枕草子 第69段 類聚的章段
たとしへなきもの
比べようもなくかけ離れたものとして、夏と冬、夜と昼、若いと老いた、笑うと怒る、黒と白、愛と憎などを挙げ、同じ人でも愛情がなくなると別人のようだと述べる。

- 1たとしへたとしへたとしえものものもの題
- 2夏夏なつととと冬冬ふゆととと、、、よるよるよるととと晝晝ひるととと、、、雨雨あめふるふるふるととと日日ひてるてるてるととと、、、若若わかきききととと老老おいいいたるたるたるととと、、、人人ひとののの笑笑わらふふうととと腹腹はらだつだつだつととと、、、黑黑くろきききととと白白しろきききととと、、、思思おもふふうととと憎憎にくむむむととと、、、藍藍あいととときはだきはだきわだととと、、、雨雨あめととと霧霧きりととと。。。おなじおなじおなじ人人ひとながらながらながらももも志志こころざしうせうせうせぬるぬるぬるはははまことまことまことにににあらあらあらぬぬぬ人人ひととととぞぞぞ覺覺おぼゆるゆるゆるかしかしかし。。。
現代語訳
比べようもないもの。
夏と冬と。夜と昼と。雨の降る日と日の照る日と。若いのと年老いたのと。人が笑うのと怒るのと。黒いのと白いのと。愛するのと憎むのと。藍と黄蘗と。雨と霧と。同じ人であっても、愛情がなくなってしまうと、本当に別人だと思われるものだ。
意訳
対照的なものを並べる段。夏と冬、昼と夜、若さと老い、笑いと怒り。そして最後に、同じ人でも心が離れてしまえばまるで別人のようだ、と結ぶ。対比の列挙が、人の心の変わりやすさという、しみじみとした結論へと導かれていく。
語釈・文法注
- たとしへなき
- 「たとしへなし」の連体形。たとえようがない、比べものにならない。
文法
- 「藍ときはだと」
- 藍(青色の染料)と黄蘗(黄色の染料)。色の対照。
- 「志うせぬる」
- 愛情がなくなってしまった。
解説
対照的なものを挙げた類聚的章段である。季節、時間、天気、年齢、感情、色と、さまざまな対比が並べられたうえで、最後に人の心の変化へと話が移る。対比の列挙という形式を用いながら、恋愛における心変わりの悲しみを鋭く言い当てている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、217–218頁(コマ111–112)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日