枕草子 第84段 日記的章段
さてその左衛門の陣に
左衛門の陣へ行った朝のことを、中宮定子が里にいる作者への手紙で懐かしむ。作者が謙遜して返事をすると、定子は「今夜のうちにすべてを捨てて参上せよ。さもなくばたいそう憎く思う」と仰せになり、作者は命も捨てる思いで参上する。

- 1さてさてさてそのそのその左左さ衞衞え門門もんののの陣陣じんにににいきいきいきてててのちのちのち、、、里里さとににに出出いでゝでゝでてしばししばししばしあるあるあるににに「「「とくとくとく參參まいれれれ」」」などなどなど仰仰おおせせせ事事ごとのののはしはしはしににに、、、左左さ衞衞え門門もんののの陣陣じんへへへいきいきいきししし朝朝あさぼらけぼらけぼらけなむなむなん常常つねにににおぼしおぼしおぼし出出いでででらるゝらるゝらるる。。。「「「いかでいかでいかでさささつれなくつれなくつれなくうちうちうちふりふりふりてててありありありしししならならならむむん。。。いみじくいみじくいみじくめでたからめでたからめでたからむむんとととこそこそこそ思思おもひひいたりたりたりしかしかしか」」」などなどなど仰仰おおせせせられられられたるたるたる御御おおんかへりかへりかえりごとごとごとににに、、、かしこまりかしこまりかしこまりのののよしよしよし申申もうしししててて「「「わたくしわたくしわたくしにににはははいかでいかでいかでかかかめでたしめでたしめでたしととと思思おもひひい侍侍はべらららざらざらざらむむん。。。御御お前前まえにににもももさりともさりともさりとも中中なかなるなるなる少少おはははおぼしおぼしおぼしめしめしめし御御ご覽覽らんじじじけむけむけんとととなむなむなん思思おもひひい給給たまへへえししし」」」ととと聞聞きこえええさせさせさせたれたれたればばば、、、たちたちたち歸歸かえりりり「「「いみじくいみじくいみじく思思おもふふうべかべかべかめるめるめるなりなりなり。。。たがたがたがおもておもておもてぶせぶせぶせなるなるなる事事ことをををばばばいかでいかでいかでかけはしかけはしかけはしたるたるたるぞぞぞ。。。唯唯ただ今今こ宵宵よいのののうちうちうちににによろづよろづよろずののの事事ことをををすてゝすてゝすてて參參まいららられれれよよよ。。。さらさらさらずずずばばばいみじくいみじくいみじくにくまにくまにくませせせ給給たまははわむむんとととなむなむなん仰仰おおせせせ事事ごとあるあるある」」」とととあれあれあればばば、、、よろしからよろしからよろしからむむんにてにてにてだにだにだにゆゝしゆゝしゆゆし、、、ましてましてましていみじくいみじくいみじくとととあるあるあるもじもじもじにににははは命命いのちもももさながらさながらさながら捨捨すてゝてゝててなむなむなんとてとてとて參參まいりりりにににききき。。。
現代語訳
さて、その左衛門の陣に行った後、里に下がってしばらくいると、「早く参上せよ」などという仰せ言の端に、「左衛門の陣へ行った朝ぼらけのことが、いつも思い出されます。どうしてあのように平気な顔で古びて見せていたのでしょう。たいそうすばらしいと思っていたのでしょうに」などとおっしゃったお返事に、恐縮の旨を申し上げて、「私としては、どうしてすばらしいと思わないことがございましょう。中宮様におかれましても、そうはいっても『中なる乙女』とはお思いになって、ご覧になったことでしょうと存じました」と申し上げたところ、すぐに返事が来て、「たいそう大事に思っているようですね。誰の面目をつぶすようなことを、どうして言いかけたのですか。今夜のうちに、何もかも捨てて参上しなさい。そうでなければ、たいそう憎く思うと、中宮様の仰せです」とあるので、普通の程度の「憎く」でさえ恐ろしいのに、まして「たいそう」とある文字には、命もそのまま捨てるつもりでと思って参上した。
意訳
里に下がっていた作者のもとに、定子から早く戻るようにとの手紙が届く。定子は左衛門の陣での思い出を懐かしみ、作者は謙遜しつつ天女の舞に重ねた古歌で応じる。すると定子は、今夜中に何もかも捨てて参上せよ、さもなくばたいそう憎く思うと言い送る。「いみじくにくませ給はむ」という強い言葉に、作者は命がけで参上する。定子が作者をどれほど必要としていたか、二人の深い信頼関係が伝わる段である。
語釈・文法注
- 中なる少女
- 「天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ乙女の姿しばしとどめむ」(百人一首、僧正遍昭)などの五節の舞姫の歌を踏まえ、舞姫たちの中の一人、の意か。
文法
- 「つれなくうちふりて」
- 平気な顔で、古びた(年寄りじみた)様子をして。
- 「おもてぶせ」
- 面伏せ。面目をつぶすこと、恥。
- 「いかでかけはしたる」
- どうして言いかけたのか。
- 「命もさながら捨てゝなむ」
- 命もそのまま捨ててしまおう。定子の言葉の重さに対する作者の決意。
解説
第74段の職の御曹司の段で語られた「左衛門の陣」への散策を受けて、その後のやりとりを記した日記的章段である。定子の手紙の言葉が直接引かれており、定子の人柄と、作者への信頼の深さがうかがえる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、230–231頁(コマ118)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日