枕草子 第3段 随想的章段
三月三日
三月三日の上巳の節句のころ、うららかな日差しの中に咲き始めた桃の花や芽吹いた柳、花瓶に挿した長い桜の枝と、その前で語らう貴公子たちの姿を描く。

- 1三月三月さんがつ三日三日みか、、、うらうらうらうらうらうらとととのどかのどかのどかににに照照てりりりたるたるたる。。。桃桃ももののの花花はなののの今今いま咲咲さきききはじむるはじむるはじむる。。。柳柳やなぎなどなどなどいといといとをかしきをかしきおかしきこそこそこそ更更さらなれなれなれ。。。それそれそれもももまだまだまだにににこもりこもりこもりたるたるたるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。ひろごりひろごりひろごりたるたるたるはははにくしにくしにくし。。。花花はなももも散散ちりりりたるたるたるのちのちのちはははぞぞぞ見見みゆるゆるゆる。。。
- 2おもしろくおもしろくおもしろく咲咲さきききたるたるたる櫻櫻さくらををを長長ながくくく折折おりりりててて、、、大大おおきききなるなるなる花花はながめがめがめにににさしさしさしたるたるたるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。櫻櫻さくらのののににに出出いだししし袿袿うちきしししてててまらうどまらうどまろうどにににもももあれあれあれ、、、御御おおんせうとせうとしょうとののの君達君達きんだちにににもももあれあれあれ、、、そこそこそこ近近ちかくくく居居いててて物物ものなどなどなどうちうちうち言言いひひいたるたるたるいといといとをかしをかしおかし。。。そのそのそのわたりわたりわたりににに鳥鳥とり蟲蟲むしのののひたひひたひひたいつきつきつきいといといと美美うつくしうくしうくしゅうてててとびとびとびありくありくありくいといといとをかしをかしおかし。。。
現代語訳
三月三日は、うららかにのどかに日が照っているのがよい。桃の花が今咲き始めるころ。柳などがたいそう趣深いのは言うまでもない。それも、まだ芽が繭にこもったように小さいのがおもしろい。葉が広がってしまったのは憎らしい。花も散ってしまった後は、いやな感じに見える。
美しく咲いている桜を長く折って、大きな花瓶に挿してあるのはおもしろい。桜襲の直衣に出袿をして、客人であっても、中宮様のご兄弟の君達であっても、そのそば近くに座って何か話をしているのは、たいそうおもしろい。そのあたりで、小鳥や虫が、額の形もたいそうかわいらしく飛び回っているのも、たいそうおもしろい。
意訳
桃の節句のころの宮中の春。咲き始めの桃、まだ芽の小さい柳がいちばんよく、盛りを過ぎたものは見たくない。大きな花瓶に長い桜の枝を挿し、その前で桜色の装いの貴公子が女房たちと語らう。そこへ小鳥や虫までが飛び交う。作者は、満開よりも咲き初めを好み、花と人とがつくる華やかな一場面を楽しんでいる。
語釈・文法注
- まゆ
- 繭。柳の芽が、まだ繭にこもったように小さく巻いているさま。
- うたて
- いやに、不快に。好ましくない方向へ程度が進むさまを表す副詞。
- 直衣
- 貴族の男性の平服。「櫻の直衣」は表が白、裏が赤(紫)の桜襲の直衣で、春の装い。
文法
- 「更なれ」(いとをかしきこそ更なれ)
- 形容動詞「さらなり」の已然形。係助詞「こそ」の結び。言うまでもない。
- 「出し袿」
- 直衣の裾から、下に着た袿(うちき)の端を出して見せる着こなし。華やかな装い。
- 「御せうと」
- 兄弟。ここでは中宮定子の兄弟、藤原伊周・隆家らを指すと考えられる。
解説
三月三日は上巳の節句で、桃の花と結びつく。作者は桃や柳を挙げながら、花の盛りよりも「咲きはじむる」「まだまゆにこもりたる」状態を好み、広がった柳の葉や散った花を「にくし」「うたて」と退ける。ものの最も美しい瞬間を見極めようとする姿勢がよく表れている。
後半は、大きな花瓶に挿した桜と、その前で語らう貴公子という宮廷の一場面である。中宮定子の後宮では、伊周ら定子の兄弟が出入りし、華やかな語らいの場となっていた。日記的章段で描かれるそうした場面の雰囲気が、ここにも先取りされている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、171頁(コマ88)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日