枕草子 第29段 随想的章段
文ことばなめき人
手紙の言葉づかいが無礼な人、使用人に敬語を使う人、人の名を遠慮なく呼ぶ人など、言葉づかいの不快さを論じる。さらに、一人で車に乗って見物する男や、明け方に帰る男のふるまいの良しあしを描き分ける。

- 1文文ふみことばことばことば人人ひとこそこそこそいとゞいとゞいとどにくけれにくけれにくけれ。。。世世よをををなのめなのめなのめににに書書かきききなしなしなしたるたるたる詞詞ことばのののにくきにくきにくきこそこそこそ。。。さるさるさるまじきまじきまじき人人ひとのののもともともとにににあまりあまりあまりかしこまりかしこまりかしこまりたるたるたるももも、、、げにげにげにわろきわろきわろきことことことぞぞぞ。。。されされされどどど我我わがががえええたらたらたらむむんはははことわりことわりことわり、、、人人ひとのののもともともとなるなるなるさへさへさへにくゝにくゝにくくこそこそこそあれあれあれ。。。大大おおかたかたかたさしさしさし向向むかひひいてててもももなめきなめきなめきはははなどなどなどかくかくかくいふいふいうらむらむらんとととかたはらいたしかたはらいたしかたわらいたし。。。ましてましてましてよきよきよき人人ひとなどなどなどをををさささ申申もうすすすものものものははは、、、さるさるさるはははをこをこおこにてにてにていといといとにくしにくしにくし。。。男男おとこしうしうしゅうなどなどなどわろくわろくわろくいふいふいういといといとわろしわろしわろし。。。我我わがががつかふつかふつかうものものものなどなどなど、、、おはするおはするおわする、、、のたまふのたまふのたまうなどなどなどいひいひいいたるたるたるいといといとにくしにくしにくし。。。こゝもとこゝもとここもとににに、、、侍侍はべるるるととといふいふいうもじもじもじをををあらあらあらせせせばばばやややととと聞聞きくくくことことことこそこそこそ多多おおかかかめれめれめれ。。。あいぎやうあいぎやうあいぎょうなくなくなくととと詞詞ことばしししなめきなめきなめきなどなどなどいへいへいえばばば、、、いはいはいわるゝるゝるる人人ひとももも聞聞きくくく人人ひとももも笑笑わらふふう。。。かくかくかく覺覺おぼゆれゆれゆればばばにににややや、、、あまりあまりあまり嘲嘲ちょう哢哢ろうするするするなどなどなどいはいはいわるゝるゝるるまでまでまで、、、あるあるある人人ひともももわろきわろきわろきなるなるなるべしべしべし。。。
- 2殿上人殿上人てんじょうびと宰宰さい相相しょうなどなどなどををを唯唯ただなのるなのるなのる名名なをををいさゝかいさゝかいささかつゝましげつゝましげつつましげならならならずずずいふいふいうははは、、、いといといとかたはかたはかたわなるなるなるををを、、、げにげにげによくよくよくさささいはいはいわずずず。。。女房女房にょうぼうののの局局つぼねなるなるなる人人ひとをををさへさへさへ、、、あのあのあのおもとおもとおもと君君ぎみなどなどなどいへいへいえばばば、、、めづらかめづらかめずらかににに嬉嬉うれしししととと思思おもひひいてててほむるほむるほむる事事ことぞぞぞいみじきいみじきいみじき。。。殿上人殿上人てんじょうびときんだちきんだちきんだちををを御御おまへまへまえよりよりよりほかほかほかにてにてにてはははつかさつかさつかさをををいふいふいう。。。又又また御御お前前まえにてにてにて物物ものをををいふいふいうともともとも、、、きこしめさきこしめさきこしめさむむんにににはははなどなどなどてててかかかははは、、、まろまろまろがががなどなどなどいはいはいわむむん。。。さささいはいはいわざらざらざらむむんにくしにくしにくし。。。かくかくかくいはいはいわむむんにににわろかるわろかるわろかるべきべきべき事事ことかかかははは。。。
