枕草子 第64段 類聚的章段
草は
草を挙げ、賀茂祭のかざしとなる葵、名のおもしろい沢瀉、崖に生える危うげな草、軒端の忍草、池に浮かぶ蓮の浮葉、風に裏返る葛の葉などに、それぞれの趣を見いだす。

- 1草草くさははは題
- 2さうぶさうぶそうぶ、、、こもこもこも。。。あふひあふひあうい、、、いといといとをかしをかしおかし。。。祭祭まつりのののをりをりおり神神かみ代代よよりよりよりしししてててさるさるさるかざしかざしかざしとととなりなりなりけむけむけん、、、いみじういみじういみじゅうめでたしめでたしめでたし。。。物物もののののさまさまさまもももいといといとをかしをかしおかし。。。ももも名名なのののをかしきをかしきおかしきなりなりなり、、、心心こころあがりあがりあがりしししけむけむけんとととおもふおもふおもうににに。。。みくりみくりみくり、、、ひるひるひるむしろむしろむしろ、、、こけこけこけ、、、こだにこだにこだに、、、雪雪ゆきまままののの靑靑あおくさくさくさ。。。かたばみかたばみかたばみ、、、あやあやあやのののもんもんもんにてにてにてももも異異こと物物ものよりよりよりはははをかしをかしおかし。。。あやふあやふあやう草草ぐさははは、、、岸岸きしのののひたひひたひひたいににに生生おふふうらむらむらんもももげにげにげにたのもしげたのもしげたのもしげなくなくなくあはれあはれあわれなりなりなり。。。いつまでいつまでいつまで草草ぐさははは生生おふるふるうる所所ところいといといとはかなくはかなくはかなくあはれあはれあわれなりなりなり。。。岸岸きしのののひたひひたひひたいよりよりよりもももこれこれこれはははくづれくづれくずれやすげやすげやすげなりなりなり。。。まことまことまことのののいしばひいしばひいしばいなどなどなどにににはははえええおひおひおいずずずやややあらあらあらむむんととと思思おもふふうぞぞぞわろきわろきわろき。。。ことなしことなしことなし草草ぐさははは思思おもふふう事事ことなきなきなきにににやややあらあらあらむむんととと思思おもふふうもももをかしをかしおかし。。。又又またあしきあしきあしき事事ことををを失失うしなふふうにににやややととといづれいづれいずれもももをかしをかしおかし。。。しのぶしのぶしのぶ草草ぐさいといといとあはれあはれあわれなりなりなり。。。屋屋やのののつまつまつま、、、さしさしさし出出いでででたるたるたる物物もののののつまつまつまなどなどなどにににあながちあながちあながちににに生生おひひい出出いでででたるたるたるさまさまさまいといといとをかしをかしおかし。。。よもぎよもぎよもぎいといといとをかしをかしおかし。。。つばなつばなつばないといといとをかしをかしおかし。。。はまちはまちはまちののの葉葉ははははましてましてましてをかしをかしおかし。。。まろこすげまろこすげまろこすげ、、、うきうきうきぐさぐさぐさ、、、あさぢあさぢあさじ、、、あをあをあおつゞらつゞらつづら、、、とくさとくさとくさととといふいふいう物物ものははは風風かぜににに吹吹ふかかかれれれたらたらたらむむん音音おとこそこそこそいかならいかならいかならむむんととと思思おもひひいやらやらやられれれてててをかしけれをかしけれおかしけれ。。。なづななづななずな、、、ならしばならしばならしば、、、いといといとをかしをかしおかし。。。はすはすはすのののうきうきうき葉葉はのののらうたげらうたげろうたげにてにてにてのどかのどかのどかににに澄澄すめるめるめる池池いけのののおもておもておもてにににおほきおほきおおきなるなるなるとととちひさきちひさきちいさきとととひろごりひろごりひろごりたゞよひたゞよひただよいてててありくありくありくいといといとをかしをかしおかし。。。とりとりとりあげあげあげててて物物ものおしおしおしつけつけつけなどなどなどしししててて見見みるるるもももよよよにににいみじういみじういみじゅうをかしをかしおかし。。。やへやへやえむぐらむぐらむぐら、、、やまやまやますげすげすげ、、、やまやまやまゐゐい、、、ひかげひかげひかげ、、、はまゆふはまゆふはまゆう、、、あしあしあし。。。くずくずくずののの、、、風風かぜににに吹吹ふきききかへさかへさかえされれれててて裏裏うらのののいといといとしろくしろくしろく見見みゆるゆるゆるをかしをかしおかし。。。
現代語訳
草は。
菖蒲。真菰。葵はたいそう趣がある。賀茂祭のとき、神代からそのようなかざしとなったのだろう、たいそうすばらしい。葉の形もたいそうおもしろい。沢瀉も名がおもしろいのである。思い上がっているのだろうと思うと。三稜草。蛭むしろ。苔。こだに。雪間の青草。かたばみは、綾の紋様にしても、ほかのものよりはおもしろい。あやう草は、崖っぷちに生えるというのも、なるほど頼りなげでしみじみとする。いつまで草は、生える所がたいそうはかなく、しみじみとする。崖っぷちよりもこちらは崩れやすそうだ。本物の石灰の壁などには生えることができないのだろうかと思うのは、残念だ。事無し草は、思い悩むことがないのだろうかと思うのもおもしろい。また、悪いことをなくすのだろうかと、どちらにしてもおもしろい。忍草はたいそうしみじみとする。軒先や、突き出たものの端などに、無理に生え出ている様子は、たいそう趣がある。蓬はたいそう趣がある。茅花はたいそう趣がある。浜茅の葉は、なおさら趣がある。まろこすげ、浮草、浅茅、青つづら。木賊というものは、風に吹かれたらどんな音がするだろうと思いやられて、おもしろい。薺、楢柴は、たいそう趣がある。蓮の浮葉がかわいらしく、のどかに澄んだ池の水面に、大きいのも小さいのも広がり漂って動いているのは、たいそう趣がある。取り上げて何かに押しつけたりして見るのも、まことにたいそうおもしろい。八重葎、山菅、山藍、日陰の葛、浜木綿、葦。葛が風に吹き返されて、葉の裏がたいそう白く見えるのは、趣がある。
意訳
草の名を挙げながら、作者はそれぞれの名前や生え方に心を寄せる。神代から賀茂祭のかざしとされた葵、「面高」と書いて思い上がっているかのような沢瀉、崖っぷちや壁の上など危うい所に生える草へのあわれ。蓮の浮葉が澄んだ池に漂う様子や、風に吹き返されて白い裏を見せる葛の葉など、何気ない草の姿に美しさを見いだしていく。
語釈・文法注
- おもだか
- 沢瀉。葉が人の顔のような形で高く伸びることから「面高」とも書き、作者はそこから「思い上がっている」と連想した。
文法
- 「いつまで草」
- 壁や崖に生える蔦の類と考えられる。名前から、いつまで生きていられるか、というはかなさを感じている。
- 「いしばひ」
- 石灰。石灰を塗った壁。
- 「よにいみじうをかし」
- 「よに」は、まことに、非常に。
解説
草を挙げた類聚的章段である。挙げられた草の多くは、その名前から連想が広がっており、作者の言葉に対する感覚の鋭さがよく表れている。
後半の蓮の浮葉と葛の葉の描写は、写実的で鮮やかであり、自然を観察する作者の確かな目を感じさせる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、215頁(コマ110)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日