枕草子 第43段 随想的章段
七月ばかり
七月の暑い夜明け、恋人の帰った後もまだ寝ている女の部屋を、別の女のもとから帰る途中の男がのぞき込む。二人は機知に富んだ言葉を交わし、男は女の扇を引き寄せる。物語の一場面のような朝の情景を描く。

- 1七月七月しちがつばかりばかりばかりいみじくいみじくいみじくあつけれあつけれあつければばば、、、よろづよろづよろずののの所所ところあけあけあけながらながらながら夜夜よもももあかすあかすあかすににに、、、月月つきのののころころころはははねねねおきおきおきててて見見みいだすいだすいだすもももいといといとをかしをかしおかし。。。やみやみやみももも又又またをかしをかしおかし。。。有有あり明明あけはははたたたいふいふいうもももおろかおろかおろかなりなりなり。。。いといといとつやゝかつやゝかつややかなるなるなる板板いたのののはしはしはし近近ちこうううあざやかあざやかあざやかなるなるなるたゝみたゝみたたみ一一ひとひらひらひらかりそめかりそめかりそめにににうちうちうち敷敷しきききててて三三さん尺尺じゃくののの凡凡き帳帳ちょう奥奥おくのののかたかたかたににに押押おしししやりやりやりたるたるたるぞぞぞあぢきなきあぢきなきあじきなき。。。はしはしはしにににこそこそこそ立立たつつつべけれべけれべけれ。。。奧奧おくのののうしろめたからうしろめたからうしろめたからむむんよよよ。。。人人ひとははは出出いでででにににけるけるけるなるなるなるべしべしべし。。。うすうすうす色色いろのののうらうらうらいといといと濃濃こくくくてててうへうへうえははは少少すこしししかへりかへりかえりたるたるたるならならならずずずばばば、、、濃濃こききき綾綾あやのののつやゝかつやゝかつややかなるなるなるがががいたくいたくいたくはははなえなえなえぬぬぬををを、、、かしらかしらかしらこめこめこめてててひきひきひき着着きてててぞぞぞねねねたたためるめるめる。。。かうかうこうぞめぞめぞめのののひとへひとへひとえ、、、紅紅くれないのののこまやかこまやかこまやかなるなるなるすゞしすゞしすずしののの袴袴はかまののの腰腰こしいといといと長長ながくくく、、、きぬきぬきぬののの下下したよりよりよりひかひかひかれれれたるたるたるもももまだまだまだ解解とけけけながらながらながらなななめりめりめり。。。そばそばそばのののかたかたかたににに髪髪かみのののうちうちうちたゝなはりたゝなはりたたなわりてててゆらゝかゆらゝかゆららかなるなるなるほどほどほど、、、長長ながさささおしおしおしはからはからはかられれれたるたるたるににに、、、
- 2又又またいづこいづこいずこよりよりよりにににかかかあらあらあらむむん、、、あさぼらけあさぼらけあさぼらけのののいみじういみじういみじゅうきりきりきり滿滿みちちちたるたるたるににに、、、二二ふた藍藍あいののの指指さし貫貫ぬきあるあるあるかかかなきなきなきかかかのののかうかうこうぞめぞめぞめののの狩狩かり衣衣ぎぬ、、、白白しろきききすゞしすゞしすずし、、、紅紅くれないのののいといといとつやゝかつやゝかつややかなるなるなるうちうちうちぎぬぎぬぎぬののの霧霧きりにににいたくいたくいたくしめりしめりしめりたるたるたるをををぬぎぬぎぬぎ垂垂たれれれててて、、、鬢鬢びんののの少少すこしししふくだみふくだみふくだみたれたれたればばば烏烏え帽帽ぼう子子しののの押押おししし入入いれれれられられられたるたるたるけしきけしきけしきもももしどけなくしどけなくしどけなく見見みゆゆゆ。。。朝朝あさ顏顏がおののの露露つゆ落落おちちちぬぬぬさきさきさきににに文文ふみ書書かかかかむむんとてとてとて、、、道道みちののの程程ほどももも心心こころもとなくもとなくもとなく「「「おふおふおうののの下下した草草くさ」」」などなどなど口口くちずさひずさひずさいててて我我わがががかたかたかたへへへ行行ゆくくくににに、、、格格こう子子しのののあがりあがりあがりたれたれたればばば、、、みすみすみすのののそばそばそばをををいさゝかいさゝかいささかあけあけあけててて見見みるるるににに、、、起起おきききててていぬいぬいぬらむらむらん人人ひともももをかしをかしおかし。。。露露つゆををを哀哀あわれととと思思おもふふうにににややや、、、暫暫しばししし見見みたれたれたればばば、、、枕枕まくらがみがみがみのののかたかたかたににに、、、ほゝほゝほほににに紫紫むらさきののの紙紙かみはりはりはりたるたるたる扇扇おうぎひろごりひろごりひろごりながらながらながらありありあり。。。みちのくにみちのくにみちのくに紙紙がみのののたゝうたゝうたとう紙紙がみのののほそやかほそやかほそやかなるなるなるががが花花はなかかか紅紅くれないかかか少少すこしししにほひにほひにおいうつりうつりうつりたるたるたるももも凡凡き帳帳ちょうのののもともともとににに散散ちりりりぼひぼひぼいたるたるたる。。。
