枕草子 第73段 随想的章段
内の局は
内裏の局は、細殿にあるのがたいそうおもしろい。夜、沓音が止まって指一本で戸をたたく音にその人と知るときめき、御簾の外に立つ公達の姿、臨時の祭の調楽の帰りを待つ夜の楽しさなどを描く。

- 1うちうちうちののの局局つぼねはははほそほそほそどのどのどのいみじういみじういみじゅうをかしをかしおかし。。。かみかみかみののの小小こしとみしとみしとみあけあけあけたれたれたればばば風風かぜいみじういみじういみじゅう吹吹ふききき入入いりりりててて夏夏なつもももいといといとすゞしすゞしすずし。。。冬冬ふゆははは雪雪ゆき霰霰あられなどなどなどののの風風かぜにににたぐひたぐひたぐいててて入入いりりりたるたるたるもももいといといとをかしをかしおかし。。。せばくせばくせばくてててわらはべわらはべわらわべなどなどなどののののぼりのぼりのぼり居居いたるたるたるもももあしけれあしけれあしければばば、、、屏屏びょう風風ぶのののうしろうしろうしろなどなどなどにににかくしかくしかくしすゑすゑすえたれたれたればばば、、、ことことこと所所どころのののやうやうようににに聲聲こえたかくたかくたかく笑笑わらひひいなどなどなどもももせせせでででいといといとよしよしよし。。。晝晝ひるなどなどなどもももたゆまたゆまたゆまずずず心心こころづかひづかひずかいせせせらるらるらる。。。よるよるよるはははたたたましてましてましていさゝかいさゝかいささかうちうちうちとくとくとくべくべくべくもももなきなきなきががが、、、いといといとをかしきをかしきおかしきなりなりなり。。。くつくつくつののの音音おとののの夜夜よひとひとひと夜夜よ聞聞きこゆるゆるゆるがががとまりとまりとまりててて唯唯ただおよびおよびおよび一一ひとつつつしししてててたゝくたゝくたたくががが、、、そのそのその人人ひとななななりなりなりとととふとふとふと知知しるるるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。いといといと久久ひさしくしくしくたゝくたゝくたたくににに音音おともももせせせねねねばばばねねねいりいりいりにににけるけるけるとととややや思思おもふふうらむらむらん。。。ねたくねたくねたく少少すこしししうちうちうち身身みじろくじろくじろくおとおとおと、、、きぬきぬきぬのののけはひけはひけわいもももさささななななりなりなりととと思思おもふふうらむらむらんかしかしかし。。。扇扇おうぎなどなどなどつかふつかふつかうもももしるししるししるし。。。冬冬ふゆははは火火ひ桶桶おけにににやをらやをらやおら立立たつるつるつる火火ひ箸箸ばしののの音音おとももも忍忍しのびびびたれたれたれどどど聞聞きこゆるゆるゆるををを、、、いとゞいとゞいとどたゝきたゝきたたきまさりまさりまさり聲聲こえにてにてにてもももいふいふいうににに、、、かげかげかげながらながらながらすべりすべりすべりよりよりよりててて聞聞きくくくをりをりおりもももありありあり。。。
- 2又又またあまたあまたあまたののの聲聲こえにてにてにて詩詩しをををずじずじずじ歌歌うたなどなどなどうたふうたふうたうにににはははたゝかたゝかたたかねねねどどどまづまづまずあけあけあけたれたれたればばば、、、こゝこゝここへへへとととしもしもしも思思おもははわぬぬぬ人人ひとももも立立たちちちとまりとまりとまりぬぬぬ。。。入入いるるるべきべきべきやうやうようもももなくなくなくててて立立たちちちあかすあかすあかすもももをかしをかしおかし。。。みすみすみすのののいといといと靑靑あおくくくをかしげをかしげおかしげなるなるなるににに、、、凡凡き帳帳ちょうのののかたびらかたびらかたびらいといといとあざやかあざやかあざやかににに、、、裾裾すそのののつまつまつま少少すこしししうちうちうちかさなりかさなりかさなりててて見見みえええたるたるたるににに、、、直衣直衣のうしのののうしろうしろうしろにににほころびほころびほころび絕絕たえええずずず着着きたるたるたる君君きんだちだちだち、、、六六ろく位位いののの藏藏くら人人うどののの靑靑あお色色いろなどなどなど着着きててて、、、うけばりうけばりうけばりてててやりやりやり戶戶どのののもともともとなどなどなどにににそばそばそばよせよせよせてててえええたてたてたてらららずずず。。。へいへいへいののの前前まえなどなどなどにににうしろうしろうしろ押押おしししててて袖袖そでうちうちうち合合あわせせせててて立立たちちちたるたるたるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。