- 3ことことことなるなるなる事事ことなきなきなき男男おとこのののひきひきひきいれいれいれ聲聲ごえしししてててえんだちえんだちえんだちたるたるたる。。。墨墨すみつかつかつかぬぬぬ硯硯すずり。。。女房女房にょうぼうののの物物ものゆかしうゆかしうゆかしゅうするするする、、、たゞたゞただなるなるなるだにだにだにいといといとしもしもしも思思おもははわしからしからしからぬぬぬ人人ひとのののにくげにくげにくげごとごとごとしししたるたるたる。。。一一ひと人人り車車くるまににに乘乘のりりりててて物物もの見見みるるる男男おとこ、、、いかなるいかなるいかなるものものものにににかかかあらあらあらむむん、、、やんごとなからやんごとなからやんごとなからずずずともともともわかきわかきわかき男男おとこどもどもどもののの物物ものゆかしうゆかしうゆかしゅう思思おもひひいたるたるたるなどなどなどひきひきひきのせのせのせてててももも見見みよよよかしかしかし。。。すきがけすきがけすきがけににに唯唯ただ一一ひと人人りかくかくかくよひよひよいててて心心こころ一一ひとつつつにににまもりまもりまもり居居いたらたらたらむむんよよよ。。。
- 4曉曉あかつきににに歸歸かえるるるひとひとひとののの、、、よべよべよべおきおきおきししし扇扇おうぎふところふところふところがみがみがみもとむもとむもとむとてとてとて、、、暗暗くらけれけれければばばさぐりさぐりさぐりあてあてあてむむんさぐりさぐりさぐりあてあてあてむむんとととたゝきたゝきたたきもももわたしわたしわたし、、、「「「あやしあやしあやし」」」などなどなどうちうちうちいひいひいいもとめもとめもとめ出出いでゝでゝでて、、、そよそよそよそよそよそよとととふところふところふところにににさしさしさし入入いれれれててて、、、扇扇おうぎひきひきひきひろげひろげひろげてててふたふたふたふたふたふたとととうちうちうちつかひつかひつかいてててまかりまかりまかり申申もうししししししたるたるたる、、、にくしにくしにくしとととはははよよよののの常常つねいといといとあいぎやうあいぎやうあいぎょうなしなしなし。。。おなしおなしおなしごとごとごと夜夜よ深深ふかくくく出出いづるづるずる人人ひとののの烏烏え帽帽ぼう子子しののの緒緒お强强つよくくくゆひゆひゆいたるたるたる、、、さしもさしもさしもかためかためかためずずずともともともありありありぬぬぬべしべしべし。。。やをらやをらやおらさながらさながらさながらさしさしさし入入いれれれたりたりたりともともとも人人ひとのののとがむとがむとがむべきべきべきことことことかかかははは。。。いみじういみじういみじゅうしどけなうしどけなうしどけのうかたくなくかたくなくかたくなくににに、、、直衣直衣のうし狩狩かり衣衣ぎぬなどなどなどゆがみゆがみゆがみたりたりたりともともとも、、、誰誰たれかかかははは見見み知知しりりりててて笑笑わらひひいそしりそしりそしりもももせせせむむん。。。とととするするする人人ひとはははなほなほなお曉曉あかつきのののありさまありさまありさまこそこそこそをかしくをかしくおかしくもももあるあるあるべけれべけれべけれ。。。わりなくわりなくわりなくしぶしぶしぶしぶしぶしぶににに起起おきききがたげがたげがたげなるなるなるをををしひしひしいてててそゝのかしそゝのかしそそのかし、、、「「「あけあけあけすぎすぎすぎぬぬぬ、、、あなあなあな見見み苦苦ぐるししし」」」などなどなどいはいはいわれれれてててうちうちうち歎歎なげくくくけしきけしきけしきももも、、、げにげにげにあかあかあかずずず物物ものうきうきうきにににしもしもしもあらあらあらむむんかしかしかしととと覺覺おぼゆゆゆ。。。