枕草子 第113段 日記的章段
卯月の晦日に
四月の末に長谷寺へ参詣する途中、淀の渡しで車ごと舟に乗った。舟から菖蒲や菰を取らせると、たいそう長かった。帰りには雨の中、菖蒲を刈る男たちの姿が屏風の絵のようだった。
場面イラスト(準備中)
- 1卯卯う月月ずきののの晦晦つごも日日りにににはせはせはせ寺寺でらにににまうづまうづもうずとてとてとて淀淀よどのののわたりわたりわたりととといふいふいうものものものをををせせせしかしかしかばばば、、、舟舟ふねににに車車くるまをををかきかきかきすゑすゑすえてててゆくゆくゆくににに、、、しやうぶしやうぶしょうぶこもこもこもなどなどなどののの末末すえみじかくみじかくみじかく見見みえええしししをををとらとらとらせせせたれたれたればばばいといといと長長ながかりかりかりけるけるける。。。菰菰こも積積つみみみたるたるたるふねふねふねのののありきありきありきしししこそこそこそいみじういみじういみじゅうをかしかりをかしかりおかしかりしかしかしか。。。高高たか瀨瀨せののの淀淀よどにににはははこれこれこれをををよみよみよみけるけるけるなななめりめりめりととと見見みえええししし。。。三三み日日かととといふいふいうににに歸歸かえるるるににに雨雨あめのののいみじういみじういみじゅう降降ふりりりしかしかしかばばばさうぶさうぶそうぶかるかるかるとてとてとて笠笠かさのののいといといとちひさきちひさきちいさきををを着着きててて、、、はぎはぎはぎいといといとたかきたかきたかきをのこをのこおのこわらはわらはわらわなどなどなどのののあるあるあるももも、、、屏屏びょう風風ぶののの繪繪えにににいといといとよくよくよく似似にたりたりたり。。。
現代語訳
四月の末に、長谷寺に参詣しようとして、淀の渡しというものをしたところ、舟に牛車をかつぎ載せて渡っていくときに、菖蒲や菰などの先が短く見えたのを取らせたところ、たいそう長かった。菰を積んだ舟が行き交っていたのは、たいそうおもしろかった。「高瀬の淀に」という歌は、これを詠んだのだろうと思われた。五月三日に帰るときに、雨がひどく降ったので、菖蒲を刈るといって、ごく小さな笠をかぶり、すねをたいそう高く出した男や童などがいるのも、屏風の絵にとてもよく似ていた。
意訳
長谷寺参詣の往復の旅の一こま。淀の渡しで牛車ごと舟に乗り、水面から短く見えていた菖蒲や菰を引き抜かせると、思いのほか長い。菰を積んだ舟が行き交う様子に、古歌の情景を重ねる。帰りには、雨の中で小さな笠をかぶり、すねを出して菖蒲を刈る人々の姿が、屏風の絵そのもののように見えた。
語釈・文法注
文法
- 「淀のわたり」
- 淀の渡し。山城国淀の渡し場。
- 「高瀨の淀」
- 「真菰刈る淀の沢水深けれど底まで月の影は澄みけり」などの古歌の世界を連想したもの。
- 「はぎいとたかき」
- すねをたいそう高く出した。裾をまくり上げた姿。
解説
長谷寺参詣の旅の情景を描いた日記的章段である。旅先で見た庶民の暮らしの姿を、「屏風の繪にいとよく似たり」と、絵画的な美として受けとめているところに、作者の美意識がうかがえる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、263頁(コマ134)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日