古今和歌集 巻第十八 雑歌下 970番
忘れては
ふと現実を忘れては、夢かと思う。思ったでしょうか、雪を踏み分けてあなたにお会いすることになろうとは。
場面イラスト(準備中)
- 1惟喬惟喬これたかのみこののみこののみこの許許もとにまかりにまかりにまかり通通かよひけるひけるひけるをををかしらおろしてかしらおろしてかしらおろして小野小野おのといふといふという所所ところににに侍侍はべりけるにりけるにりけるに正月正月むつきにとぶらはむとてまかりたりけるににとぶらはむとてまかりたりけるににとぶらわむとてまかりたりけるに比叡比叡ひえののの山山やまののの麓麓ふもとなりければなりければなりければ雪雪ゆきいといといと深深ふかかりけりしひてかりけりしひてかりけりしいて彼彼かのむろにまかりいたりてのむろにまかりいたりてのむろにまかりいたりてをををがみけるにがみけるにがみけるに徒然徒然つれずれとしていととしていととしていと物物もの悲悲かなしくてしくてしくて歸歸かえりまうできてよみてりまうできてよみてりもうできてよみて送送おくりけるりけるりける詞書
- 2忘忘わすれてれてれてははは初句
- 3夢夢ゆめかとぞかとぞかとぞ思思おもふふう二句
- 4おもひきやおもひきやおもいきや三句
- 5雪雪ゆきふみわけてふみわけてふみわけて四句
- 6君君きみををを見見みむとむとむとははは結句
現代語訳
〔詞書〕惟喬親王のもとに通い仕えていたが、親王が出家して小野という所にいらっしゃったので、正月にお見舞いしようと出かけたところ、比叡山の麓なので雪がたいそう深かった。無理をしてその庵室に行き着いて拝謁すると、所在なくひどく物悲しそうなので、帰ってきて詠んで送った歌。
ふと現実を忘れては、夢かと思う。思ったでしょうか、雪を踏み分けてあなたにお会いすることになろうとは。
意訳
出家して雪深い山里に住む親王を訪ね、その変わり果てた境遇が夢のようだ、と悲しむ。
語釈・文法注
- 忘れては
- 現実を忘れては。
- 思ひきや
- 思っただろうか。
和歌
- 作者
- 在原業平(ありわらのなりひら) 825–880
平城天皇の皇子阿保親王の子。右近衛権中将などを務め、「在五中将」と呼ばれた。仮名序は「その心餘りて詞たらず」と評する。『伊勢物語』の主人公「昔男」のモデルとされる。六歌仙・三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第十八・雑歌下・970番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「惟喬のみこの許にまかり通ひけるをかしらおろして小野といふ所に侍りけるに正月にとぶらはむとてまかりたりけるに比叡の山の麓なりければ雪いと深かりけりしひて彼のむろにまかりいたりてをがみけるに徒然としていと物悲しくて歸りまうできてよみて送りける」(惟喬親王のもとに通い仕えていたが、親王が出家して小野という所にいらっしゃったので、正月にお見舞いしようと出かけたところ、比叡山の麓なので雪がたいそう深かった。無理をしてその庵室に行き着いて拝謁すると、所在なくひどく物悲しそうなので、帰ってきて詠んで送った歌)。
修辞
- 倒置
- 「思ひきや…とは」。
解説
在原業平の歌。『伊勢物語』第八十三段にも見える。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、175頁(コマ101)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日