枕草子 第87段 類聚的章段
めでたきもの
すばらしいものとして、唐錦、飾り太刀、藤の花を挙げ、とりわけ六位の蔵人の晴れがましさを詳しく語る。さらに学識ある博士や法師、后の行啓、摂関の外出、紫色のもの、雪の降り敷く庭、幼い一の宮の姿などを挙げる。

- 1めでたきめでたきめでたきものものもの題
- 2唐唐から錦錦にしき、、、かざりかざりかざりだちだちだち、、、作作つくりりり佛佛ぼとけのののもくもくもく。。。いろいろいろあひあひあいよくよくよく花花はな房房ぶさ長長ながくくくさきさきさきたるたるたる藤藤ふじののの松松まつにににかゝりかゝりかかりたるたるたる。。。六六ろく位位いののの藏藏くら人人うどこそこそこそなほなほなおめでたけれめでたけれめでたけれ。。。いみじきいみじきいみじき君君きん達達だちなれなれなれどもどもどもえええしもしもしも着着き給給たまははわぬぬぬ綾綾あや織織おり物物ものををを心心こころにににまかせまかせまかせててて着着きたるたるたる、、、あをあをあお色色いろすがたすがたすがたなどなどなどいといといとめでたきめでたきめでたきなりなりなり。。。ところところところのののしうしうしゅう、、、ざうしきざうしきぞうしき、、、たゞたゞただののの人人ひとののの子子こどもどもどもなどなどなどにてにてにて、、、とのとのとのばらばらばらののの四位四位しい五位五位ごい六六ろく位位いもももつかさつかさつかさあるあるあるががが下下しもにににうちうちうち居居いててて何何なにととと見見みえええざりざりざりしししももも、、、藏藏くら人人うどににになりなりなりぬれぬれぬればばばえええもももいはいはいわずずずぞぞぞあさましくあさましくあさましくめでたきめでたきめでたきややや。。。せんじせんじせんじもてもてもてまゐりまゐりまいり、、、大大だい饗饗きょうののの甘甘あま栗栗ぐりののの使使つかいなどなどなどににに參參まいりりりたるたるたるをををもてなしもてなしもてなしきやうようきやうようきょうようししし給給たまふふうさまさまさまいづこいづこいずこなりなりなりししし。。。あまあまあまくだりくだりくだりびとびとびとならならならむむんとととこそこそこそおぼゆれおぼゆれおぼゆれ。。。御御おおんむすめむすめむすめののの、、、女女にょ御御うご、、、后后きさきにににおはしますおはしますおわします。。。まだまだまだ姫姫ひめ君君ぎみなどなどなど聞聞きこゆるゆるゆるももも御御おおん使使つかいにてにてにて參參まいりりりたるたるたるににに御御おおん文文ふみとりとりとり入入いるゝるゝるるよりよりよりうちうちうちはじめはじめはじめ、、、しとねしとねしとねさしさしさし出出いづるづるずる袖袖そでぐちぐちぐちなどなどなど明明あけ暮暮くれ見見みしししものものものともともともおぼえおぼえおぼえずずず、、、下下したがさねがさねがさねのののしりしりしりひきひきひきちらしちらしちらしてててゑふゑふえふなるなるなるははは今今いますこしすこしすこしをかしうをかしうおかしゅう見見みゆゆゆ。。。みづからみづからみずから盃盃さかずきさしさしさしなどなどなどししし給給たまふふうををを我我わががが心心こころにににももも覺覺おぼゆゆゆらむらむらん。。。いみじういみじういみじゅうかしこまりかしこまりかしこまり、、、べちべちべちににに居居いししし家家いえののの君君きん達達だちをををもももけしきけしきけしきばかりばかりばかりこそこそこそかしこまりかしこまりかしこまりたれたれたれ。。。同同おなじじじやうやうようにににうちうちうちつれつれつれありくありくありく。。。うへうへうえののの近近ちかくくくつかはつかはつかわせせせ給給たまふふうさまさまさまなどなどなど見見みるるるはははねたくねたくねたくさへさへさへこそこそこそ覺覺おぼゆれゆれゆれ。。。御御おおん文文ふみかゝかゝかかせせせ給給たまへへえばばば御御おおん硯硯すずりののの墨墨すみすりすりすり御御おおんうちはうちはうちわなどなどなどまゐりまゐりまいり給給たまへへえばばば、、、われわれわれつかうまつるつかうまつるつこうまつるににに三三みとせとせとせ四四よとせとせとせばかりばかりばかりののの程程ほどををを、、、なりなりなりあしくあしくあしく、、、物物ものののの色色いろよろしうよろしうよろしゅうてててまじろはまじろはまじろわむむんはははいふいふいうかひかひかいなきなきなきものものものなりなりなり。。。かうぶりかうぶりこうぶり得得えててておりおりおりむむんことことこと近近ちかくくくならならならむむんだにだにだに、、、いのちいのちいのちよりよりよりはははまさりまさりまさりてててをしかるをしかるおしかるべきべきべき事事ことをををそのそのその御御おおんたまはりたまはりたまわりなどなどなど申申もうしししててて、、、まとひまとひまといけるけるけるこそこそこそ口口くちをしけれをしけれおしけれ。。。昔昔むかしののの藏藏くら人人うどはははことことことしししののの春春はるよりよりよりこそこそこそなきなきなきたちたちたちけれけれけれ。。。今今いまののの世世よにににははははしりはしりはしりくらべくらべくらべをををなむなむなんするするする。。。
