枕草子 第48段 類聚的章段
鳥は
鳥を挙げ、人の言葉をまねる鸚鵡、友を恋う山鳥、雲居に届く鶴の声、鴛鴦の夫婦の情などを語る。とりわけ鶯が宮中で鳴かないことを惜しみ、ほととぎすの声のすばらしさを熱く語る。

- 1鳥鳥とりははは題
- 2ことことことゝころゝころところののの物物ものなれなれなれどどど鸚鸚おう鵡鵡むいといといとあはれあはれあわれなりなりなり。。。人人ひとののの言言いふふうらむらむらんことことことをををまねぶまねぶまねぶらむらむらんよよよ。。。杜鵑杜鵑ほととぎす、、、水水くい鷄鷄な、、、鴫鴫しぎ、、、みこみこみこ鳥鳥どり、、、ひわひわひわ、、、ひたきひたきひたき。。。山山やま鳥鳥どりははは友友ともををを戀戀こひひいててて鳴鳴なくくくににに、、、鏡鏡かがみををを見見みせせせたれたれたればばば慰慰なぐさむむむらむらむらん、、、いといといとあはれあはれあわれなりなりなり。。。谷谷たにへだてへだてへだてたるたるたる程程ほどなどなどなどいといといと心心こころぐるしぐるしぐるし。。。つるつるつるはははこちたきこちたきこちたきさまさまさまなれなれなれどもどもども、、、鳴鳴なくくく聲聲こえ雲雲くもゐゐいまでまでまで聞聞きこゆゆゆらむらむらんいといといとめでたしめでたしめでたし。。。かしらかしらかしら赤赤あかききき雀雀すずめ、、、いかるがいかるがいかるがのののをとりをとりおとり、、、たくみたくみたくみどりどりどり。。。鷺鷺さぎはははいといといと見見みるるる目目めもももみぐるしみぐるしみぐるし。。。まなこまなこまなこゐゐいなどなどなどもももうたてうたてうたて、、、よろづよろづよろずににになつかしからなつかしからなつかしからねねねどどど、、、ゆるぎゆるぎゆるぎののの森森もりにににひとりひとりひとりはははねねねじじじととと爭爭あらそふふうらむらむらんこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。はこはこはこどりどりどり。。。水水みず鳥鳥どりははは、、、をしをしをしいといといとあはれあはれあわれなりなりなり。。。かたみかたみかたみににに居居いかはりかはりかわりてててはねはねはねのののうへうへうえののの霜霜しもををを拂拂はらふふうらむらむらんなどなどなどいといといとをかしをかしおかし。。。都都みやこ鳥鳥どり、、、川川かわ千千ち鳥鳥どりははは友友ともまどはすまどはすまどわすらむらむらんこそこそこそ。。。かりかりかりののの聲聲こえははは遠遠とおくくく聞聞きこえええたるたるたるあはれあはれあわれなりなりなり。。。鴨鴨かもははははねはねはねののの霜霜しもうちうちうちはらふはらふはらうらむらむらんととと思思おもふふうにににをかしをかしおかし。。。
- 3鶯鶯うぐいすはははふみふみふみなどなどなどにににもももめでたきめでたきめでたきものものものににに作作つくりりり、、、聲聲こえよりよりよりはじめはじめはじめてててさまさまさまかたちかたちかたちもももさばかりさばかりさばかりあてあてあてににに美美うつくしきくしきくしきほどほどほどよりよりよりははは、、、九重九重ここのえののの內內うちににになかなかなかぬぬぬぞぞぞいといといとわろきわろきわろき。。。人人ひとののの、、、さささなむなむなんあるあるあるととといひいひいいしししををを、、、さしもさしもさしもあらあらあらじじじととと思思おもひひいしししににに、、、十十じゅう年年ねんばかりばかりばかり侍侍さぶらひひいててて聞聞ききききしししににに、、、まことまことまことににに更更さらにににおとおとおともももせせせざりざりざりききき。。。さるはさるはさるは竹竹たけももも近近ちかくくく、、、紅紅こう梅梅ばいもももいといといとよくよくよく通通かよひひいぬぬぬべきべきべきたよりたよりたよりなりなりなりかしかしかし。。。まかでゝまかでゝまかでて聞聞きけけけばばば、、、あやしきあやしきあやしき家家いえののの見見みどころどころどころもももなきなきなき梅梅うめなどなどなどにににははは華華はなやかやかやかにににぞぞぞ鳴鳴なくくく。。。よるよるよるなかなかなかぬぬぬもももいぎたなきいぎたなきいぎたなき心心ここちちちすれすれすれどもどもども今今いまはははいかゞいかゞいかがせせせむむん。。。夏夏なつ秋秋あきののの末末すえまでまでまでおいおいおい聲聲ごえににに鳴鳴なきききてててむしむしむしくひくひくいなどなどなど、、、やうやうようもももあらあらあらぬぬぬものものものははは名名なをををつけつけつけかへかへかえててていふいふいうぞぞぞ口口くち惜惜おしくしくしくすごきすごきすごき心心ここちちちするするする。。。