枕草子 第79段 日記的章段
御仏名のあした
御仏名の翌朝、地獄絵の屏風を中宮に見せられた作者は、恐ろしさに隠れてしまう。ところが雨の日の管絃の遊びで、伊周が白居易の詩句を朗詠すると、作者は罪も忘れて起き出してしまう。

- 1御御お佛佛ぶつのののあしたあしたあした地地じ獄獄ごく繪繪えののの御御おおん屏屏びょう風風ぶ取取とりりりわたしわたしわたしててて、、、宮宮みやににに御御ご覽覽らんぜぜぜさせさせさせ奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。いみじういみじういみじゅうゆゝしきゆゝしきゆゆしき事事こと限限かぎりりりなしなしなし。。。「「「これこれこれ見見みよよよかしかしかし」」」ととと仰仰おおせせせらるれらるれらるれどどど「「「更更さらににに見見み侍侍はべらららじじじ」」」とてとてとてゆゝしさゆゝしさゆゆしさにににうへうへうえやややににに隱隱かくれれれふしふしふしぬぬぬ。。。雨雨あめいたくいたくいたく降降ふりりりてててつれづれつれづれつれづれなりなりなりとてとてとて殿上人殿上人てんじょうびとうへうへうえのののみつぼねみつぼねみつぼねににに召召めしししててて御御おおんあそびあそびあそびありありあり。。。みちかたみちかたみちかたののの少少しょう納納な言言ごん琵琵び琶琶わいといといとめでたしめでたしめでたし。。。なりまさなりまさなりまさののの君君きみさうさうそうのののことことこと、、、ゆきなりゆきなりゆきなり笛笛ふえ、、、經經つね房房ふさののの中將中將ちゅうじょうさうさうそうののの笛笛ふえなどなどなどいといといとおもしろうおもしろうおもしろうひとひとひとわたりわたりわたり遊遊あそびびびててて、、、琵琵び琶琶わひきひきひきやみやみやみたるたるたるほどほどほどににに、、、大大だい納納な言言ごん殿殿どのののの「「「琵琵び琶琶わののの聲聲こえはははやめやめやめててて物物もの語語がたりするするすることことことおそしおそしおそし」」」ととといふいふいう事事ことをををずんじずんじずんじ給給たまひひいしししににに、、、隱隱かくれれれふしふしふしたりたりたりしししももも起起おききき出出いでゝでゝでて、、、「「「罪罪つみはははおそろしけれおそろしけれおそろしけれどどど猶猶なお物物もののののめでたきめでたきめでたきはははえええやむやむやむまじまじまじ」」」とてとてとて笑笑わらははわるるる。。。御御おおん聲聲こえなどなどなどのののすぐれすぐれすぐれたるたるたるにににはははあらあらあらねねねどどど、、、折折おりのののことさらことさらことさらににに作作つくりりりいでいでいでたるたるたるやうやうようなりなりなりしししなりなりなり。。。
現代語訳
御仏名の翌朝、地獄絵の御屏風を、清涼殿から運んできて、中宮様にお見せ申し上げなさる。たいそう恐ろしいことこの上ない。中宮様は「これを見なさい」とおっしゃるけれど、「決して拝見いたしません」と言って、恐ろしさに上の間に隠れて臥せってしまった。雨がひどく降って退屈だというので、殿上人を弘徽殿の上の御局にお召しになって、管絃の御遊びがある。道方の少納言の琵琶がたいそうすばらしい。済政の君の箏の琴、行成の笛、経房の中将の笙の笛など、たいそうおもしろく一通り演奏して、琵琶を弾きやめたころに、大納言殿が「琵琶の声やんで物語せんとすること遅し」という句を朗詠なさったので、隠れて臥せっていた私も起き出して、「罪は恐ろしいけれど、やはりすばらしいものは見逃せません」と言って笑われる。お声などが格別すぐれているというわけではないけれど、その場にぴったりの、ことさらに作り出したような趣だったのである。
意訳
仏名会の翌朝、地獄絵の屏風を見るよう定子に勧められた作者は、恐ろしさに奥へ隠れてしまう。ところがその日、雨の退屈しのぎの管絃の遊びで、伊周が白居易「琵琶行」の一句を朗詠すると、作者はたまらず起き出してくる。地獄の罪の恐ろしさよりも、目の前のすばらしい情景を見逃したくない、という作者の正直さとユーモアが光る段である。
語釈・文法注
- 御佛名
- 仏名会。十二月十九日から三日間、宮中で三世の諸仏の名を唱えて罪を懺悔する法会。地獄絵の屏風が立てられた。
文法
- 「琵琶の聲はやめて物語することおそし」
- 白居易「琵琶行」の「琵琶声停欲語遅」による。琵琶の音がやんで、語り出そうとしてためらう、という場面を、演奏の止んだ場にふさわしく朗詠した。
- 「え やむまじ」
- やめることはできそうにない。
- 「さうのこと」
- 箏の琴。
解説
地獄絵を怖がって隠れた作者が、伊周の朗詠に誘われて出てくるという、ほほえましい日記的章段である。作者自身の滑稽な姿を描きながら、その場にふさわしい漢詩を朗詠した伊周の機知をたたえている。
道方、済政、行成、経房と、当時の名だたる貴公子たちが合奏する様子は、中宮定子の後宮の華やかな文化をよく伝えている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、222頁(コマ114)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日