またまたまた指指さし貫貫ぬきいといといと濃濃こううう直衣直衣のうしのののあざやかあざやかあざやかにてにてにていろいろいろいろいろいろのののきぬきぬきぬどもどもどもこぼしこぼしこぼし出出いでででたるたるたる人人ひとののの、、、すすすををを押押おししし入入いれれれててて、、、なからなからなから入入いりりりたるたるたるやうやうようなるなるなるももも、、、とととよりよりより見見みるるるはははいといといとをかしからをかしからおかしからむむんををを、、、いといといと淸淸きよげげげなるなるなる硯硯すずりひきひきひき寄寄よせせせててて文文ふみ書書かききき、、、もしもしもしははは鏡鏡かがみこひこひこいてててびんびんびんなどなどなどかきかきかき直直なおしししたるたるたるもももすべてすべてすべてをかしをかしおかし。。。三三さん尺尺じゃくののの几几き帳帳ちょうをををたてたてたてたるたるたるににに、、、もかうもかうもこうのののしもしもしもははは唯唯ただ少少すこしししぞぞぞあるあるある。。。とととににに立立たてるてるてる人人ひと、、、內內うちににに居居いたるたるたる人人ひとととと物物ものいふいふいう顏顏かおのののもともともとにににいといといとにくゝにくゝにくくあたりあたりあたりたるたるたるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。たけたけたけのののいといといと高高たかくくく、、、短短みじかからからからむむん人人ひとなどなどなどやややいかゞいかゞいかがあらあらあらむむん。。。猶猶なおよよよのののつねつねつねのののはははさささのみのみのみぞぞぞあらあらあらむむん。。。
- 3ましてましてましてりんじりんじりんじののの祭祭まつりのののなどなどなどはははいみじういみじういみじゅうをかしをかしおかし。。。とのもりとのもりとのもりののの官官かん人人にんなどなどなどののの長長ながききき松松まつををを高高たかくくくともしともしともしてててくびくびくびはははひきひきひき入入いれれれててて行行ゆけけけばばば、、、さきさきさきはははさしさしさしつけつけつけつつつばかりばかりばかりなるなるなるににに、、、をかしうをかしうおかしゅうあそびあそびあそび笛笛ふえふきふきふき出出いでゝでゝでて心心こころことことことににに思思おもひひいたるたるたるににに、、、君君きん達達だちののの日日ひのののさうぞくさうぞくそうぞくしししててて立立たちちちとまりとまりとまり物物ものいひいひいいなどなどなどするするするににに、、、殿上人殿上人てんじょうびとののの隨隨ずい身身じんどもどもどもさきさきさきををを忍忍しのびびびやかやかやかににに短短みじかくくく、、、おのおのおのががが君君きん達達だちのののれうれうりょうにににおひおひおいたるたるたるももも、、、あそびあそびあそびにににまじりまじりまじりてててつねつねつねににに似似にずずずをかしうをかしうおかしゅう聞聞きこゆゆゆ。。。夜夜よふけふけふけぬれぬれぬればばば猶猶なおあけあけあけててて歸歸かえるるるををを待待まつつつににに、、、君君きん達達だちののの聲聲こえにてにてにて「「「あらたあらたあらたににに生生おふるふるうるとみとみとみ草草くさののの花花はな」」」ととと歌歌うたひひいたるたるたるももも、、、このこのこのたびたびたびははは今今いますこしすこしすこしをかしきをかしきおかしきににに、、、いかなるいかなるいかなるまめまめまめ人人びとにににかかかあらあらあらむむん。。。すくずくしうすくずくしうすくずくしゅうさしさしさし步步あゆみみみててて出出いでででぬるぬるぬるもももあれあれあればばば笑笑わらふふうををを「「「暫暫しばしししややや」」」などなどなど、、、さささ夜夜よをををすてゝすてゝすてて急急いそぎぎぎ給給たまふふう。。。「「「とととありありありててて」」」などなどなどいへいへいえどどど、、、心心ここちちちなどなどなどやややあしからあしからあしからむむん、、、たふれたふれたうれぬぬぬばかりばかりばかり、、、もしもしもし人人ひとやややおひおひおいてててとらふるとらふるとらうるととと見見みゆるゆるゆるまでまでまでまどひまどひまどい出出いづるづるずるもももあああめりめりめり。。。
現代語訳
