古今和歌集 巻第十七 雑歌上 884番
あかなくに
まだ満ち足りないのに、早くも月が隠れてしまうのか。山の端が逃げて、月を入れないでほしい。
場面イラスト(準備中)
- 1惟喬惟喬これたかのみこののみこののみこの狩狩かりしけるしけるしける供供ともにまかりてやどりににまかりてやどりににまかりてやどりに歸歸かえりてりてりて夜夜よひとよひとよひとよ酒酒さけをををのみのみのみ物語物語ものがたりをををしけるにしけるにしけるに十一日十一日じゅういちにちののの月月つきももも隱隱かくれなむとしけるれなむとしけるれなむとしける折折おにみこにみこにみこ醉醉えひてひてひて内内うちへへへ入入いりなむとしければよみりなむとしければよみりなむとしければよみ侍侍はべりけるりけるりける詞書
- 2あかなくにあかなくにあかなくに初句
- 3まだきもまだきもまだきも月月つきののの二句
- 4隱隱かくるるかるるかるるか三句
- 5山山やまののの端端はにげてにげてにげて四句
- 6入入いれずもあらなむれずもあらなむれずもあらなむ結句
現代語訳
〔詞書〕惟喬親王が狩りをなさったお供に行って、宿に帰って一晩中酒を飲み話をしていたが、十一日の月も隠れようとした時に、親王が酔って寝所に入ろうとなさったので詠みました歌。
まだ満ち足りないのに、早くも月が隠れてしまうのか。山の端が逃げて、月を入れないでほしい。
意訳
寝所に入ろうとする親王を沈む月にたとえ、もう少し一緒にいてほしいと引きとめる。
語釈・文法注
- まだきも
- 早くも。
- 山の端にげて
- 山の稜線が逃げて。
和歌
- 作者
- 在原業平(ありわらのなりひら) 825–880
平城天皇の皇子阿保親王の子。右近衛権中将などを務め、「在五中将」と呼ばれた。仮名序は「その心餘りて詞たらず」と評する。『伊勢物語』の主人公「昔男」のモデルとされる。六歌仙・三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第十七・雑歌上・884番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「惟喬のみこの狩しける供にまかりてやどりに歸りて夜ひとよ酒をのみ物語をしけるに十一日の月も隱れなむとしける折にみこ醉ひて内へ入りなむとしければよみ侍りける」(惟喬親王が狩りをなさったお供に行って、宿に帰って一晩中酒を飲み話をしていたが、十一日の月も隠れようとした時に、親王が酔って寝所に入ろうとなさったので詠みました歌)。
修辞
- 寓意
- 月に惟喬親王を重ねる。
解説
在原業平の歌。『伊勢物語』第八十二段にも見える。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、159〜160頁(コマ93)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日