- 3人人ひとのののけはひけはひけわいあれあれあればばばきぬきぬきぬののの中中なかよりよりより見見みるるるににに、、、うちうちうちゑみゑみえみててて長長なげ押押しにににおしおしおしかゝりかゝりかかり居居いたれたれたればばば、、、はぢはぢはじなどなどなどするするする人人ひとにににはははあらあらあらねねねどどど、、、うちうちうちとくとくとくべきべきべき心心こころばへばへばえにににもももあらあらあらぬぬぬににに、、、ねたうねたうねとうももも見見みえええぬるぬるぬるかなかなかなととと思思おもふふう。。。「「「こよなきこよなきこよなき名名な殘殘ごりののの御御おおんあさいあさいあさいかなかなかな」」」とてとてとてすすすのののうちうちうちににになからなからなからばかりばかりばかり入入いりりりたれたれたればばば、、、「「「露露つゆよりよりよりさきさきさきなるなるなる人人ひとのののもどかしさもどかしさもどかしさににに」」」ととといらふいらふいらう。。。をかしきをかしきおかしき事事こととりとりとりたてゝたてゝたてて書書かくくくべきべきべきにににあらあらあらねねねどどど、、、かくかくかくいひいひいいかはすかはすかわすけしきけしきけしきどもどもどもにくからにくからにくからずずず。。。枕枕まくらがみがみがみなるなるなる扇扇おうぎををを我我わがががもちもちもちたるたるたるしししててておよびておよびておよびてかきかきかき寄寄よするするするがががあまりあまりあまり近近ちこううう寄寄よりりりくるくるくるにににやややととと心心こころときめきときめきときめきせせせられられられててて、、、今今いま少少すこししし引引ひききき入入いらららるゝるゝるる。。。とりとりとりててて見見みなどなどなどしししてててうとくうとくうとくおぼしおぼしおぼしたるたるたる事事ことなどなどなどうちうちうちかすめかすめかすめ恨恨うらみみみなどなどなどするするするににに、、、あかうあかうあこうなりなりなりててて人人ひとののの聲々聲々こえごえししし、、、日日ひもももさしさしさし出出いでででぬぬぬべしべしべし。。。霧霧きりののの絶絶たえ間間ま見見みえええぬぬぬ程程ほどにににととと急急いそぎぎぎつるつるつる文文ふみももも、、、たゆみたゆみたゆみぬるぬるぬるこそこそこそうしろめたけれうしろめたけれうしろめたけれ。。。出出いでででぬるぬるぬる人人ひともももいついついつののの程程ほどにににかかかととと見見みえええててて、、、萩萩はぎののの露露つゆながらながらながらあるあるあるにににつけつけつけてててあれあれあれどどど、、、えええさしさしさし出出いでででずずず。。。かうかうこうのののかかかのののいみじういみじういみじゅうしめしめしめたるたるたるにほひにほひにおいいといといとをかしをかしおかし。。。あまりあまりあまりはしたなきはしたなきはしたなき程程ほどににになれなれなればばば、、、立立たちちち出出いでゝでゝでて我我わがががきききつるつるつるところところところもももかくかくかくやややととと思思おもひひいやらやらやらるゝるゝるるもももをかしかりをかしかりおかしかりぬぬぬべしべしべし。。。
現代語訳
七月ごろ、ひどく暑いので、どこもかしこも開け放したまま夜を明かすが、月のころは、寝起きに外を眺めるのもたいそう趣がある。闇夜もまた趣がある。有明の月の美しさは、言うまでもない。たいそうつやのある板の間の端近くに、真新しい畳を一枚かりそめに敷いて、三尺の几帳を奥の方に押しやっているのは、つまらないことだ。端にこそ立てるべきなのに。奥の方が気がかりなのだろうよ。男はもう出て行ってしまったのだろう。女は、薄紫色の、裏がたいそう濃く、表は少し色あせた衣か、そうでなければ、濃い綾織りのつややかなものであまりなえていないのを、頭からかぶって寝ているようだ。香染の単衣に、紅の濃い生絹の袴の腰ひもがたいそう長く、衣の下から引かれているのも、まだ解けたままなのだろう。そばの方に髪がたたなわって、ゆらゆらと豊かな様子から、髪の長さが推しはかられるところに、
