枕草子 第53段 随想的章段
細殿に人とあまた居て
細殿に女房たちが大勢いて、通りかかる従者を呼び止めて「誰の物か」と尋ねたとき、きちんと主人の名を答えて行くのはよく、気取って答えずに行ってしまう者は憎らしい、と述べる。

- 1細細ほそ殿殿どのににに人人ひととととあまたあまたあまた居居いててて、、、ありくありくありくものものものどもどもども見見みやすからやすからやすからずずず呼呼よびびび寄寄よせせせてててものものものなどなどなどいふいふいうににに、、、淸淸きよげげげなるなるなるをのこをのこおのこ、、、小小こ舍舍どね人人りわらはわらはわらわなどなどなどのののよきよきよきつゝみつゝみつつみ袋袋ぶくろにににきぬきぬきぬどもどもどもつゝみつゝみつつみててて指指さし貫貫ぬきののの腰腰こしなどなどなどうちうちうち見見みえええたるたるたる。。。袋袋ふくろににに入入いりりりたるたるたる弓弓ゆみ、、、矢矢や、、、たてたてたて、、、ほこほこほこ、、、たちたちたちなどなどなどもてもてもてありくありくありくををを「「「たがたがたがぞぞぞ」」」ととと問問とふふうににについついつい居居いててて、、、「「「なにがしなにがしなにがし殿殿どのののの」」」ととといひいひいいててて行行ゆくくくはははいといといとよしよしよし。。。氣氣け色色しきばみばみばみやさしやさしやさしがりがりがりててて「「「知知しらららずずず」」」ともともともいひいひいい、、、聞聞ききききももも入入いれれれでででいぬるいぬるいぬるものものものははは、、、いみじういみじういみじゅうぞぞぞにくきにくきにくきかしかしかし。。。月月つき夜夜よにににむなむなむなぐるまぐるまぐるまありきありきありきたるたるたる。。。淸淸きよげげげなるなるなる男男おとこのののにくげにくげにくげなるなるなるめめめもちもちもちたるたるたる。。。髯髯ひげぐろぐろぐろににににくげにくげにくげなるなるなる人人ひとののの年年とし老老おいいいたるたるたるががが、、、物物ものがたりがたりがたりするするする人人ひとのののちごちごちごもてもてもてあそびあそびあそびたるたるたる。。。
現代語訳
細殿に女房たちが大勢いて、通りかかる者たちを、見ていられずに呼び寄せて何か話をしていると、きれいな身なりの従者や小舎人童などが、立派な包みや袋に着物などを包んで、指貫の腰紐などがちらりと見えているの。袋に入った弓、矢、盾、矛、太刀などを持って歩いているのを、「誰のですか」と尋ねると、ひざまずいて「なにがし殿のです」と言って行くのは、たいそうよい。気取ったり恥ずかしがったりして「知りません」と言ったり、聞き入れもしないで行ってしまう者は、たいそう憎らしいものだ。月夜に空の車が走っているの。きれいな男が醜い妻を持っているの。ひげの黒々とした醜い人で年老いた者が、話し相手の人の赤ん坊をあやしているの。
意訳
細殿に集まった女房たちは、通りかかる従者を呼び止めては、誰の使いかと尋ねて楽しむ。素直に主人の名を答えて去る者は好ましく、気取って答えない者は憎らしい。後半の、月夜の空車、美男の醜い妻、ひげ面の老人が赤ん坊をあやす姿は、前の段の「似つかわしくないもの」の続きとも読める。
語釈・文法注
文法
- 「見やすからず」
- 見ていて落ち着かず、放っておけずに、の意と解される。
- 「ついゐて」
- 「つきゐて」の音便。ひざまずいて。
解説
宮中の細殿での、女房たちと通行人とのやりとりを描いた短い段である。末尾の三つの例は、前段「にげなきもの」と同じ発想によるもので、底本では改行せずに続けて書かれている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、208–209頁(コマ107)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日