古典ライブラリー

枕草子 第95段 日記的章段

御乳母の大輔の

中宮定子が、日向へ下る乳母の大輔に扇を与えた。片面には日の照る旅の景色を、もう片面には京の雨の景色を描かせ、「あかねさす日に向かひても思ひ出でよ都は晴れぬながめすらむと」と自ら書き添えた。

扇の片面に日の照る旅路、もう片面に雨の都で物思いにふける人が描かれている。
扇の片面に日の照る旅路、もう片面に雨の都で物思いにふける人が描かれている。
  1. 1御おほん御おほんおおんめのとめのとめのとのののたいふたいふたいふののの、、、けふけふきょうひうがひうがひゅうがへへへくだるくだるくだるににに賜たま賜たまたまはするはするわする扇あふぎ扇あふぎおうぎどもどもどものののなかなかなかににに、、、片かた片かたかたつかたつかたつかたにににははは日ひ日ひひいといといとはなやかはなやかはなやかにににさしさしさし出い出いいでゝでゝでて、、、旅たび旅たびたび人びと人びとびとのののあるあるある所ところ所ところところ井ゐ井ゐい手で手ででののの中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうのののたちたちたちなどなどなどいふいふいうさまさまさまいといといとをかしうをかしうおかしゅう書か書かかきききててて、、、今いま今いまいま片かた片かたかたつかたつかたつかたにににははは京きやう京きやうきょうのののかたかたかた雨あめ雨あめあめいみじういみじういみじゅう降ふ降ふふりりりたるたるたるににに、、、ながめながめながめたるたるたる人ひと人ひとひとなどなどなどかきかきかきたるたるたるににに、、、
  2. 2「「「あかねさすあかねさすあかねさす日ひ日ひひにににむかひむかひむかいてててももも思おも思おもおもひひいいでいでいでよよよ都みやこ都みやこみやこははは晴は晴ははれれれぬぬぬながめながめながめすすすらむらむらんととと」」」。。。
  3. 3ことばことばことばににに御おほん御おほんおおん手て手ててづからづからずから書か書かかかかかせせせ給たま給たまたまひひいししし、、、あはれあはれあわれなりなりなりききき。。。さるさるさる君きみ君きみきみをををおきおきおき奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりててて遠とほ遠とほとおくくくこそこそこそえええいくいくいくまじけれまじけれまじけれ。。。

引用の仕方

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現代語訳

中宮様の御乳母の大輔が、今日、日向へ下るときにくださる扇の中に、片面には日がたいそう華やかに差し出て、旅人のいる所や、井手の中将の館などというような様子を、たいそう趣深く描いて、もう片面には、京の方は雨がひどく降っているところに、物思いにふけっている人などを描いてあるのに、

茜色に輝く日に向かっても思い出しておくれ。都では晴れることのない長雨の中で、物思いにふけっているだろうと。

という歌を、詞書として御自らお書きになったのは、しみじみと心を打った。こんなにすばらしい主君を置いて、遠くへなど、とても行けないだろうに。

意訳

日向へ下る乳母の大輔に、定子は扇を贈る。片面には日の照る地方の旅の景色、もう片面には雨の降る都の景色。日向(ひむか)の「日」と都の「長雨(ながめ)」を対比させ、遠く離れても私を思い出しておくれ、と歌を書き添えた。中関白家が没落し、身近な人々が去っていく中での定子の寂しさが、しみじみと伝わってくる。

語釈・文法注

文法

「井手の中將」
物語の登場人物か。詳細は不明。
「えいくまじけれ」
とても行けそうにない。「え…まじ」は不可能の推量。

和歌

あかねさす日に向かひても思ひ出でよ都は晴れぬながめすらむと

詠者
中宮定子
状況
日向へ下る乳母の大輔に贈った扇に、自ら書き添えた歌。

修辞

掛詞
「ながめ」に「長雨」と「眺め(物思いにふけること)」をかける。
対比
日の照る日向(ひむか)と、雨の晴れない都とを対比させている。

解説

定子の乳母が日向へ下る際の別れを描いた日記的章段である。定子が扇に描かせた絵と、自ら書いた歌には、去っていく乳母への思いと、都に残る自分の寂しさとがこめられている。

最後の「さる君をおき奉りて遠くこそえいくまじけれ」は、作者自身の定子への深い忠誠心を表している。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、244–245頁(コマ125)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日