枕草子 第138段 随想的章段
とりどころなきもの
取り柄のないものとして、顔が憎らしく心のねじけた人、濡れた洗い張りの糊を挙げる。こんな悪口は皆に憎まれるとしても今さらやめられないと開き直り、この草子は人に見せるつもりもなく、思うことをすべて書くために書いたのだと述べる。
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- 1とりどころとりどころとりどころなきなきなきものものもの題
- 2かたちかたちかたちにくげにくげにくげににに心心こころあしきあしきあしき人人ひと。。。のののぬれぬれぬれたるたるたる。。。これこれこれいみじういみじういみじゅうわろきわろきわろき事事こと言言いひひいたるたるたるとととよろづよろづよろずののの人人ひとにくむにくむにくむなるなるなることゝてことゝてこととて今今いまとゞむとゞむとどむべきべきべきにににもももあらあらあらずずず。。。又又またあとびあとびあとびののの火火ひばしばしばしととといふいふいう事事ことなどなどなどてててかかか。。。世世よににになきなきなき事事ことならならならねねねばばば皆皆みな人人ひと知知しりりりたらたらたらむむん。。。げにげにげに書書かきききいでいでいで人人ひとののの見見みるるるべきべきべき事事ことにににはははあらあらあらねねねどどど、、、このこのこの草紙草紙そうしををを見見みるるるべきべきべきものものものととと思思おもははわざりざりざりしかしかしかばばば、、、あやしきあやしきあやしき事事ことをををもももにくきにくきにくき事事ことをををももも、、、唯唯ただ思思おもははわむむん事事ことのののかぎりかぎりかぎりををを書書かかかかむむんとてとてとてありありありしししなりなりなり。。。
現代語訳
取り柄のないもの。
顔が憎らしげで、心のねじけた人。洗い張りの糊が濡れたの。これは、たいそうひどいことを言ったものだと、皆の人が憎むそうだからといって、今さらやめるわけにもいかない。また、「あとびの火箸」ということも、どうして書いてはいけないのか。世にないことではないので、誰でも知っているだろう。たしかに、書き出して人が見るようなことではないけれど、この草子は人が見るはずのものとは思わなかったので、妙なことも憎らしいことも、ただ思うことを残らず書こうと思って書いたのである。
意訳
「取り柄のないもの」として挙げた例が、あまりに辛辣だったり下品だったりすることに、作者は自分で気づいている。それでも、皆に憎まれようとやめられないと開き直り、もともとこの草子は人に見せるつもりで書いたものではないのだから、思ったことはすべて書くのだと宣言する。『枕草子』という作品の書き方そのものを語った、跋文にも通じる重要な一節である。
語釈・文法注
- みそひめ
- 洗い張りの際に布に塗る糊(続飯・そくい)の一種とされる。濡れるとべとべとして始末に負えない。
文法
- 「あとびの火ばし」
- 意味がはっきりしない。下品なことのたとえとされ、作者はそれを書くことをためらいながらも書いている。
- 「ことゝて」
- 「ことだとて」。ことだからといって。
解説
この段の後半は、作品の執筆態度を語ったものとして注目される。巻末の跋文でも、作者は「人に見せるつもりはなかった」と述べており、この段はその考えを先取りしている。
「唯思はむ事のかぎりを書かむ」という言葉には、評判を気にせず、自分の感じたことを率直に書くという作者の姿勢がよく表れている。
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出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、280–281頁(コマ143)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日