それそれそれももも雀雀すずめなどなどなどやうやうようににに、、、常常つねにににあるあるある鳥鳥とりならならならばばばさささもももおぼゆおぼゆおぼゆまじまじまじ。。。春春はるなくなくなくゆゑゆゑゆえこそこそこそはははあらあらあらめめめ。。。年年とし立立たちちちかへるかへるかえるなどなどなどをかしきをかしきおかしきことことことににに歌歌うたにににもももふみふみふみにににももも作作つくるるるなるなるなるははは、、、猶猶なお春春はるのののうちうちうちならならならましかましかましかばばばいかにいかにいかにをかしからをかしからおかしからましましまし。。。人人ひとをををももも人人ひとげげげなうなうのう世世よのののおぼえおぼえおぼえあなづらはしうあなづらはしうあなずらわしゅうなりなりなりそめそめそめにににたるたるたるをををばばば、、、そしりそしりそしりやはやはやはするするする。。。鳶鳶とび、、、烏烏からすなどなどなどのののうへうへうえははは見見みいれいれいれ聞聞ききききいれいれいれなどなどなどするするする人人ひと世世よににになしなしなしかしかしかし。。。されされさればばばいみじかるいみじかるいみじかるべきべきべきものものものとととなりなりなりたれたれたればばばととと思思おもふふうににに心心こころゆかゆかゆかぬぬぬ心心ここちちちするするするなりなりなり。。。祭祭まつりのののかへさかへさかえさ見見みるるるとてとてとて、、、うりんゐんうりんゐんうりんいん、、、知知ち足足そく院院いんなどなどなどののの前前まえににに車車くるまをををたてたてたてたれたれたればばば、、、杜鵑杜鵑ほととぎすもももしのばしのばしのばぬぬぬにににやややあらあらあらむむん鳴鳴なくくくににに、、、いといといとようようようまねびまねびまねび似似にせせせててて木木こ高高だかききき木木きどもどもどもののの中中なかににに、、、もろもろもろごえごえごえににに鳴鳴なきききたるたるたるこそこそこそさすがにさすがにさすがにをかしけれをかしけれおかしけれ。。。
- 4杜鵑杜鵑ほととぎすははは猶猶なお更更さらにににいふいふいうべきべきべきかたかたかたなしなしなし。。。いつしかいつしかいつしかしたりしたりしたり顏顏がおにににももも聞聞きこえええ、、、歌歌うたににに、、、卯卯うののの花花はな、、、花花はな橘橘たちばななどなどなどにににやどりやどりやどりをををしししててて、、、はたはたはたかくれかくれかくれたるたるたるもももねたげねたげねたげなるなるなる心心こころばへばへばえなりなりなり。。。五月五月さ雨雨みだれののの短短みじか夜夜よにににねねねざめざめざめをををしししててていかでいかでいかで人人ひとよりよりよりさきさきさきににに聞聞きかかかむむんとととまたまたまたれれれててて、、、夜夜よ深深ぶかくくくうちうちうち出出いでででたるたるたる聲聲こえのののらうらうしうらうらうしうろうろうしゅうあいぎやうあいぎやうあいぎょうづきづきずきたるたるたる、、、いみじういみじういみじゅう心心こころあくがれあくがれあくがれ、、、せせせむむんかたかたかたなしなしなし。。。みなづきみなづきみなずきににになりなりなりぬれぬれぬればばば、、、おとおとおともももせせせずずずなりなりなりぬるぬるぬる、、、すべてすべてすべていふいふいうもももおろかおろかおろかなりなりなり。。。よるよるよるなくなくなくものものものすべてすべてすべていづれいづれいずれもももいづれいづれいずれもももめでたしめでたしめでたし。。。ちごちごちごどもどもどものみのみのみぞぞぞさしもさしもさしもなきなきなき。。。
現代語訳
鳥は。
よその国のものだけれど、鸚鵡はたいそう心ひかれる。人の言うことをまねるというではないか。ほととぎす。水鶏。鴫。都鳥。ひわ。ひたき。山鳥は、友を恋しがって鳴くので、鏡を見せると慰められるというのが、たいそうしみじみとする。谷を隔てて夫婦が別々に寝るというのなどは、たいそう気の毒だ。鶴は、仰々しい姿だけれど、鳴く声が天まで届くというのが、たいそうすばらしい。頭の赤い雀。斑鳩の雄鳥。たくみ鳥。鷺はたいそう見た目も見苦しい。目つきなどもいやな感じで、何につけても親しみがもてないけれど、「ゆるぎの森にひとりは寝じ」と争うというのは、おもしろい。箱鳥。水鳥では、鴛鴦がたいそうしみじみとする。雌雄が互いに居場所を替わって、羽の上の霜を払うというのなどは、たいそう趣がある。都鳥。川千鳥は、友を見失って鳴くというのが趣深い。雁の声は、遠くに聞こえるのがしみじみとする。鴨は、羽の霜を打ち払うのだろうと思うとおもしろい。
