枕草子 第122段 類聚的章段
暑げなるもの
暑苦しく見えるものとして、随身の長の狩衣、衲の袈裟、出居の少将、ひどく太った人の髪の多いの、琴の袋、真夏の修法の阿闍梨、同じころの銅の鍛冶を挙げる。
場面イラスト(準備中)
現代語訳
暑苦しく見えるもの。
随身の長の狩衣。衲の袈裟。出居の少将。ひどく太った人で、髪の多いの。琴の袋。六、七月の修法の阿闍梨が、日中の勤行などをしているの。また、同じころの銅の鍛冶。
意訳
見るだけで汗ばんでくるようなものを並べている。厚手の布を重ねた衣装、太った人の豊かな髪、日盛りに修法の座に詰める僧、炉の火を前にした鍛冶。暑さそのものではなく、それを感じさせる人や物の姿を挙げているところに、作者の感覚の鋭さがある。
語釈・文法注
- のふ
- 衲(のう)。古い布をつぎ合わせて作った僧衣。厚ぼったく見える。
- でゐ
- 出居(でい)。宮中の行事の際、近衛の少将などが詰める座。厳めしい武官の装束で座っている姿をいう。
文法
- 「きんの袋」
- 琴(きん)を入れる袋とされる。錦の袋とする説もある。
- 「ずほふの阿ざ梨」
- 修法を行う阿闍梨。密教の祈祷を行う高僧。夏の盛りに、火を焚く護摩などを行う姿は暑苦しい。
解説
前段の「わびしげに見ゆるもの」に続き、見た目の印象で物を集めた短い段である。
体格や髪の量といった人の外見から、職人の仕事場まで、暑さを感じさせるものを幅広く拾っている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、269頁(コマ137)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日