枕草子 第92段 日記的章段
無名といふ琵琶の御琴を
帝が「無名」という名の琵琶をお持ちになったとき、作者が「これの名は何と」と尋ねると、中宮定子が「ただいとはかなく名もなし」とお答えになった、その機知をすばらしいと思う短い段。

- 1ととといふいふいう琵琵び琶琶わののの御御おおんことことことををを、、、うへうへうえのののもてもてもてわたらわたらわたらせせせ給給たまへへえるるるををを見見みなどなどなどしししててて、、、かきかきかきならしならしならしなどなどなどすすすととと言言いへへえばばばひくひくひくにににはははあらあらあらずずず。。。緒緒おなどなどなどををを手手てまさぐりまさぐりまさぐりにににしししててて「「「これこれこれががが名名なよよよ、、、いかにいかにいかにとととかかかややや」」」などなどなど聞聞きこえええさするさするさするににに、、、唯唯ただいといといとはかなくはかなくはかなく名名なもももなしなしなしとととのたまはのたまはのたまわせせせたるたるたるははは猶猶なおいといといとめでたくめでたくめでたくこそこそこそ覺覺おぼえええしかしかしか。。。
現代語訳
無名という名の琵琶を、帝がお持ちになってお渡りになったのを、拝見したりして、かき鳴らしたりするといっても、弾くわけではない。緒などを手でもてあそんで、「これの名は、何と言いましたかしら」などと申し上げると、中宮様が「ただたいそうつまらないもので、名もない」とおっしゃったのは、やはりたいそうすばらしく思われた。
意訳
「無名」という名の琵琶について、名前を尋ねた作者に、定子は「名もなし」と答える。琵琶の名「無名」と「名もない(つまらないもの)」とをかけた、さりげない機知の応答である。作者はその当意即妙をたたえている。
語釈・文法注
- むみやう
- 無名。宮中に伝わる琵琶の名器の名。
文法
- 「名もなし」
- 琵琶の名「無名」と、名もない(取るに足りない)という謙遜とをかけた言い方。
解説
中宮定子の機知を伝える短い日記的章段である。名器の名をそのまま言わずに、謙遜の言葉に重ねて答えるところに、定子の洗練された言葉の感覚が表れている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、243頁(コマ124)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日