枕草子 第4段 随想的章段
祭のころ
四月の賀茂祭のころ、若葉の木々や忍び音のほととぎす、祭の装束の支度に行き交う人々、晴れ着の準備にはしゃぐ子どもたちなど、祭を前にした都の浮き立つ様子を描く。

- 1のののころころころはははいみじういみじういみじゅうをかしきをかしきおかしき。。。木々木々きぎのののこのこのこの葉葉はまだまだまだしげうしげうしぎょうはははなうなうのうてててわかやかわかやかわかやかににに靑靑あおみみみたるたるたるににに、、、霞霞かすみももも霧霧きりもももへだてへだてへだてぬぬぬ空空そらののの景景けし色色きのののなになになにとととなくなくなくそゞろそゞろそぞろにににをかしきをかしきおかしきににに、、、少少すこししし曇曇くもりりりたるたるたる夕夕ゆうつつつかたかたかた、、、よるよるよるなどなどなど忍忍しのびびびたるたるたる杜鵑杜鵑ほととぎすのののとほうとほうとおうそらそらそら耳耳みみかかかととと覺覺おぼゆるゆるゆるまでまでまでたどたどしきたどたどしきたどたどしきををを聞聞ききききつけつけつけたらたらたらむむん、、、何何なにごゝちごゝちごこちかかかはははせせせむむん。。。祭祭まつり近近ちかくくくなりなりなりててて靑靑あお朽朽くち葉葉ば一藍一藍ひとあいなどなどなどのののものものものどもどもどもおしおしおしまきまきまきつゝつゝつつ、、、細細ほそ櫃櫃びつのののふたふたふたににに入入いれれれ、、、紙紙かみなどなどなどにににけしきけしきけしきばかりばかりばかり包包つつみみみててて行行ゆきききちがひちがひちがいもてもてもてありくありくありくこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。すそごすそごすそご、、、むらごむらごむらご、、、まきまきまきぞめぞめぞめなどなどなど常常つねよりよりよりもももをかしうをかしうおかしゅう見見みゆゆゆ。。。わらはべわらはべわらわべのののかしらかしらかしらばかりばかりばかり洗洗あらひひいつくろひつくろひつくろいててて、、、なりなりなりははは皆皆みななえなえなえほころびほころびほころび、、、うちうちうち亂亂みだれれれかゝりかゝりかかりたるたるたるもももあるあるあるががが、、、けいしけいしけいし、、、くつくつくつなどなどなどののの緒緒おすげすげすげさせさせさせ、、、裏裏うらをををさせさせさせなどなどなどもてもてもてさわぎさわぎさわぎ、、、いつしかいつしかいつしかそのそのその日日ひにににならならならむむんととと急急いそぎぎぎ走走はしりりりありくありくありくもももをかしをかしおかし。。。あやしうあやしうあやしゅう踊踊おどりりりてててありくありくありくものものものどもどもどものののさうぞきさうぞきそうぞきたてたてたてつれつれつればばば、、、いみじくいみじくいみじくちやうざちやうざちょうざととといふいふいう法法ほう師師しなどなどなどのののやうやうようににに、、、ねりねりねりさまよふさまよふさまようこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。ほどほどほどほどほどほどにににつけつけつけててて親親おやをばをばをばののの女女おんな姉姉あねなどなどなどのののともともともしししててて、、、つくろひつくろひつくろいありくありくありくもももをかしをかしおかし。。。
現代語訳
賀茂祭のころは、たいそうおもしろい。木々の木の葉がまだそれほど茂ってはおらず、若々しく青みがかっているところに、霞も霧も隔てない空の様子が、なんということもなくそぞろに趣深いうえに、少し曇っている夕方や夜などに、忍び音に鳴くほととぎすが、遠くで、空耳かと思われるほどかすかに鳴くのを聞きつけたとしたら、どんな気持ちがすることだろう。祭が近くなって、青朽葉や二藍などの布地を巻いては細櫃の蓋に入れ、紙などにほんの形ばかり包んで、行き来して持ち歩いているのはおもしろい。裾濃、斑濃、巻染などの染め物も、いつもよりおもしろく見える。子どもたちが、頭だけは洗って整えたものの、身なりはみなよれよれにほころび、着崩れているのもいるが、屐子や沓などの緒をすげさせ、裏を張らせたりして大騒ぎし、早くその日にならないかと急いで走り回っているのもおもしろい。妙に跳ね回っている子どもたちが、祭の当日に装束を着飾ってしまうと、たいそう仰々しい定者という法師などのように、もったいぶって練り歩いているのはおもしろい。身分に応じて、親やおば、姉などが付き添って、子どもの身なりを整えながら歩き回っているのもおもしろい。
意訳
初夏の賀茂祭のころ、都全体が浮き立つ。若葉の色、かすみのない空、遠くかすかに聞こえるほととぎす。人々は祭の装束にする布を大事そうに包んで行き来し、子どもたちは晴れ着の履物を整えさせて、待ちきれずに走り回る。ふだんは跳ね回っている子が、当日は装束を着て法師のようにすまして歩くのもおかしい。作者は、祭そのものよりも、祭を待つ人々の気持ちの高まりをとらえている。
語釈・文法注
- 祭
- 平安時代に単に「祭」と言えば、四月中の酉の日に行われた賀茂神社の祭(賀茂祭、葵祭)を指す。
文法
- 「何ごゝちかはせむ」
- 反語。どんな気持ちがするだろうか(言いようもないほどすばらしい)。
- 「靑朽葉」「一藍」
- いずれも装束の色目。青朽葉は青みのある朽葉色、一藍(二藍)は藍と紅で染めた紫がかった色。
- 「すそご、むらご、まきぞめ」
- 染め方の名。裾濃は裾ほど濃く、斑濃は濃淡をまだらに、巻染は布を巻いて絞り染めにしたもの。
- 「ちやうざ」
- 定者。法会の行列で香炉を持って先導する役の僧。もったいぶって歩くさまのたとえ。
解説
正月、三月三日に続き、四月の賀茂祭のころを描く。ほととぎすの初音を待つのは和歌の伝統的な主題だが、作者はそれを「空耳か」と思うほどかすかな声として描き、聞く者の気持ちの昂ぶりに焦点を当てている。
後半は、祭の支度に浮かれる都の人々、とりわけ子どもたちの描写である。ふだんの腕白ぶりと、晴れ着を着たときのすまし顔との落差をおもしろがる視線には、作者のユーモアがよく表れている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、171–172頁(コマ88–89)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日