枕草子 第51段 随想的章段
七月ばかりに風のいたう吹き
七月ごろ、風が強く吹き雨の騒がしい日は、すっかり涼しいので扇も忘れ、汗の香の少しこもった薄い衣を引きかぶって昼寝をするのが趣がある、と述べる短い段。

- 1七月七月しちがつばかりばかりばかりににに風風かぜのののいたういたういとう吹吹ふききき、、、雨雨あめなどなどなどのののさわがしきさわがしきさわがしき日日ひ、、、大大おおかたかたかたいといといと凉凉すずしけれしけれしければばば扇扇おうぎもももうちうちうち忘忘わすれれれたるたるたるににに、、、あせあせあせのののかかか少少すこしししかゝへかゝへかかえたるたるたるきぬきぬきぬのののうすきうすきうすき引引ひきききかつぎかつぎかつぎてててひるひるひるねねねしししたるたるたるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。
現代語訳
七月ごろに、風がひどく吹き、雨などが騒がしく降る日、全体にたいそう涼しいので扇もうっかり忘れているときに、汗の香りが少しこもっている薄い着物を引きかぶって昼寝をしているのは、趣がある。
意訳
蒸し暑い夏の中で、嵐の日だけは涼しく、扇もいらない。少し汗の匂いの残る薄衣をかぶって昼寝をする、その心地よさ。季節の中のつかのまの快さを、体の感覚でとらえた短い段である。
語釈・文法注
文法
- 「かゝへたる」
- 「かかふ」は、こもる、しみつく。汗の香りが少ししみこんでいる。
解説
夏の嵐の日の昼寝の心地よさを描いた、ごく短い随想的章段である。汗の香りという身体的な感覚を率直に書きとめているところに、作者の感覚の鋭さと飾らなさがうかがえる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、207頁(コマ106)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日