枕草子 第109段 類聚的章段
はるかなるもの
先の長いものとして、千日の精進を始める日、半臂の緒をひねり始める日、陸奥へ行く人が逢坂の関を越えるころ、生まれた赤ん坊が大人になるまで、大般若経を一人で読み始めること、十二年の山籠もりに初めて登る日を挙げる。
場面イラスト(準備中)
- 1はるかはるかはるかなるなるなるものものもの題
- 2千千せん日日にちのののさうじさうじそうじはじむるはじむるはじむる日日ひ。。。のののをををひねりひねりひねりはじむるはじむるはじむる日日ひ。。。みちみちみちののの國國くにへへへゆくゆくゆく人人ひとののの逢逢おう坂坂さかののの關關せきこゆるこゆるこゆるほどほどほど。。。うまれうまれうまれたるたるたるちごちごちごのののおとなおとなおとなににになるなるなるほどほどほど。。。大大だい般般はん若若にゃ經經きょう御御みどぎやうどぎやうどぎょう一一ひと人人りしししててて讀讀よみみみ始始はじむるむるむる。。。十十じゅう二二に年年ねんののの山山やまごもりごもりごもりののの始始はじめめめてててのぼるのぼるのぼる日日ひ。。。
現代語訳
はるかに先の長いもの。
千日の精進を始める日。半臂の緒をひねり始める日。陸奥の国へ行く人が、逢坂の関を越えるころ。生まれた赤ん坊が大人になるまで。大般若経の御読経を一人で読み始めること。十二年の山籠もりに、初めて山に登る日。
意訳
始めたばかりで、終わりがはるか遠いものを挙げる。千日の精進、手間のかかる半臂の緒づくり、陸奥への長旅、赤ん坊の成長、六百巻の大般若経の一人での読経、十二年の山籠もり。いずれも、始めの一歩を踏み出したばかりの、気の遠くなるような長い道のりである。
語釈・文法注
- はんび
- 半臂(はんぴ)。束帯の袍の下に着る袖の短い衣。その緒(ひも)を手でひねって作るのは手間のかかる作業だった。
文法
- 「大般若經」
- 六百巻に及ぶ長大な経典。一人で読み通すのは途方もない作業である。
解説
先の長いものを挙げた短い類聚的章段である。精進や修行、旅、子どもの成長と、さまざまな「はるかなるもの」が並べられ、その始まりの時点に目を向けているところに特色がある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、261頁(コマ133)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日