枕草子 第96段 類聚的章段
ねたきもの
しゃくにさわるものとして、送った手紙の文字を後から直したくなったとき、急ぎの縫い物で糸の端を結び忘れたときなどを挙げる。南の院で中宮の衣を急ぎ縫った時の失敗談、見せたくない手紙を持っていかれたときなど、日常のしゃくな出来事を描く。

- 1ものものもの題
- 2これこれこれよりよりよりやるやるやるももも、、、人人ひとのののいひいひいいたるたるたる返返かえしししももも、、、書書かきききててて遣遣やりりりつるつるつるのちのちのち、、、文文も字字じ一一ひとつつつ二二ふたつつつなどなどなど思思おもひひいなほしなほしなおしたるたるたる。。。とみとみとみのののものものものぬふぬふぬうににに縫縫ぬひひいはてはてはてつつつととと思思おもひひいててて針針はりをををひきひきひき拔拔ぬきききたれたれたればばば、、、はやうはやうはようしりしりしりををを結結むすばばばざりざりざりけるけるける。。。又又またかへさまかへさまかえさまににに縫縫ぬひひいたるたるたるもももいといといとねたしねたしねたし。。。
- 3南南みなみのののにににおはしますおはしますおわしますころころころ、、、西西にしののの對對たいににに殿殿とののののおはしますおはしますおわしますかたかたかたににに、、、宮宮みやもももおはしませおはしませおわしませばばば、、、しんでんしんでんしんでんににに集集あつまりりり居居いててて、、、さうざうしけれさうざうしけれそうぞうしければばばふれふれふれあそびあそびあそびをををししし、、、わたどのわたどのわたどのににに集集あつまりりりゐゐいなどなどなどしししてててあるあるあるににに、、、「「「これこれこれ唯唯ただ今今いまとみとみとみのののものものものなりなりなり。。。誰誰たれももも誰誰たれももも集集あつまりりりててて時時ときかはさかはさかわさずずず縫縫ぬひひいててて參參まいらせらせらせよよよ」」」とてとてとてひらぬきひらぬきひらぬきののの御御おおんぞぞぞををを給給たまはせはせわせたれたれたればばば、、、みなみみなみみなみおもておもておもてににに集集あつまりりり居居いててて御御おおんぞぞぞかたみかたみかたみづゝづゝずつ、、、誰誰たれかかかとくとくとく縫縫ぬひひい出出いづるづるずるととといどみいどみいどみつゝつゝつつ、、、近近ちかくくくももも對對むかははわずずず、、、縫縫ぬふふうさまさまさまもももいといといと物物ものぐるほしぐるほしぐるおし。。。命命みょう婦婦ぶののの乳乳め母母のといといといととくとくとく縫縫ぬひひいはてゝはてゝはててうちうちうち置置おきききつるつるつる、、、ゆだけゆだけゆだけのののかたかたかたののの御御おおん身身みををを縫縫ぬひひいつるつるつるがががそむきそむきそむきざまざまざまなるなるなるををを見見みつけつけつけずずず、、、とぢめとぢめとじめもももしししあへあへあえずずず惑惑まどひひい置置おきききててて立立たちちちぬるぬるぬるににに、、、御御おおんせせせ合合あわせせせむむんとととすれすれすればばばはやうはやうはようたがひたがひたがいにににけりけりけり。。。笑笑わらひひいのゝしりのゝしりののしりててて「「「これこれこれ縫縫ぬひひい直直なおせせせ」」」ととといふいふいうををを「「「たれたれたれがががあしうあしうあしゅう縫縫ぬひひいたりたりたりととと知知しりりりてててかかか直直なおさささむむん。。。あやあやあやなどなどなどならならならばばばこそこそこそ裏裏うらををを見見みざらざらざらむむん、、、縫縫ぬひひいたがへたがへたがえののの人人ひとのののけけけににになほさなほさなおさめめめ。。。無無む紋紋もんののの御御おおんぞぞぞなりなりなり。。。何何なにをををしるししるししるしにてにてにてかかか直直なおすすす人人ひと誰誰たれかかかあらあらあらむむん。。。唯唯ただまだまだまだ縫縫ぬひひい給給たまははわざらざらざらむむん人人ひとににになほさなほさなおさせよせよせよ」」」とてとてとて聞聞ききききももも入入いれれれねねねばばば「「「さささ言言いひひいてててあらあらあらむむんややや」」」とてとてとて源源げん少少しょう納納な言言ごん、、、新新しん中中ちゅう納納な言言ごんなどなどなど言言いひひい直直なおししし給給たまひひいししし顏顏かお見見みやりやりやりててて居居いたりたりたりしししこそこそこそをかしかりをかしかりおかしかりしかしかしか。。。これこれこれはははよさりよさりよさりのぼらのぼらのぼらせせせ給給たまははわむむんとてとてとて「「「とくとくとく縫縫ぬひひいたらたらたらむむん人人ひとををを、、、思思おもふふうととと知知しらららむむん」」」ととと仰仰おおせせせられられられしかしかしか。。。
