枕草子 第11段 随想的章段
よろこび奏する
任官のお礼を帝に申し上げる「よろこび申し」の儀礼で、下襲の裾を後ろに長く引き、笏を手に御前に向かって拝舞する様子をおもしろいとする短い段。

- 1よろこびよろこびよろこび奏奏そうこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。うしろうしろうしろをををまかせまかせまかせてててとりとりとりててて、、、御御お前前まえののの方方かたににに向向むかひひいてててたてるたてるたてるををを拜拜はいししし舞舞ぶ踏踏とうしししさわぐさわぐさわぐよよよ。。。
現代語訳
任官のお礼を帝に申し上げるのは、おもしろい。下襲の裾を後ろに長く引いて、笏を手に取って、帝の御前の方に向かって立っているのが、拝礼して舞踏の礼をして、騒がしく動き回ることよ。
意訳
新しく官職を得た人が帝にお礼を申し上げる儀式は見ものだ。長い裾を後ろに引きずり、笏を持ってかしこまり、拝礼や舞踏の所作をせわしなくくり返す。晴れがましさとぎこちなさの入りまじった姿を、作者はおもしろがって眺めている。
語釈・文法注
- よろこび奏する
- 任官や昇進のお礼を天皇に申し上げること。「慶び申し」とも言う。
- しやく
- 笏。束帯のときに右手に持つ細長い板。
文法
- 「うしろをまかせて」
- 下襲の裾(後ろに長く引く部分)を後ろに引くにまかせて、の意と解される。
- 「拜し舞踏し」
- 拝舞。両手を左右に広げ、袖を振るなどして身をかがめる、感謝を表す正式な礼。
解説
正月の除目の後などに行われた任官のお礼の儀を描く、ごく短い段である。前の段の節日の話題から、宮中の儀礼の一場面へと移っている。
末尾の「さわぐよ」には、厳粛であるはずの儀礼が、見る側からはせわしない身振りの連続に見えるという、作者のややおどけた観察がこめられている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、178頁(コマ92)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日