また、どこからの帰りだろうか、明け方のたいそう霧の立ちこめている中を、二藍の指貫に、あるかないかのごく淡い香染の狩衣、白い生絹の単衣、紅のたいそうつややかな打衣が霧にひどく湿っているのを肩から脱ぎ垂らして、鬢が少しほつれているので、烏帽子を押し込むようにかぶった様子もしどけなく見える男がいる。朝顔の露が落ちないうちに後朝の文を書こうと、帰り道も気がせいて、「おふの下草」などと口ずさみながら自分の家へ帰っていくと、格子が上がっているので、御簾の端を少し引き上げて中を見ると、男の起きて帰っていったらしい女の様子も趣がある。露をしみじみと思うのだろうか、しばらく見ていると、女の枕元の方に、朴の木の骨に紫の紙を張った扇が広げたまま置いてある。陸奥紙の畳紙の細長いものが、花の色か紅か、少し色が移っているのも、几帳のもとに散らばっている。
人の気配がするので、女が衣の中からのぞいて見ると、男がほほえんで長押に寄りかかって座っているので、恥ずかしがるような相手ではないけれど、打ち解けるような間柄でもないので、しゃくなことに寝姿を見られてしまったと思う。男が「たいそう名残惜しそうな朝寝ですね」と言って、御簾の内に半分ほど入ってきたので、女は「露より先に起きて帰っていった人がもどかしくて」と答える。おもしろいことをことさら取り立てて書くほどでもないけれど、このように言葉を交わしている様子は悪くない。枕元にある扇を、男が自分の持っている扇で手を伸ばしてかき寄せるのが、あまり近くに寄ってくるのではないかと胸がどきどきして、女はもう少し奥へ引っ込む。男は扇を取って見たりして、自分をよそよそしく思っていることなどをそれとなく恨んだりしているうちに、明るくなって人の声々がし、日も差し出してきそうだ。霧の絶え間が見えないうちにと急いでいた後朝の文も、遅れてしまったのは気がかりだ。帰っていった男も、いつの間に書いたのかと思われる手紙を、萩の露がついたままの枝に付けて届けてあるけれど、この男がいるので使いは差し出すことができない。香のたいそうしみこんだ匂いが、たいそう趣がある。あまりにきまりの悪い明るさになったので、男は立ち去るが、自分が出てきた女の所もこんなふうだろうかと思いやられるのも、おもしろいことだろう。
意訳
夏の明け方を舞台にした、物語のような一場面である。恋人が帰った後も衣をかぶって寝ている女。そこへ、別の女のもとから帰る途中の男が通りかかり、御簾越しにのぞき込む。二人は気のきいた言葉を交わし、男は女の扇を引き寄せようとする。やがて夜が明け、女の恋人からの後朝の文が届くが、使いは差し出しかねている。男は立ち去りながら、自分が出てきた女の部屋も今ごろこんなふうだろうかと思う。恋の後朝の情景を、色や香りまで細やかに描いた、王朝の恋の美しさが凝縮された段である。
語釈・文法注
文法
- 「はたいふもおろかなり」
- 「はた」は、また、やはり。言うまでもなくすばらしい。
- 「おふの下草」
- 「大荒木の森の下草老いぬれば駒もすさめず刈る人もなし」(古今集)の一節か。古歌の一節を口ずさみながら歩く様子。
- 「ほゝに紫の紙はりたる扇」
- 朴(ほお)の木を骨にして、紫の紙を張った扇。
- 「露よりさきなる人のもどかしさに」
- 露より先に(起きて)帰ってしまった人がもどかしくて。男の「名残の朝寝」という言葉に対して、帰っていった恋人のせいだと切り返した。
- 「えさし出でず」
- 使いが(男がいるので)手紙を差し出すことができない。
解説
後朝(きぬぎぬ)の朝を描いた随想的章段で、まるで物語の一場面のように構成されている。登場するのは、恋人が帰った後の女と、別の女のもとから帰る男。二人の間に恋愛関係はないが、機知に富んだ会話を交わすことで、宮廷の男女の洗練された交際のありさまが描かれている。
女の衣の色、男の装束の色、紫の紙を張った扇、移り香など、色彩と香りの描写がきわめて細やかである。最後の、男が「自分の出てきた所もこうだろうか」と思う一文は、恋の情景を鏡のように重ねる、しゃれた結びとなっている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、199–200頁(コマ102–103)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日