古典ライブラリー

枕草子 第107段 日記的章段

殿上より梅の花の

殿上から花の散った梅の枝が届けられ「これはどうか」と問われた作者が、ただ「早く落ちにけり」と答えると、殿上人たちがその詩句を朗詠し、帝も「下手な歌を詠むよりずっとよい」と感心された。

  1. 1殿上てんじやう殿上てんじやうてんじょうよりよりより梅むめ梅むめうめののの花はな花はなはなののの皆みな皆みなみな散ち散ちちりりりたるたるたる枝えだ枝えだえだををを「「「これこれこれはははいかにいかにいかに」」」ととといひいひいいたるたるたるににに唯ただ唯ただただ「「「早はや早はやはやくくく落お落おおちちちにににけりけりけり」」」ととといらへいらへいらえたれたれたればばば、、、そのそのその詩し詩ししをををじゆじじゆじじゆじててて黑くろ黑くろくろ戶ど戶どどににに殿上人てんじやうびと殿上人てんじやうびとてんじょうびといといといと多おほ多おほおおくくく居ゐ居ゐいたるたるたるををを、、、上うへ上うへうえののの御お御おお前まへ前まへまえきかきかきかせせせ坐おは坐おはおわしまししまししましててて「「「宜よろ宜よろよろしきしきしき歌うた歌うたうたなどなどなど詠よ詠よよみみみたらたらたらむむんよりよりよりもももかゝるかゝるかかることことことははは勝まさ勝まさまさりりりたりたりたりかしかしかし。。。ようようよういらへいらへいらえたりたりたり」」」ととと仰おほ仰おほおおせせせらるらるらる。。。

引用の仕方

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現代語訳

殿上から、梅の花がすっかり散った枝を、「これはどうですか」と言ってきたので、ただ「早く落ちにけり」と答えたところ、殿上人たちがその詩を朗詠して、黒戸に殿上人がたいそう大勢座っていたのを、帝がお聞きになって、「並一通りの歌などを詠んだりするよりも、こういう返事の方がまさっている。うまく答えたものだ」とおっしゃった。

意訳

花の散った梅の枝を見せられて、作者は「早く落ちにけり」とだけ答えた。これは「大庾嶺の梅は早く落ちぬ」という漢詩の一節を踏まえた返答で、殿上人たちはすぐにその詩を朗詠した。一条天皇は、下手な歌を詠むより、こうした機知に富んだ返答の方がはるかによいと感心する。漢詩の教養を一言で示した、作者の当意即妙ぶりが伝わる段である。

語釈・文法注

文法

「早く落ちにけり」
『和漢朗詠集』の「大庾嶺之梅早落、誰問粉粧。匡廬山之杏未開、豈趁紅艶」(大庾嶺の梅は早く落ちぬ、誰か粉粧を問はん)による。
「じゆじて」
誦じて。朗詠して。

解説

作者の漢詩の教養と機知を示す短い日記的章段である。花の散った梅の枝という問いかけに、漢詩の一句で答えるのは、謎かけへの答えとして見事なものである。

一条天皇が「宜しき歌など詠みたらむよりも」と評したのは、和歌でなく漢詩の一句で答えたことの意外さと的確さとをほめたものである。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、260頁(コマ133)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日