枕草子 第32段 類聚的章段
こゝろゆくもの
心が晴れ晴れとして満ち足りるものとして、上手な絵巻、見物帰りの勢いよく走る車、美しい紙に細い筆で書いた手紙、川下りの舟、適度に親しい客の世間話などを挙げる。

- 1こゝろこゝろこころものものもの題
- 2よくよくよくかいかいかいたるたるたる女女おんな繪繪えののの詞詞ことばをかしうをかしうおかしゅうつゞけつゞけつづけててておほかるおほかるおおかる。。。物物もの見見みのののかへさかへさかえさににに乘乘のりりりこぼれこぼれこぼれててて、、、をのこをのこおのこどもどもどもいといといと多多おおくくく牛牛うしよくよくよくやるやるやるものものものゝゝの車車くるま走走はしらせらせらせたるたるたる。。。白白しろくくく淸淸きよげげげなるなるなるみちのくみちのくみちのくがみがみがみにににいといといとほそうほそうほそう書書かくくくべくべくべくはははあらあらあらぬぬぬ筆筆ふでしししててて文文ふみ書書かきききたるたるたる。。。川川かわ舟舟ぶねのののくだりくだりくだりざまざまざま。。。はぐろめはぐろめはぐろめのののよくよくよくつきつきつきたるたるたる。。。にににてうてうちょう多多おおくくくうちうちうちたるたるたる。。。うるはしきうるはしきうるわしき糸糸いとのののねりねりねりあはせあはせあわせぐりぐりぐりしししたるたるたる。。。物物ものよくよくよくいふいふいうおんやうじおんやうじおんようじしししててて河河かわ原原らににに出出いでゝでゝでてすそすそすそのののはらへはらへはらえしししたるたるたる。。。よるよるよるねねねおきおきおきててて飮飮のむむむ水水みず。。。
- 3徒徒つれ然然づれなるなるなるをりをりおりにににいといといとあまりあまりあまり睦睦むつましくしくしくはははあらあらあらずずず、、、疎疎うとくくくもももあらあらあらぬぬぬまらうどまらうどまろうどのののきききててて、、、世世よののの中中なかののの物物ものがたりがたりがたりこのこのこの頃頃ころあるあるあることことことのののをかしきをかしきおかしきもももにくきにくきにくきももも、、、怪怪あやしきしきしきももも、、、これこれこれにににかゝりかゝりかかり、、、かれかれかれにににかゝりかゝりかかり、、、おほやけおほやけおおやけわたくしわたくしわたくしおぼつかなからおぼつかなからおぼつかなからずずず聞聞ききききよきよきよき程程ほどににに語語かたりりりたるたるたるいといといと心心こころゆくゆくゆくこゝちこゝちここちすすす。。。社社やしろ寺寺てらなどなどなどににに詣詣もうでゝでゝでて物物もの申申もうさささするするするににに、、、寺寺てらにににははは法法ほう師師し、、、社社やしろにてにてにてねぎねぎねぎなどなどなどやうやうようのののものものものゝゝの思思おもふふう程程ほどよりよりよりももも過過すぎぎぎててて、、、とゞこほりとゞこほりとどこおりなくなくなく聞聞ききききよくよくよく申申もうしししたるたるたる。。。
現代語訳
心が晴れ晴れして満ち足りるもの。
上手に描いた女絵の詞書を、おもしろく続けて、たくさん書いてあるもの。見物の帰りに、車からこぼれんばかりに乗って、供の男たちが大勢、牛を上手に扱う者が車を走らせているの。白くきれいな陸奥紙に、とても細くは書けそうもない筆で、手紙を書いたとき。川舟の下っていく様子。お歯黒がよくついたとき。調食の遊びで同じ目をたくさん打ったとき。美しい糸を練り合わせて、たぐって巻いたとき。弁の立つ陰陽師に頼んで、河原に出て呪詛の祓えをしたとき。夜、寝起きに飲む水。
所在ないときに、あまり親しすぎもせず、疎遠でもない客が来て、世間の話や、このごろの出来事でおもしろいことも、憎らしいことも、不思議なことも、あれこれにつけて、公私のことをはっきりと、聞きやすい程度に話してくれたのは、たいそう気持ちが晴れ晴れする。神社や寺などに参詣して祈願をしてもらうときに、寺では法師が、神社では禰宜などのような者が、思っていた以上に、よどみなく聞きやすく申し上げてくれたとき。
意訳
「心ゆく」は、心が満ち足りてすっきりすること。美しい絵巻を読み進める楽しさ、勢いよく走る牛車、流れに乗って下る舟、寝起きの一杯の水。どれも、滞りなく思いどおりに事が運ぶときの快さである。ほどよい距離の客がほどよく世間話をしてくれる、という一節には、人づきあいの心地よさについての作者の鋭い感覚が光る。
語釈・文法注
- こゝろゆく
- 心ゆく。気が晴れる、満足する。
- てうばみ
- 調食(ちょうばみ)。双六の一種で、さいころを振って同じ目(重五など)を出すことを競う遊び。
文法
- 「をかしうつゞけておほかる」
- おもしろく続けて、量がたくさんある。
- 「乘りこぼれて」
- 車からこぼれんばかりに大勢乗って。
- 「すそのはらへ」
- 呪詛(すそ)の祓え。人から呪われているのを除くための祓い。
解説
気持ちが晴れ晴れとするものを挙げた類聚的章段である。挙げられた例には、物事が滞りなく、思いどおりに運ぶときの快さという共通点がある。
後半の、ほどよく親しい客との世間話の場面は、作者の人づきあいについての感覚がよく表れている。親しすぎず、疎遠でもない相手が、聞きやすい程度に話してくれる、という条件の細かさが、いかにも枕草子らしい。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、192–193頁(コマ99)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日