- 3はかせはかせはかせのののざえざえざえあるあるあるはははいといといとめでたしめでたしめでたしととといふいふいうもももおろかおろかおろかなりなりなり。。。顏顏かおもももいといといとにくげにくげにくげににに、、、下下げ臈臈ろうなれなれなれどもどもども世世よにににやんごとなきやんごとなきやんごとなきものものものににに思思おもははわれれれ、、、かしこきかしこきかしこき御御お前前まえににに近近ちかづきづきずきまゐりまゐりまいり、、、さるさるさるべきべきべきことことことなどなどなど問問とはははせせせ給給たまふふう御御おおん文文ふみののの師師しにてにてにて侍侍さぶらふふうははは、、、めでたくめでたくめでたくこそこそこそ覺覺おぼゆれゆれゆれ。。。願願がん文文もんももも、、、さるさるさるべきべきべきものものものゝゝの序序じょ作作つくりりり出出いだしししてててほめほめほめらるゝらるゝらるるいといといとめでたしめでたしめでたし。。。法法ほう師師しのののざえざえざえあるあるあるすべてすべてすべて言言いふふうべきべきべきにににあらあらあらずずず。。。持持じ經經きょう者者じゃののの一一ひと人人りしししてててよむよむよむよりよりよりもももあまたあまたあまたががが中中なかにてにてにてときときときなどなどなどさだまりさだまりさだまりたるたるたる御御みどきやうどきやうどきょうなどなどなどににに、、、猶猶なおいといといとめでたきめでたきめでたきなりなりなり。。。くらうくらうくろうなりなりなりててて「「「いづらいづらいずら御御みどきやうどきやうどきょうあぶらあぶらあぶらおそしおそしおそし」」」などなどなどいひいひいいててて、、、よみよみよみやみやみやみたるたるたるほどほどほど忍忍しのびびびやかやかやかにににつゞけつゞけつづけ居居いたるたるたるよよよ。。。
- 4后后きさきののの晝晝ひるののの行行ぎょう啓啓けい、、、御御おおんうぶやうぶやうぶや、、、みやみやみやはじめはじめはじめののの作作さ法法ほうしくしくしく、、、こまこまこまいぬいぬいぬ大大だいしやうじしやうじしょうじなどなどなどもてもてもてまゐりまゐりまいりててて御御みちやうちやうちょうのののまへまへまえにににしつらひしつらひしつらいすゑすゑすえ、、、内内ない膳膳ぜん御御みへつひへつひへついわたしわたしわたしたてまつりたてまつりたてまつりなどなどなどしししたるたるたる。。。姫姫ひめ君君ぎみなどなどなど聞聞きこえええしししたゞたゞただ人人びととととこそこそこそつゆつゆつゆ見見みえええさせさせさせ給給たまははわねねね。。。一一いちののの人人ひとののの御御おおんありきありきありき、、、春春かす日日がまうでまうでもうで。。。えびえびえびぞめぞめぞめののの織織おり物物もの、、、すべてすべてすべて紫紫むらさきなるなるなるはははなになになにもももなになになにもももめでたくめでたくめでたくこそこそこそあれあれあれ、、、花花はなももも糸糸いとももも紙紙かみももも。。。紫紫むらさきののの花花はなののの中中なかにににはははかきつばたかきつばたかきつばたぞぞぞすこしすこしすこしにくきにくきにくき。。。いろいろいろはははめでたしめでたしめでたし。。。六六ろく位位いのののとのゐとのゐとのいすがたすがたすがたのののをかしきをかしきおかしきにににもももむらさきむらさきむらさきのののゆゑゆゑゆえなななめりめりめり。。。ひろきひろきひろき庭庭にわににに雪雪ゆきのののふりふりふりしきしきしきたるたるたる。。。今今きん上上じょうののの一一いちののの宮宮みや、、、まだまだまだわらはわらはわらわにてにてにておはしますおはしますおわしますががが御御おおんをぢをぢおじににに上上かん達達だち部部めなどなどなどのののわかやかわかやかわかやかににに淸淸きよげげげなるなるなるにににいだかいだかいだかれれれさせさせさせ給給たまひひいててて、、、殿上人殿上人てんじょうびとなどなどなど召召めしししつかひつかひつかい御御おおん馬馬うま引引ひかかかせせせててて御御ご覽覽らんじじじ遊遊あそばばばせせせ給給たまへへえるるる思思おもふふう事事ことおはせおはせおわせじじじとととおぼゆるおぼゆるおぼゆる。。。
現代語訳
すばらしいもの。
