるきぬきぬきぬもももいといといとつめたうつめたうつめとう、、、扇扇おうぎもたるもたるもたる手手てのののひゆるひゆるひゆるもももおぼえおぼえおぼえずずず。。。
- 4ざえざえざえのののをのこをのこおのこどもどもども召召めしししててて飛飛とびびびきききたるたるたるももも、、、ののの心心こころよげさよげさよげさなどなどなどこそこそこそいみじけれいみじけれいみじけれ。。。里里さとなるなるなる時時ときははは唯唯ただ渡渡わたるるるををを見見みるるるににに飽飽あかかかねねねばばば御社御社みやしろまでまでまで行行ゆきききててて見見みるるる折折おりもももありありあり。。。大大おおきききなるなるなる木木きのののもともともとににに車車くるまたてたてたてたれたれたればばば、、、松松まつのののけぶりけぶりけぶりたなびきたなびきたなびきててて、、、火火ひののの影影かげにににはんびはんびはんびののの緖緖おきぬきぬきぬのののつやつやつやももも晝晝ひるよりよりよりはははこよなくこよなくこよなくまさりまさりまさりててて見見みゆるゆるゆる。。。橋橋はしののの板板いたををを踏踏ふみみみならしならしならしつゝつゝつつ聲聲こえ合合あわせせせててて舞舞まふふう程程ほどもももいといといとをかしきをかしきおかしきににに、、、水水みずののの流流ながるゝるゝるる音音おと、、、笛笛ふえののの聲聲こえなどなどなどののの合合あひひいたるたるたるはははまことにまことにまことに神神かみももも嬉嬉うれしししとととおぼしめすおぼしめすおぼしめすらむらむらんかしかしかし。。。
- 5少將少將しょうしょうととといひいひいいけるけるけるののの年年としごとごとごとにににまひまひまい人人びとにてにてにて、、、めでたきめでたきめでたきものものものににに思思おもひひいしみしみしみけるけるけるににに、、、なくなくなくなりなりなりててて上上かみののの御社御社みやしろののの一一いちののの橋橋はしのののもともともとにににあああなるなるなるををを聞聞きけけけばばば、、、ゆゝしうゆゝしうゆゆしゅうせちせちせちににに物物ものおもひおもひおもいいれいれいれじじじととと思思おもへへえどどど、、、猶猶なおこのこのこのめでたきめでたきめでたき事事ことをををこそこそこそ更更さらにににえええ思思おもひひいすつすつすつまじけれまじけれまじけれ。。。
現代語訳
やはりこの世ですばらしいもの。
臨時の祭の、帝の御前での儀式ほどすばらしいことは、ほかに何があるだろう。試楽もたいそう趣がある。春は空の様子がのどかで、うららかなときに、清涼殿の御前の庭に、掃部寮の役人が畳を敷いて、勅使は北向きに、舞人は帝の御前のほうに向いて座る。このあたりは、私の記憶違いもあるだろう。
蔵人所の衆たちが衝重を持って来て、それぞれの前に据え並べ、陪従もその日は御前に出入りするのだ。公卿や殿上人は、かわるがわる盃を取って、最後には、やくがいというものを、男などがするのでさえみっともないのに、御前で女が出て来て取ったのだった。思いがけず人がいるとも知らないのに、火焼屋から飛び出して来て、たくさん取ろうと騒ぐ者は、かえってこぼしてしまってまごまごしているうちに、身軽にさっと取って行った者に後れを取って、恐れ多い納殿を火焼屋の代わりにして取り込むのはおもしろい。掃部寮の役人たちが畳を取り片づけるやいなや、主殿寮の官人たちが手に手に箒を取って、砂をならす。承香殿の前あたりで笛を吹き立て、拍子を打って楽を奏するので、早く出て来てほしいと待っていると、有度浜を歌って、竹の籬のもとに歩み出て、御琴をかき鳴らすときなどは、何とも言いようがないほどすばらしく思われる。一番の舞人が、たいそう端正に袖を合わせて、二人走り出て、西に向いて立った。次々に出て来て、足拍子を拍子に合わせて、半臂の緒をととのえ、冠や袍の襟などをつくろって、「あやもなき駒山」などと歌って舞い立っているのは、すべてたいそうすばらしい。