- 4見見みすすすまじきまじきまじき人人ひとににに、、、外外ほかへへへ遣遣やりりりたるたるたる文文ふみ取取とりりりたがへたがへたがえてててもてもてもて行行ゆきききたるたるたるねたしねたしねたし。。。げにげにげに過過あやまちちちてててけりけりけりとととはははいはいはいわででで口口くちかたうかたうかとうあらがひあらがひあらがいたるたるたる、、、人人ひと目目めをををだにだにだに思思おもははわずずずばばば走走はしりりりもももうちうちうちつつつべしべしべし。。。おもしろきおもしろきおもしろき萩萩はぎすゝきすゝきすすきなどなどなどををを植植うゑゑえててて見見みるるる程程ほどににに、、、ながながながびつびつびつもたるもたるもたるものものもの鋤鋤すきなどなどなどひきひきひきさげさげさげてててたゞたゞただほりほりほりにににほりほりほりててていぬるいぬるいぬるこそこそこそわびしうわびしうわびしゅうねたかりねたかりねたかりけれけれけれ。。。よろしきよろしきよろしき人人ひとなどなどなどのののあるあるあるをりをりおりはははさささもももせせせぬぬぬものものものををを、、、いみじういみじういみじゅうせいすれせいすれせいすれどどど「「「たゞたゞただすこしすこしすこし」」」などなどなど言言いひひいててていぬるいぬるいぬる言言いふふうかひかひかいなくなくなくねたしねたしねたし。。。ずりやうずりやうずりょうなどなどなどののの來來きてててなめげなめげなめげににに物物ものいひいひいい、、、さりとてさりとてさりとて我我われをををばばばいかゞいかゞいかがととと思思おもひひいたるたるたるけはひけはひけわいににに言言いひひい出出いでででたるたるたるいといといとねたげねたげねたげなりなりなり。。。見見みすすすまじきまじきまじき人人ひとののの文文ふみををを引引ひききき取取とりりりててて、、、庭庭にわにににおりおりおりててて見見みたてるたてるたてるいといといとわびしうわびしうわびしゅうねたくねたくねたく、、、追追おひひいててて行行ゆけけけどどど、、、すすすのののもともともとにににとまりとまりとまりててて見見みるるるこそこそこそ飛飛とびびびももも出出いでででぬぬぬべきべきべき心心ここちちちすれすれすれ。。。すゞろすゞろすずろなるなるなることことことはらだちはらだちはらだちててて同同おなじじじ所所ところにににもももねねねずずず、、、身身みじくりじくりじくり出出いづるづるずるをををしのびしのびしのびててて引引ひきききよすれよすれよすれどどど、、、わりなくわりなくわりなく心心こころことことことなれなれなればばば、、、あまりあまりあまりににになりなりなりててて人人ひともももさばさばさばよかよかよかなりなりなりとととゑじゑじえじててて、、、かいかいかいくゞみくゞみくぐみててて臥臥ふしししぬるぬるぬる後後のちいといといと寒寒さむききき折折おりなどなどなどににに、、、唯唯ただひとへひとへひとえぎぬぎぬぎぬばかりばかりばかりにてにてにてあやにくあやにくあやにくがりがりがりててて、、、大大おおかたかたかた皆皆みな人人ひともももねねねたるたるたるににに、、、さすがにさすがにさすがに起起おきききゐゐいらむらむらんあやしくあやしくあやしくててて、、、夜夜よののの更更ふくるくるくるまゝまゝままにににねたくねたくねたく起起おきききてててぞぞぞいぬいぬいぬべかりべかりべかりけるけるけるなどなどなど思思おもひひい臥臥ふしししたるたるたるににに、、、奧奧おくにににもももとととにににももも物物ものうちうちうちなりなりなりなどなどなどしししててておそろしけれおそろしけれおそろしければばば、、、やをらやをらやおらまろびまろびまろび寄寄よりりりてててきぬきぬきぬ引引ひきききあぐるあぐるあぐるににに、、、そらそらそらねねねしししたるたるたるこそこそこそいといといとねたけれねたけれねたけれ。。。「「「猶猶なおこそこそこそこはがりこはがりこわがり給給たまははわめめめ」」」などなどなどうちうちうちいひいひいいたるたるたるよよよ。。。
現代語訳
しゃくにさわるもの。
こちらから送る手紙も、人が言ってよこした手紙への返事も、書いて送ってしまった後に、文字の一つ二つなどを直したいと思ったの。急ぎの縫い物をしていて、縫い終わったと思って針を引き抜いたところ、とっくに糸の端を結んでいなかったの。また、裏返しに縫ってしまったのも、たいそうしゃくだ。
