枕草子 第49段 類聚的章段
あてなるもの
上品で優雅なものとして、薄紫の衵に白襲の汗衫、雁の卵、新しい金属の器に入れた甘葛をかけた削り氷、水晶の数珠、藤の花、雪の降りかかった梅の花、苺を食べるかわいい幼児を挙げる。

現代語訳
上品なもの。
薄紫色の衵に、白襲の汗衫を着ているの。雁の卵。削り氷に甘葛をかけて、新しい金属の椀に入れたの。水晶の数珠。藤の花。梅の花に雪が降りかかっているの。たいそうかわいらしい幼い子が、苺を食べているの。
意訳
「あて」は、上品で優雅なこと。薄紫と白の衣の取り合わせ、白く小さな雁の卵、新しい金の器の中で甘い蜜のかかった削り氷、透きとおった水晶の数珠、藤の花、梅に降る雪、そして苺を食べる幼な子。色の淡さ、透明感、清らかさが共通しており、作者の繊細な美意識がよく表れている。
語釈・文法注
- あて
- 高貴で上品なさま。優雅で気品があること。
- けづりひ
- 削り氷。氷室に貯えた氷を削ったもの。甘葛(あまづら、つる草から採った甘味料)をかけて食べた。当時は貴重な夏の贅沢品であった。
文法
- 「かなまり」
- 金属製の椀。
- 「すゐさう」
- 水晶(すいしょう)。
解説
上品で優雅なものを挙げた短い類聚的章段で、教科書にもよく採られる。とりわけ「削り氷にあまづら入れて、新しき金鋺に入れたる」は、平安時代のかき氷として知られている。
挙げられたものには、白や淡い色、透明感、清らかさという共通点がある。最後に「美しき稚児の苺食ひたる」を置いて、物から人の姿へと視線を移すところに、作者の構成の妙がある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、206頁(コマ106)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日