枕草子 第16段 類聚的章段
市は
市の名を挙げ、とりわけ大和の椿市は長谷寺に参詣する人が必ず泊まるので、観音のご縁があるのだろうと格別に思われる、と述べる。

現代語訳
市は。
辰の市。椿市は、大和にたくさんある市の中で、長谷寺に参詣する人が必ずそこに泊まるので、観音様のご縁があるのだろうかと、格別な気持ちがするのである。おふさの市、しかまの市、飛鳥の市。
意訳
市の名を挙げるなかで、作者が足を止めるのは大和の椿市である。長谷寺の観音へ詣でる人々が必ず宿をとる場所なので、そこにも観音のご縁があるように感じられる、という信仰の心がのぞく。
語釈・文法注
- つばいち
- 椿市。大和国の市で、長谷寺への参詣路にあたり、参詣者の宿泊地としてにぎわった。
文法
- 「御えんあるにや」
- 「えん」は縁。観音のご縁があるからだろうか。「にや」の後に「あらむ」が省略されている。
解説
市の名を挙げる短い段。長谷寺の観音は平安時代の女性たちの信仰を集め、『源氏物語』の玉鬘も椿市で右近にめぐりあう。そうした物語の舞台としての椿市の印象も、作者の心にあったかもしれない。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、179頁(コマ92)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日