中宮様が南の院にいらっしゃったころ、西の対に関白殿のお住まいがあって、中宮様もそちらにいらっしゃったので、女房たちは寝殿に集まっていて、退屈なので遊び戯れたり、渡殿に集まって座ったりしていると、「これは今すぐ必要な急ぎのものです。誰も彼も集まって、時を移さず縫って差し上げなさい」と言って、平絹の御衣をくださったので、南面に集まって、御衣の片身ずつを分担して、誰が早く縫い上げるかと競い合いながら、向かい合いもせず、縫う様子もたいそう正気の沙汰でない。命婦の乳母がたいそう早く縫い終わって置いたのが、裄丈の方の身頃を縫ったのが裏返しになっているのに気づかず、糸の結び目もしないで、あわてて置いて立ってしまったので、背中を合わせようとすると、とっくに食い違っていた。笑い騒いで、「これを縫い直しなさい」と言うのを、「誰が悪く縫ったと分かって直しましょうか。綾などなら裏を見ないで縫い違えた人の責任として直しもしましょう。無紋の御衣です。何を目印にして直す人がいましょう。ただ、まだ縫っていない人に直させなさい」と言って聞き入れないので、「そんなことを言っていられましょうか」と言って、源少納言や新中納言などが縫い直していらっしゃった時の、命婦の乳母が顔を見やって座っていたのは、おかしかった。これは、中宮様が夜に参上なさろうとして、「早く縫い上げた人を、私を大事に思っているのだと思いましょう」とおっしゃったのだった。
見せてはいけない人のところに、ほかへやった手紙を取り違えて持っていったのは、しゃくだ。「本当に間違えました」とは言わずに、口をかたくなにして言い張るのは、人目さえ気にしなければ、走っていって打ちたいほどだ。趣のある萩や薄などを植えて眺めているうちに、長櫃を持った者が、鋤などをぶら下げてきて、ただ掘りに掘って持っていってしまうのは、つらくしゃくだった。相応の人などがいるときは、そんなこともしないのに、ひどく止めても、「ほんの少しだけ」などと言って持っていってしまうのは、言いようもなくしゃくだ。受領などが来て、無礼な口をきき、そうはいっても自分をどうすることもできまいと思っている様子で言い出すのは、たいそうしゃくだ。見せてはいけない人の手紙を引ったくって、庭に下りて立って見ているのは、たいそうつらくしゃくで、追いかけていっても、御簾のもとで止まって見ていなければならないのは、飛び出していきたい気持ちがする。つまらないことで腹を立てて、同じ所にも寝ないで、体をよじって出ていくのを、こっそり引き寄せるけれど、むやみに意地を張っているので、あまりのことに、こちらも「それならそれでよい」と恨んで、夜具にくるまって寝てしまった後、たいそう寒い時などに、相手はただ単衣だけで意地を張って、大部分の人が寝ているのに、さすがに起きているのも変なので、夜がふけるにつれて、しゃくだが起きて行ってしまえばよかったなどと思って横になっていると、奥でも外でも物音がしたりして恐ろしいので、そっと転がり寄って夜具を引き上げると、相手が寝たふりをしているのは、たいそうしゃくだ。「やはり怖いのでしょう」などと言うのよ。
意訳
「ねたし」は、しゃくにさわる、いまいましいという気持ち。手紙を出した後で直したくなったり、縫い物の糸の結びを忘れたり。南の院で中宮の衣を急いで縫った時の、縫い違えをめぐる女房たちの騒ぎは、ユーモラスな失敗談である。最後の、けんかをした恋人どうしが、寒い夜に意地を張り合ったあげく、こちらから寄っていくと相手が寝たふりをしていた、という場面は、恋の駆け引きのおかしさとしゃくな気持ちとを、生き生きと描いている。
語釈・文法注
- ねたき
- 「ねたし」の連体形。しゃくにさわる、いまいましい。相手に負けたような、悔しい気持ち。
- 南の院
- 東三条院の南院。関白藤原道隆の邸宅。
文法
- 「ゆだけ」
- 裄丈。着物の、背縫いから袖口までの長さ。
- 「ひらぬき」
- 平絹。平織りの絹。
- 「とぢめ」
- 縫い終わりの糸の結び目。
- 「人のけに」
- 人のせいにして。
- 「思ふと知らむ」
- (早く縫った人を)私を大切に思っているのだと思いましょう。
解説
しゃくにさわるものを挙げた類聚的章段で、日常のささいな悔しさが、女房生活の具体的な場面とともに描かれている。南の院での縫い物の失敗談は、定子の後宮の女房たちのにぎやかな日常を伝えている。
最後の恋人どうしの意地の張り合いの場面は、恋愛の機微を鋭くとらえたもので、作者の観察眼と描写力がよく表れている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、245–247頁(コマ125–126)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日