枕草子 第31段 類聚的章段
すぎにしかたこひしきもの
過ぎ去った昔が恋しく思われるものとして、枯れた葵、雛遊びの道具、草子の中から出てきた布の切れ端、昔の人の手紙、去年の扇などを挙げる。

- 1すぎすぎすぎにににしししかたかたかたこひしきこひしきこいしきものものもの題
- 2枯枯かれれれたるたるたる葵葵あおい、、、ひゝなひゝなひいなあそびあそびあそびのののてうどてうどちょうど。。。ふたふたふたあゐあゐあいゑびゑびえびぞめぞめぞめなどなどなどのののさいでさいでさいでのののおしおしおしへさへさへされれれててて、、、さうしさうしそうしのののなかなかなかにににありありありけるけるけるををを見見みつけつけつけたるたるたる。。。又又またをりをりおりからからから哀哀あわれなりなりなりししし人人ひとののの文文ふみ、、、雨雨あめなどなどなどののの降降ふりりりてててつれづれつれづれつれづれなるなるなる日日ひさがしさがしさがし出出いでででたるたるたる。。。こぞこぞこぞのののかはほりかはほりかわほり、、、月月つきのののあかきあかきあかき夜夜よ。。。
現代語訳
過ぎ去った昔が恋しく思われるもの。
枯れた葵。雛遊びの道具。二藍や葡萄染などの布の切れ端が、押しつぶされて草子の中にはさまっていたのを見つけたとき。また、その時々にしみじみと心にしみた人の手紙を、雨などが降って所在ない日に探し出したとき。去年の夏の扇。月の明るい夜。
意訳
祭の日に飾った葵が枯れたもの、子どものころの人形遊びの道具、本の間から出てきた昔の衣の切れ端、雨の日に読み返す昔の手紙、去年の扇。ふとしたきっかけでよみがえる過去の記憶を、具体的な物を通して描き出している。最後の「月のあかき夜」は、物ではなく、昔を思い出させる時そのものである。
語釈・文法注
文法
- 「ふたあゐゑびぞめ」
- 二藍(青みがかった紫)と葡萄染(赤みがかった紫)。いずれも衣の色。
- 「さいで」
- 裁ち出(さいで)。布の切れ端。
- 「かはほり」
- 蝙蝠扇(かわほりおうぎ)。夏に使う紙張りの扇。
解説
昔を懐かしく思い出させるものを挙げた類聚的章段である。枯れた葵は四月の賀茂祭の飾り、雛遊びの道具は幼い日の思い出と、それぞれが過ぎた時間を呼び起こす。
「雨などの降りてつれづれなる日」に昔の手紙を探し出す、という場面は、現代でも多くの人が経験するであろう心の動きをとらえており、時代を超えた共感を呼ぶ一節として知られる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、192頁(コマ99)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日