枕草子 第68段 類聚的章段
おぼつかなきもの
気がかりで不安なものとして、十二年の山籠もりをしている法師の母親、闇の中で知らない所にいるとき、新参の使いに大事な物を持たせたのに帰りが遅いとき、言葉の話せない赤ん坊が泣いているときなどを挙げる。

- 1ものものもの題
- 2十十じゅう二二に年年ねんののの山山やまごもりごもりごもりののの法法ほう師師しのののめめめおやおやおや。。。知知しらららぬぬぬ所所ところににに闇闇やみなるなるなるににに行行ゆきききたるたるたるににに、、、あらはあらはあらわにににもももぞぞぞあるあるあるとてとてとて火火ひもももともさともさともさでででさすがにさすがにさすがになみなみなみゐゐいたるたるたる。。。今今いままでまでまできききたるたるたるものものものゝゝの心心こころももも知知しらららぬぬぬにににやんごとなきやんごとなきやんごとなき物物ものもたもたもたせせせててて人人ひとのののがりがりがりやりやりやりたるたるたるにににおそくおそくおそくかへるかへるかえる。。。物物ものいはいはいわぬぬぬちごちごちごのののそりそりそりくつがへりくつがへりくつがえりててて人人ひとにににもももいだかいだかいだかれれれずずず泣泣なきききたるたるたる。。。暗暗くらきききにににいちごいちごいちごくひくひくいたるたるたる。。。人人ひとののの顏顏かお見見みしらしらしらぬぬぬ物物もの見見み。。。
現代語訳
気がかりなもの。
十二年の山籠もりをしている法師の母親。知らない所に、闇夜に行ったときに、姿が見えてはいけないといって、灯火もともさずに、それでも並んで座っているの。新しく来た召使いで、気心も知れない者に、大切な物を持たせて人のもとにやったのに、帰りが遅いの。まだ口のきけない赤ん坊が、そり返って、人にも抱かれずに泣いているの。暗い所で苺を食べているの。人の顔をよく見分けられない見物。
意訳
「おぼつかなし」は、様子がはっきりせず気がかりなこと。比叡山で十二年の修行をする息子を案じる母、暗がりで見知らぬ場所にいる心細さ、大事な物を託した新参の使いの帰りの遅さ、泣きやまない赤ん坊。いずれも、相手の様子が分からないもどかしさと不安が共通している。
語釈・文法注
- おぼつかなき
- 「おぼつかなし」の連体形。様子がはっきりせず気がかりだ、不安だ。
文法
- 「十二年の山ごもり」
- 比叡山で十二年間山を下りずに修行する籠山行。その間、母親は息子に会うことができない。
- 「人のがり」
- 人のもとへ。
解説
不安で気がかりなものを挙げた類聚的章段である。冒頭の、十二年の山籠もりの法師の母という例は、我が子を案じる母の心を思いやったもので、作者のやさしいまなざしがうかがえる。
「暗きにいちごくひたる」という意外な例は、暗くて何を食べているかよく分からない心もとなさを言ったもので、作者のユーモアが感じられる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、217頁(コマ111)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日