大比礼などを舞うのは、一日じゅう見ていても飽きないだろうに、終わってしまうのはたいそう残念だけれど、まだ続きがあるはずだと思うと心強いところに、御琴をかき返して、今度は竹の後ろから舞い出て、肩を脱いで袖を垂らした姿の優美さは、たいそうすばらしい。掻練の下襲などが入り乱れて、あちらこちらに行き交ったりしているのは、いや、言葉にすれば平凡になってしまう。今度はもうこれで終わりだと思うからだろうか、終わってしまうのがたいそう残念だ。上達部なども続いてお帰りになってしまうと、たいそう物足りなく残念なのに、賀茂の臨時の祭は、還立の御神楽などで心が慰められる。庭火の煙が細く立ちのぼっているところに、神楽の笛がおもしろく震えるように響き、細く澄んで吹き鳴らされると、歌の声もたいそうしみじみと、すばらしくおもしろく、寒さがしみて凍りつくようで、打ち衣もたいそう冷たく、扇を持つ手が冷えるのも気にならない。
才の男たちを召すと、飛ぶようにやって来るのも、人長の気持ちよさそうな様子などもたいそうすばらしい。里に下がっているときは、行列が通るのを見るだけでは物足りないので、社まで行って見る折もある。大きな木のもとに車を止めると、松明の煙がたなびいて、火の光に、半臂の緒や衣のつやも、昼よりはこの上なく美しく見える。橋の板を踏み鳴らしながら、声を合わせて舞うのもたいそうおもしろいうえに、水の流れる音や笛の音などが合わさっているのは、本当に神もうれしいとお思いになることだろう。
少将といった人が、毎年舞人を務めて、すばらしいものと心にしみて思っていたのに、亡くなって、上の社の一の橋のもとにいるそうだと聞くと、不吉なので深く思い入れまいと思うけれど、やはりこのすばらしい祭のことは、決して思い捨てることができそうにない。
意訳
臨時の祭を、作者は「なほ世にめでたきもの」の筆頭に挙げる。宮中での儀式の進行、舞人たちの美しい舞、宴の後の取り食みの騒ぎまでが、生き生きと描かれる。とりわけ、舞が終わったと思ったら再び舞人たちが竹の後ろから舞い出てくる場面の高揚感、還立の御神楽の夜の冷たく澄んだ空気の描写は見事である。最後に、毎年舞人を務めた少将が亡くなり、霊となって社の橋のもとにいるという噂に触れ、それでもこの祭のすばらしさは忘れられないと結ぶ。
語釈・文法注
- 臨時の祭
- 賀茂神社(十一月)と石清水八幡宮(三月)で行われた臨時の祭。宮中で勅使や舞人を送り出す儀式があり、帰ってから還立の御神楽が行われた。
- しがく
- 試楽。祭の数日前に、清涼殿の前で舞人たちが行う予行演習。
- べいじゆう
- 陪従。祭で楽を奏する地下の楽人。
- やくがひ
- 取り食み(とりばみ)のことか。宴の後、残った料理を下仕えの者たちが争って取ること。
- うどはま
- 有度浜。東遊(あずまあそび)の歌の一つ。駿河国の有度浜を歌う。
- 人長
- 神楽で舞人たちを率いる長。
- 少將といひける人
- 毎年臨時の祭の舞人を務めた近衛の少将。藤原実方とする説などがある。
文法
- 「はんびの緖」
- 半臂の緒。束帯の袍の下に着る袖なしの胴衣の紐。舞人はこれを長く垂らした。
- 「みこと」
- 御琴。東遊で用いる和琴。
- 「かへりだち」
- 還立。祭の使いが帰参した後、宮中で行う神楽などの行事。
- 「ざえのをのこ」
- 才の男。神楽で、即興の歌や芸を演じる者。
解説
臨時の祭の一部始終を、宮中の儀式から神社での神楽まで、作者自身の見聞をもとに描いた段である。音と光、寒さの感覚まで書きこまれ、臨場感に富む。
結びの少将の話は、華やかな祭のかげに、亡くなった人への思いを添えたものである。祭のすばらしさと人の世のはかなさとが、さりげなく重ねられている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、281–283頁(コマ143–144)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日