指指さし貫貫ぬきなどなどなどももも居居いながらながらながら着着きもももやらやらやらずずず、、、まづまづまずさしさしさしよりよりよりてててよひとよひとよいと夜夜よいひいひいいつるつるつることことことののの殘殘のこりりりををを女女おんなののの耳耳みみにににいひいひいい入入いれれれ、、、何何なにわざわざわざすすすとととなけれなけれなけれどどど帶帶おびなどなどなどをををばばばゆふゆふゆうやうやうようなりなりなりかしかしかし。。。格格こう子子しあけあけあけ、、、妻妻つま戶戶どあるあるあるところところところはははやがてやがてやがてもろとももろとももろともににに出出いででで行行ゆききき、、、晝晝ひるののの程程ほどのののおぼつかなからおぼつかなからおぼつかなからむむん事事ことなどなどなどもももいひいひいいいでいでいでにににすべりすべりすべり出出いでででなななむむんははは、、、見見み送送おくららられれれててて名名な殘殘ごりもももをかしかりをかしかりおかしかりぬぬぬべしべしべし。。。なごりなごりなごりももも出出いで所所どころありありあり。。。いといといときはやかきはやかきわやかににに起起おきききてててひろめきひろめきひろめきたちたちたちててて指指さし貫貫ぬきののの腰腰こしつよくつよくつよくひきひきひきゆひゆひゆい、、、直衣直衣のうし、、、うへうへうえのののきぬきぬきぬ、、、狩狩かり衣衣ぎぬももも袖袖そでかいかいかいまくりまくりまくり、、、よろづよろづよろずさしさしさし入入いれれれ、、、帶帶おび强强つよくくくゆふゆふゆうにくしにくしにくし。。。明明あけけけててて出出いでででぬるぬるぬる所所ところたてたてたてぬぬぬ人人ひといといといとにくしにくしにくし。。。
現代語訳
手紙の言葉づかいが無礼な人は、本当にいっそう憎らしい。世間をいいかげんに見くびったような書き方の言葉は憎らしいものだ。そうでもない人のところに、あまりかしこまって書くのも、確かによくないことだ。けれども、自分が受け取ったのならまだしも、人のところに来た手紙でさえ憎らしい。だいたい面と向かっても、無礼な言い方は、どうしてこんなふうに言うのだろうと、聞いていていたたまれない。まして立派な方などをそんなふうに申し上げる者は、実に愚かで、たいそう憎らしい。夫のことなどを悪く言うのは、たいそうよくない。自分の使っている者などについて、「いらっしゃる」「おっしゃる」などと敬語で言うのは、たいそう憎らしい。こういうところで「侍る」という言葉を使わせたいものだと思って聞くことが多いようだ。「愛想がない」「言葉がぞんざいだ」などと言うと、言われる人も聞く人も笑う。そんなふうに思うからか、「ひどく人をばかにする」などと言われるまでなのは、本人もよくないのだろう。
殿上人や宰相などを、ただ名乗りの名そのままに少しも遠慮せずに言うのは、たいそう見苦しいのに、実際にはよくそうは言わない。女房の局にいる者のことさえ、「あのおもと」「君」などと言えば、めったにないことでうれしいと思ってほめることは、たいへんなものだ。殿上人や公達を、帝や中宮様の御前以外では官職名で呼ぶ。また御前で物を言うにしても、お聞きになるときには、どうして自分のことを「まろ」などと言うだろうか。そう言わないのは憎らしい。こう言ったからといって、何の不都合があろうか。
たいしたこともない男が、作り声をして気取っているの。墨のつかない硯。女房が何でも知りたがるの。ふだんでさえあまり好ましく思わない人が、憎らしいことをしたの。一人で車に乗って見物する男は、いったいどういう人なのだろう。身分が高くなくても、若い男たちで見物したがっている者などを、乗せてやって見ればよいのに。すき間から透かして、ただ一人でこうして見物して、自分ひとりの心で見つめているのだろうよ。
