枕草子 第71段 随想的章段
忍びたる所にては
人目を忍ぶ逢瀬は、夏は短い夜が明けて鳥の声が聞こえるのが、冬は寒い夜に恋人と寄り添って聞く鐘の音が趣深い。一方、女房たちの部屋に長居する客の供人が、帰りを催促して嘆くのは興ざめだ、と述べる。

- 1忍忍しのびびびたるたるたる所所ところにてにてにてははは夏夏なつこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。いみじういみじういみじゅう短短みじかききき夜夜よのののいといといとはかなくはかなくはかなく明明あけけけぬるぬるぬるにににつゆつゆつゆねねねずずずなりなりなりぬぬぬ。。。やがてやがてやがてよろづよろづよろずののの所所ところあけあけあけながらながらながらなれなれなればばば凉凉すずしうしうしゅう見見みわたさわたさわたされれれたりたりたり。。。猶猶なお今今いま少少すこしししいふいふいうべきべきべき事事ことのののあれあれあればばば、、、かたみかたみかたみにににいらへいらへいらえどもどもどもするするする程程ほどににに、、、唯唯ただ居居いたるたるたるまへまへまえよりよりより鳥鳥とりののの高高たかくくくなきなきなきててて行行ゆくくくこそこそこそいといといとけそうけそうけそうなるなるなる心心ここちちちしししてててをかしけれをかしけれおかしけれ。。。冬冬ふゆのののいみじくいみじくいみじく寒寒さむきききににに思思おもふふう人人ひととととうづもれうづもれうずもれふしふしふしててて聞聞きくくくににに鐘鐘かねのののおとおとおとのののたゞたゞただ物物ものののの底底そこなるなるなるやうやうようににに聞聞きこゆるゆるゆるもももをかしをかしおかし。。。鳥鳥とりののの聲聲こえもももはじめはじめはじめははははねはねはねのののうちうちうちににに口口くちをををこめこめこめながらながらながら鳴鳴なけけけばばば、、、いみじういみじういみじゅう物物もの深深ぶかくくく遠遠とおきききがががつきつきつきつぎつぎつぎににになるなるなるまゝまゝままににに近近ちかくくく聞聞きこゆるゆるゆるもももをかしをかしおかし。。。
- 2けさうけさうけそうびとびとびとにてにてにてきききたるたるたるはははいふいふいうべきべきべきにににもももあらあらあらずずず。。。唯唯ただうちうちうちかたらひかたらひかたらい又又またさしもさしもさしもあらあらあらねねねどどどおのづからおのづからおのずからきききなどなどなどするするする人人ひとのののすすすのののうちうちうちにてにてにてあまたあまたあまた人々人々ひとびと居居いててて物物ものなどなどなどいふいふいうににに入入いりりりててて、、、とみとみとみににに歸歸かえりりりげげげもももなきなきなきををを供供ともなるなるなるをのこをのこおのこわらはわらはわらわなどなどなど「「「斧斧おのののの柄柄えももも朽朽くちちちぬぬぬべきべきべきなななめりめりめり」」」とととむつかしけれむつかしけれむつかしければばば、、、ながやかながやかながやかにににうちうちうちながめながめながめてててみそかみそかみそかにににととと思思おもひひいててていふいふいうらめらめらめどもどもども「「「あなあなあなわびしわびしわびし。。。ぼんなうぼんなうぼんのうくなうくなうくのうかなかなかな。。。今今いまははは夜夜よ中中なかにににはははなりなりなりぬぬぬらむらむらん」」」などなどなどいひいひいいたるたるたるいみじういみじういみじゅう心心こころづきづきずきなくなくなく、、、かのかのかのいふいふいうものものものはははとかくとかくとかくもももおぼえおぼえおぼえずずず。。。このこのこの居居いたるたるたる人人ひとこそこそこそをかしうをかしうおかしゅう見見みきゝきゝききつるつるつる事事こともももうするうするうするやうやうようににに覺覺おぼゆれゆれゆれ。。。又又また「「「さささははは色色いろににに出出いでゝでゝでてはははえええいはいはいわずずずあるあるある」」」ととと高高たかやかやかやかにににうちうちうちいひいひいいうめきうめきうめきたるたるたるももも、、、したしたしたゆくゆくゆく水水みずのののととといといといとをかしをかしおかし。。。