内裏の女房の局は、細殿にあるのがたいそう趣がある。上の小蔀を開けると、風がたいそう吹き込んで、夏もたいそう涼しい。冬は、雪や霰などが風と一緒に入ってくるのも、たいそう趣がある。狭くて、童などが上がって座っているのもよくないので、屏風の後ろなどに隠して座らせておくと、ほかの所のように大声で笑ったりもしないで、たいそうよい。昼なども、油断なく気をつかわずにはいられない。夜はまして少しも気を許すことができないのが、たいそうおもしろいのである。沓の音が一晩じゅう聞こえるのが止まって、ただ指一本で戸をたたくのを、あの人だなとすぐに分かるのは、おもしろい。たいそう長くたたいているのに、こちらが音も立てないので、寝入ってしまったと思うのだろう。しゃくにさわって、少し身動きする音や、衣ずれの気配も、起きているなと思うだろう。扇などを使う音もはっきり聞こえる。冬は、火桶にそっと立てる火箸の音も、忍ばせているけれど聞こえるので、いっそう強くたたき、声に出しても言うので、物陰のまま、そっとにじり寄って聞く折もある。
また、大勢の声で詩を朗詠したり、歌などを歌ったりするときには、たたかなくても先に戸を開けるので、ここへ来ようとは思っていなかった人も立ち止まってしまう。入れそうもなくて、立ったまま夜を明かすのも、おもしろい。御簾がたいそう青く趣のある中に、几帳の帷子がたいそう鮮やかで、裾の端が少し重なって見えているところに、直衣の後ろの縫い目がほころびたのを平気で着ている公達や、六位の蔵人が青色の袍などを着て、我が物顔に遣戸のそばに寄り添って立つことはできず、塀の前などに背中を押しつけて、袖を合わせて立っているのは、おもしろい。また、指貫の色がたいそう濃く、直衣も鮮やかで、色とりどりの衣を下からこぼし出している人が、御簾を押し入れて、半分ほど中に入っているように見えるのも、外から見ればたいそう趣があるだろうが、たいそうきれいな硯を引き寄せて手紙を書いたり、あるいは鏡を借りて鬢の毛をなでつけたりしているのも、すべて趣がある。三尺の几帳を立ててあると、帽額の下はほんの少ししか隙間がない。外に立っている人と、中に座っている人とが話をする顔のところに、ちょうど几帳がひどく邪魔にあたっているのは、おもしろい。背のたいそう高い人や、低い人などは、どうなのだろう。やはり普通の人は、そんなものだろう。
まして、臨時の祭の調楽などのときは、たいそうおもしろい。主殿寮の役人などが、長い松明を高くともして、首は寒さに襟にうずめて行くので、松明の先が物に突き当たりそうなのに、楽人たちが趣深く演奏し、笛を吹き出して、格別に思っているところに、公達が昼の装束のままで立ち止まって話などをしていると、殿上人の随身たちが、先払いを忍びやかに短く、自分の主人の公達のためにしているのも、演奏に混じって、いつもと違って趣深く聞こえる。夜がふけてしまったので、やはり戸を開けたまま、帰るのを待っていると、公達の声で「あらたに生ふるとみ草の花」と歌っているのも、今度はもう少し趣があるのに、どういうまじめな人なのだろうか、そっけなく歩いて出ていってしまう人もいるので笑うと、ほかの人が「しばし待て」などと言うけれど、「さ夜を捨てて急いでお帰りになる」。「わけがあって」などと言うけれど、気分でも悪いのだろうか、倒れんばかりに、もしや人が追いかけて捕まえるのかと見えるほど、あわてて出ていく人もいるようだ。
意訳
内裏の細殿にある女房の局は、通路に面していて人の出入りが多く、昼も夜も気が抜けない。だからこそおもしろい、と作者は言う。夜、沓音が止まり指一本で戸をたたく音にあの人だと気づくときめき、局の前に立つ公達の装い、臨時の祭の調楽の夜の松明と笛の音。宮仕えの女房の暮らしの華やぎと緊張感とが、細やかに描かれている。
語釈・文法注
- てうがく
- 調楽。祭や節会の前に、舞楽の練習をすること。臨時の祭の調楽は、清涼殿の前庭などで夜に行われた。
文法
- 「および一つしてたゝく」
- 指一本で戸をたたく。忍んで来た男の合図。
- 「詩をずじ」
- 漢詩を朗詠する。「ずず」は誦す。
- 「うけばりて」
- 我が物顔にふるまって。
- 「あらたに生ふるとみ草の花」
- 催馬楽「この殿は」などの一節か。
- 「すくずくしう」
- そっけなく、まじめくさって。
解説
内裏の女房の局での暮らしを描いた段である。細殿の局は人通りの多い場所にあり、作者は、気が抜けない緊張感と、人と出会う機会の多さとを、ともに「をかし」と受けとめている。
夜、沓音が止まって指一本で戸をたたく音にその人と気づく場面は、平安時代の恋の情景としてよく知られる。音だけで相手を知り、相手もこちらの気配をうかがうという、繊細な心の駆け引きが描かれている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、219–220頁(コマ112–113)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日