枕草子 第121段 類聚的章段
わびしげに見ゆるもの
みすぼらしく見えるものとして、夏の真昼に汚い車をやせ牛に引かせて行くもの、年老いた物乞い、子を背負った下女、雨に濡れた小さな板屋、雨の日に小さな馬に乗って先払いをする人などを挙げる。
場面イラスト(準備中)
- 1わびしげわびしげわびしげににに見見みゆるゆるゆるものものもの題
- 2六六ろく七月七月しちがつののの午午うま未未ひつじののの時時ときばかりばかりばかりにににきたなげきたなげきたなげなるなるなる車車くるまにににえせえせえせ牛牛うしかけかけかけてててゆるがしゆるがしゆるがし行行ゆくくくものものもの。。。雨雨あめふらふらふらぬぬぬ日日ひはりはりはりむしろむしろむしろしししたるたるたる車車くるま。。。降降ふるるる日日ひはりはりはりむしろむしろむしろせせせぬぬぬももも。。。年年とし老老おいいいたるたるたるかたゐかたゐかたい、、、いといといと寒寒さむきききをりをりおりももも暑暑あつきききにににももも。。。げすげすげす女女おんなのののなりなりなりあしきあしきあしきががが子子こををを負負おひひいたるたるたる。。。ちひさきちひさきちいさき板屋板屋いたやののの黑黑くろうううきたなげきたなげきたなげなるなるなるががが雨雨あめにににぬれぬれぬれたるたるたる。。。雨雨あめのののいたくいたくいたく降降ふるるる日日ひちひさきちひさきちいさき馬馬うまににに乘乘のりりりてててしししたるたるたる人人ひとのののかうぶりかうぶりこうぶりもももひしげひしげひしげ、、、袍袍うえのきぬももも下襲下襲したがさねもももひとつひとつひとつににになりなりなりたるたるたる、、、いかにいかにいかにわびしからわびしからわびしからむむんととと見見みえええたりたりたり。。。夏夏なつはははされどされどされどよしよしよし。。。
現代語訳
みすぼらしく見えるもの。
六、七月の、午の刻から未の刻ごろの暑い盛りに、汚らしい車に、見ばえのしない牛をかけて、がたがたと揺らしながら行くもの。雨の降らない日に、張り筵をかけてある車。雨の降る日に、張り筵をかけていないのも。年老いた物乞いが、たいそう寒い時にも暑い時にも。身なりの悪い下女が子を背負っているの。小さな板葺きの家が黒ずんで汚らしいのが、雨に濡れているの。雨のひどく降る日に、小さな馬に乗って先払いをしている人の、冠もつぶれ、袍も下襲も濡れて一つにくっついてしまっているのは、どんなにつらいだろうと見える。夏ならまだよい。
意訳
暑さ寒さや雨の中で、貧しさやみじめさがいっそう際立つ光景を集めている。真夏の真昼に汚れた車を引くやせ牛、季節を問わず道ばたにいる老いた物乞い、雨にぬれて黒ずんだ小屋。最後の、ずぶぬれで先払いをする役人の姿には、同情とともにどこか滑稽さも感じられ、「夏はされどよし」の一言が軽い笑いを添えている。
語釈・文法注
- ぜんく
- 前駆。貴人の外出の際、行列の先に立って道の人を払う役。
文法
- 「はりむしろ」
- 張り筵。雨よけに牛車の屋形にかける筵。
- 「かたゐ」
- 乞食。物乞い。
解説
「わびし」は、つらく心細い、みすぼらしいの意。作者は、天候や季節がみじめさを強める場面を的確にとらえている。
雨の日の前駆の姿は、身分の低い役人の勤めのつらさを描いたものである。濡れて形の崩れた冠や衣を細かく描くところに、作者の観察眼がうかがえる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、269頁(コマ137)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日