明け方に帰る男が、昨夜置いた扇や懐紙を探そうとして、暗いので手探りで探り当てよう探り当てようと、あたりをたたき回り、「おかしいな」などと言いながら探し出して、そよそよと懐に差し入れて、扇を広げてぱたぱたとあおいで、退出のあいさつをするのは、憎らしいと言うのも月並みなほど、たいそう興ざめだ。同じように夜深く出て行く男が、烏帽子の緒を強く結んでいるのは、そんなに固く結ばなくてもよいだろう。そっとそのまま頭に差し入れて帰っても、誰がとがめるだろうか。ひどくだらしなく、みっともなく、直衣や狩衣などがゆがんでいても、誰が見知って笑ったり悪口を言ったりするだろうか。男というものは、やはり明け方の様子こそ、風情があるべきなのだ。どうにも気が進まず、なかなか起きにくそうなのを、女が無理にせきたてて、「すっかり明けてしまいましたよ。まあみっともない」などと言われてため息をつく様子も、なるほど飽き足りず、帰るのがつらいのだろうと思われる。指貫なども座ったまま穿こうともせず、まず女のそばに寄って、昨夜一晩話したことの残りを女の耳にささやき入れ、何をするというのでもないのに、いつのまにか帯なども結んでいるようだ。格子を上げ、妻戸のある所では、そのまま女と一緒に出て行って、昼の間の気がかりなことなども言いながらそっと出て行くのは、見送る女のほうも名残惜しくて趣があるだろう。名残というものも、出て行き方によるのだ。ひどくきびきびと起きて、ばたばたと立ち回り、指貫の腰紐を強く結び、直衣や袍、狩衣も袖をまくり上げて、何もかもさっさと差し入れて、帯を強く結ぶのは憎らしい。明け方に出て行った所の戸を閉めない人は、たいそう憎らしい。
意訳
作者は言葉づかいに厳しい。無礼な手紙、目上の人を呼び捨てにする人、逆に自分の使用人に敬語を使う人。言葉の使い方ひとつで、その人の品性が見えてしまうと言う。後半は男性のふるまいへの注文である。一人で牛車を占領して見物する男は、若者を乗せてやればいいのに。そして夜明けに女のもとを去るときは、手早く身支度をして出て行くのではなく、名残を惜しみながらぐずぐずと女にささやき、ゆっくり帰っていくのが望ましい。恋の作法にまで目を光らせる、作者らしい理想の男性像が語られている。
語釈・文法注
- なめき
- 「なめし」の連体形。無礼だ、ぶしつけだ。
文法
- 「世をなのめに書きなしたる」
- 世間をいいかげんに扱った書き方をした。「なのめなり」は、いいかげんだ。
- 「さるはをこにて」
- 実のところは愚かで。「をこ」は愚かなこと。
- 「侍るといふもじをあらせばや」
- 「侍る」という丁寧語を使わせたい。使用人について話すときは「侍る」で十分なのに、尊敬語を使うのは誤りだ、の意。
- 「まろがなどいはむ」
- 「まろ」は自称の代名詞。御前で自分を「まろ」と言うのは無礼である。
- 「なごりも出所あり」
- 名残の深さも、出て行き方による。
解説
言葉づかいへの鋭い感覚が表れた段で、身分や場面に応じた敬語の使い分けについての作者の考えがよくわかる。当時の宮廷社会では、言葉の誤りはそのまま教養や品性の欠如とみなされた。
後半の「暁に帰る人」の描写は、後朝(きぬぎぬ)の別れの作法を論じたものとして名高い。手早く身支度を整えてさっさと帰る男を退け、名残を惜しんでぐずぐずと女にささやく男を理想とするところに、恋愛の情趣を重んじる平安貴族の美意識が表れている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、190–192頁(コマ98–99)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日