唐錦。飾り太刀。木で作った仏像の木目。色合いがよく、花房が長く咲いている藤が、松に掛かっているの。六位の蔵人こそ、やはりすばらしい。身分の高い公達でさえ、なかなかお召しになれない綾織物を、思いのままに着ている青色の袍の姿などは、たいそうすばらしいのである。蔵人所の雑色や、ただの人の子どもなどで、殿方の四位・五位・六位の官職のある人の下に控えていて、何ということもなく見えていた者も、蔵人になってしまうと、何とも言えずあきれるほどすばらしいものだ。宣旨を持って参上し、大饗の甘栗の使いなどとして参上したのを、もてなして饗応なさる様子は、どこの人だろうかと思うほどだ。天から下ってきた人だろうかと思われる。その家の姫君が女御や后でいらっしゃる。まだ姫君と申し上げる方のもとへも、帝のお使いとして参上すると、お手紙を取り入れるところから始まって、敷物を差し出す女房の袖口なども、明け暮れ見慣れた者とも思われず、下襲の裾を長く引き散らして、衛府の官を兼ねているのは、もう少し趣深く見える。主人が自ら盃を差したりなさるのを、本人の心にもどう思われるだろう。たいそうかしこまって、以前は別の所に控えていた家の公達に対しても、形ばかりかしこまってはいるけれど、同じように連れ立って歩く。帝が近くでお使いになる様子などを見ると、ねたましくさえ思われる。帝がお手紙をお書きになると、御硯の墨をすり、御団扇などであおぎ申し上げなさるので、自分がお仕えしているのと同じように、三年四年ほどの間を、身なりが悪く、衣の色もいいかげんで交じっているのは、言うかいもないものだ。五位に叙せられて蔵人を辞める時が近くなるのでさえ、命よりも惜しいはずのことを、その御褒美などを申し上げて、あわてふためくのは残念なことだ。昔の蔵人は、その年の春から辞めることを悲しんで泣き出したものだ。今の世では、早く五位になろうと走り競べをしている。
博士で学識のある人は、たいそうすばらしいと言うのも言い尽くせない。顔もたいそう醜く、身分も低いけれど、世間で尊いものと思われ、恐れ多い帝の御前に近づいて参上し、しかるべきことなどをお尋ねになる御学問の師としてお仕えしているのは、すばらしく思われる。願文も、しかるべき文章の序を作り出してほめられるのは、たいそうすばらしい。法師で学識のある人は、すべて言うまでもない。持経者が一人で経を読むよりも、大勢の中で、時刻などの決まった御読経などのときに、やはりたいそうすばらしいのである。暗くなって、「どうした、御読経の灯火が遅い」などと言って、読経をやめている間、忍びやかに暗誦を続けて座っているのよ。
后の昼の行啓。御出産。立后の儀式の作法で、獅子・狛犬や大床子などを持って参上して、御帳台の前に設け据え、内膳司が御竈を移し申し上げたりしている様子。姫君などと申し上げていた時の普通の人とは、少しもお見えにならない。摂関家の方のお出かけ。春日詣で。葡萄染の織物。すべて紫色のものは、何もかもすばらしい。花も糸も紙も。紫の花の中では、杜若だけが少し憎らしい。色はすばらしい。六位の宿直姿が趣深いのも、紫の色のせいなのだろう。広い庭に雪が降り敷いているの。今上帝の第一皇子が、まだ童でいらっしゃるのが、叔父にあたる上達部などの若々しく美しい方に抱かれなさって、殿上人などを召し使い、御馬を引かせてご覧になり遊んでいらっしゃるのは、何の物思いもないだろうと思われる。
意訳
すばらしいものとして、作者がとりわけ熱を込めて語るのは六位の蔵人である。ふだんは目立たない身分の者も、蔵人になれば帝の側近として、身分の高い公達でさえ着られない青色の袍をまとい、勅使として貴人の家で手厚くもてなされる。後半では、学識ある博士や法師、后の行啓、摂関の外出、紫色のもの全般、雪の庭、そして幼い一の宮の無邪気な姿と、華やかなものが次々に挙げられる。宮廷社会の価値観と、作者の憧れのありかがよく分かる段である。
語釈・文法注
文法
- 「作り佛のもく」
- 木で作った仏像の木目。
- 「あを色」
- 麴塵(きくじん)の袍。天皇の常服の色で、六位の蔵人は特に許されて着用した。
- 「甘栗の使」
- 大臣家の大饗の際、天皇から甘栗を賜る使い。蔵人が務めた。
- 「はしりくらべ」
- 早く五位に叙せられようと競い合うこと。
- 「今上の一の宮」
- 一条天皇の第一皇子、敦康親王。母は中宮定子。
解説
すばらしいものを挙げた長い類聚的章段である。六位の蔵人についての詳しい記述は、当時の宮廷社会で蔵人の地位がどれほど重んじられたかを伝えている。
最後に挙げられる「今上の一の宮」は、定子の生んだ敦康親王である。叔父の上達部に抱かれて遊ぶ幼い親王の姿を「思ふ事おはせじ」と描くところには、その後の親王の不遇な運命を知る読者には、いっそう深い感慨がある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、238–240頁(コマ122–123)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日