たてたてたてじとみじとみじとみ、、、すいがいすいがいすいがいのののもともともとにてにてにて「「「雨雨あめ降降ふりりりぬぬぬべしべしべし」」」などなどなど聞聞きこえええたるたるたるもももいといといとにくしにくしにくし。。。よきよきよき人人ひときんだちきんだちきんだちなどなどなどのののともともともなるなるなるこそこそこそさやうさやうさようにににはははあらあらあらねねね、、、たゞたゞただ人人びとなどなどなどさささぞぞぞあるあるある。。。あまたあまたあまたあらあらあらむむん中中なかにににももも心心こころばへばへばえ見見みてててぞぞぞゐゐいてててありくありくありくべきべきべき。。。
現代語訳
人目を忍んで逢う所としては、夏こそ趣がある。たいそう短い夜が、たいそうあっけなく明けてしまったので、少しも寝ないで終わってしまった。そのまま、どこもかしこも開け放したままなので、涼しく見渡される。まだもう少し言うべきことがあるので、互いに返事などをしているうちに、ちょうど座っている前から、鳥が高く鳴いて飛んで行くのは、たいそう人目につくような気がして、おもしろい。冬のたいそう寒いときに、恋しい人と夜具に埋もれて横になって聞くと、鐘の音が、ただ物の底から響くように聞こえるのもおもしろい。鶏の声も、初めは羽の中に口をこもらせながら鳴くので、たいそう奥深く遠く聞こえるのが、次々に鳴くにつれて近くに聞こえるのも、おもしろい。
恋人としてやって来た人のことは、言うまでもない。ただ親しく話をする人や、またそれほどでもないけれど自然と訪ねてくる人が、御簾の内に大勢女房たちがいて話をしているところに入ってきて、すぐには帰りそうにもないのを、供の男や童などが、「斧の柄も朽ちてしまいそうだ」と、うんざりしているので、長々とあくびをして、こっそりと言っているつもりなのだろうけれど、「ああやりきれない。煩悩苦悩だなあ。もう夜中になってしまっただろう」などと言っているのは、たいそう不愉快で、その人の言っていることはどうとも思われない。この座っている人の、おもしろく見聞きしたことも消えてしまうように思われる。また、「さは色に出でてはえ言はずある(そうは顔色に出して言えないでいる)」と、声高に言ってうめいているのも、「下行く水の」という歌を思わせて、たいそうおもしろい。立蔀や透垣のもとで、「雨が降りそうだ」などと聞こえよがしに言っているのも、たいそう憎らしい。身分の高い人や公達などの供人は、そのようなことはないが、普通の身分の人などは、そういうことがある。大勢いる中でも、気立てを見て連れ歩くべきである。
意訳
前半は、恋人との忍び逢いの情景。夏の短夜の明け方、別れを惜しみながら言葉を交わす二人の前を、鳥が高く鳴いて飛び去る。冬の寒い夜には、夜具に埋もれて遠い鐘の音や鶏の声に耳を澄ます。後半は一転して、女房の部屋に長居する客の供人が、聞こえよがしに不平を言う場面。恋の情緒と、それを台なしにする無粋な供人とを、対照的に描いている。
語釈・文法注
文法
- 「けそうなる」
- 「顕証(けしょう)なり」と同じ。人目につくさま、あらわなさま。
- 「斧の柄も朽ちぬべきなめり」
- 中国の故事による。山中で仙人の碁を見ているうちに、斧の柄が朽ちるほどの長い年月がたっていたという。長居をあてこすった言葉。
- 「ぼんなうくなう」
- 煩悩苦悩。仏教語を使って大げさに嘆いている。
- 「したゆく水の」
- 「心には下行く水のわきかへり言はで思ふぞ言ふにまされる」(古今六帖)による。言わずに思う方がまさる、という歌を引き、口に出して不平を言う供人をからかった。
解説
前半は恋人との逢瀬の情趣を夏と冬とで対比して描き、後半は女房の部屋に長居する客の供人の無粋さを描く。二つの話題は、夜の時間をめぐる対照として結びついている。
供人の不平に古歌を重ねておもしろがる作者の態度には、どんな場面でも言葉の機知を楽しむ、宮廷女房らしい感覚が表れている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、218頁(コマ112)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日