鶯は、漢詩などにもすばらしいものとして作り、声をはじめとして、姿形もあれほど上品で美しいのに、宮中で鳴かないのはたいそうよくない。人が、そうなのだと言ったのを、まさかそんなことはあるまいと思っていたが、十年ほど宮仕えして聞いていたのに、本当に少しも声を立てなかった。それでいて、竹も近く、紅梅もあって、たいそうよく通ってきそうな場所なのに。宮中から退出して聞くと、みすぼらしい家の見ばえもしない梅の木などでは、はなやかに鳴いている。夜鳴かないのも寝坊な感じがするけれど、今さらどうしようもない。夏や秋の末まで老いた声で鳴いて、「虫食い」などと、身分の低い者が名を付け替えて言うのは、残念で興ざめな気がする。それも雀などのように、いつもいる鳥なら、そうも思わないだろう。春に鳴くからこそなのだろう。「年立ちかへる」などと、趣のあることとして歌にも漢詩にも作るというのは、やはり春のうちだけ鳴くのであったら、どんなにすばらしかっただろう。人の場合でも、人並みでなく、世間の評判も軽んじられるようになってしまった者を、わざわざ悪く言うだろうか。鳶や烏などのことは、目をとめたり耳を傾けたりする人は世にいないものだ。だからこそ、鶯はすばらしいものとなっているのだと思うと、物足りない気持ちがするのである。賀茂祭の帰りの行列を見ようとして、雲林院や知足院などの前に車を立てていると、ほととぎすも忍びきれないのか鳴くのに、鶯がたいそう上手にまねて似せて、木高い木々の中で声を合わせて鳴いているのは、さすがに趣がある。
ほととぎすは、やはり何とも言いようがないほどすばらしい。いつの間にか得意顔に鳴き声が聞こえ、歌に詠まれるように、卯の花や花橘などに宿って、また身を隠しているのも、しゃくなほど心憎い心ばえである。五月雨の短い夜に目を覚まして、何とかして人より先に聞こうと待っていると、夜深くに鳴き出した声が、気品があってかわいらしいのは、たいそう心がひきつけられて、どうしようもない。六月になってしまうと、声も立てなくなってしまうのは、まったく言いようもない。夜鳴くものは、すべてどれもこれもすばらしい。赤ん坊だけはそうでもないが。
意訳
鳥を挙げながら、作者はそれぞれの鳥にまつわる伝説や和歌の言葉を思い起こす。鏡に映る姿を友と思う山鳥、天まで届く鶴の声、霜を払い合う鴛鴦。中ほどでは鶯について、これほど美しい鳥がなぜ宮中では鳴かないのかと、十年の宮仕えの体験から不満を述べる。そして最後にほととぎすへの熱い思いを語り、夜明け前の初音を待つ心を描く。結びの「ちごどものみぞさしもなき」(夜泣きする赤ん坊だけは別)という一言に、作者のユーモアが光る。
語釈・文法注
文法
- 「ことゝころの物」
- 異所の物。よその国(外国)のもの。
- 「鏡を見せたれば慰むらむ」
- 山鳥は鏡に映った自分の姿を友と思って慰められるという伝説による。
- 「谷へだてたる程」
- 山鳥の雌雄は夜、谷を隔てて別々に寝るという言い伝え。
- 「ゆるぎの森にひとりはねじ」
- 「高島やゆるぎの森の鷺すらもひとりは寝じと争ふものを」(古今六帖)の歌による。
- 「十年ばかり侍ひて」
- 作者が宮仕えした年数を言うが、実際には七年ほどであり、誇張した言い方とみられる。
- 「ちごどものみぞさしもなき」
- 赤ん坊だけはそうでもない。夜泣きをする赤ん坊をさして、夜鳴くものはすべてすばらしい、という前言に落ちをつけた。
解説
鳥を挙げた類聚的章段である。挙げられる鳥の多くは、和歌や漢詩、伝説との結びつきによって選ばれている。
中ほどの鶯についての長い一節は、作者の宮仕えの体験が語られる点で注目される。春の鳥として歌に詠まれる鶯が、夏や秋の末まで「老い声」で鳴いて「虫食い」と呼ばれるのを惜しむところには、ものの美しさは季節にふさわしくあってこそ、という作者の美意識が表れている。
最後のほととぎすの一節は、初音を待ちわびる平安貴族の心情をよく伝えている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、205–206頁(コマ105–106)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日