古典ライブラリー

枕草子 第10段 類聚的章段

正月一日、三月三日は

正月一日・三月三日・五月五日・七月七日・九月九日の五つの節日について、それぞれにふさわしい空模様を挙げる。

重陽の節句に寄せる情景。庭の菊にかぶせた綿を、女房がそっと取り上げている。
重陽の節句に寄せる情景。庭の菊にかぶせた綿を、女房がそっと取り上げている。
  1. 1正月しやうぐわつ正月しやうぐわつしょうがつ一日ついたち一日ついたちついたち、、、三月さんぐわつ三月さんぐわつさんがつ三日みか三日みかみかはははいといといとうらゝかうらゝかうららかなるなるなる。。。五月ごぐわつ五月ごぐわつごがつ五日いつか五日いつかいつかはははくもりくもりくもりくらしくらしくらしたるたるたる。。。七月しちぐわつ七月しちぐわつしちがつ七日なぬか七日なぬかなぬかはははくもりくもりくもり、、、夕ゆふ夕ゆふゆうがたがたがたははは晴は晴ははれれれたるたるたる空そら空そらそらににに月つき月つきつきいといといとあかくあかくあかく、、、星ほし星ほしほしのののすがたすがたすがた見み見みみえええたるたるたる。。。九月くぐわつ九月くぐわつくがつ九日ここのか九日ここのかここのかはははあかつきあかつきあかつきがたがたがたよりよりより雨あめ雨あめあめすこしすこしすこし降ふ降ふふりりりててて菊きく菊きくきくののの露つゆ露つゆつゆもももこちたくこちたくこちたくそぼちそぼちそぼち、、、おほひおほひおおいたるたるたるなどなどなどもももいたくいたくいたくぬれぬれぬれ、、、うつしうつしうつしののの香か香かかももももてもてもてはやさはやさはやされれれたるたるたる。。。つとめてつとめてつとめてはははやみやみやみにににたれたれたれどどどなほなほなお曇くも曇くもくもりりりてててやゝやゝややもももすれすれすればばば降ふ降ふふりりり落お落おおちちちぬぬぬべくべくべく見み見みみえええたるたるたるもももをかしをかしおかし。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

正月一日、三月三日は、たいそううららかに晴れているのがよい。五月五日は一日じゅう曇っているのがよい。七月七日は、昼は曇っていて、夕方には晴れた空に月がたいそう明るく、星の姿が見えるのがよい。九月九日は、明け方から雨が少し降って、菊の露もたっぷりと濡れ、菊にかぶせた綿などもひどく濡れて、移った香りもいっそう引き立っているのがよい。翌朝は雨がやんでしまっているけれど、まだ曇っていて、ややもすれば降り出しそうに見えるのも、趣がある。

意訳

一年の節日には、それぞれ似合いの空模様がある。正月と桃の節句はうららかな晴れ、端午の節句は曇り、七夕は夕方に晴れて星が見えること、重陽は菊の露を濃くする朝の雨。作者は行事そのものより、その日の天気と光の具合に美しさを見いだしている。

語釈・文法注

おほひたる綿
着せ綿。重陽の節句の前夜、菊の花に真綿をかぶせて露と香りを移し、翌朝その綿で体をぬぐうと老いを払うとされた。

文法

「くもりくらしたる」
一日じゅう曇っている。「くらす」は、日が暮れるまで…し続ける。
「こちたく」
「こちたし」の連用形。量が多い、おびただしい。
「やゝもすれば」
どうかすると、ともすれば。

解説

五つの節日(五節句)を並べ、それぞれにふさわしい天候を挙げる短い段である。七月七日に「夕がたは晴れたる」を求めるのは、七夕の星合いが見えるように、という願いにかなうからである。

九月九日の重陽の朝の描写は、雨と露、綿と菊の香りが重なりあって、とりわけ細やかである。節日を天気の側からとらえる発想は、冒頭の「春は曙」と同じく、時と自然の取り合わせを見きわめる作者の感覚によっている。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、177–178頁(コマ91–92)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日