古今和歌集 巻第九 羇旅歌 412番
北へゆく
北へ帰る雁が鳴いている。連れて来た数は足りないままで、帰っていくようだ。

- 1題題だいしらずしらずしらず詞書
- 2北北きたへへへゆくゆくゆく初句
- 3雁雁かりぞぞぞ鳴鳴なくなるくなるくなる二句
- 4つれてこしつれてこしつれてこし三句
- 5數數かずはははたらでぞたらでぞたらでぞ四句
- 6歸歸かえるべらなるるべらなるるべらなる結句
- 7此歌此歌このうたはははあるあるある人人ひと男男おとこ女女おんなもろともにもろともにもろともに人人ひとののの國國くにへへへまかりけりまかりけりまかりけり男男おとこまかりいたりてまかりいたりてまかりいたりて即即すなわみまかりにければみまかりにければみまかりにければ女女おんなひとりひとりひとり京京きょうヘヘヘ歸歸かえるるる道道みちににに雁雁かりののの鳴鳴なきけるきけるきけるををを聞聞ききてよめるとなむいふきてよめるとなむいふきてよめるとなむいう左注
現代語訳
北へ帰る雁が鳴いている。連れて来た数は足りないままで、帰っていくようだ。
〔左注〕この歌は、ある人が、男女一緒に地方へ下ったところ、男は着いてすぐに亡くなってしまったので、女がひとり京へ帰る道で、雁が鳴いたのを聞いて詠んだものだという。
意訳
春に北へ帰る雁の列の数が、来た時より減っている。左注によれば、夫を旅先で亡くした妻が、一人で帰る道で詠んだという。
語釈・文法注
- つれてこし
- 連れて来た。
- たらでぞ
- 足りないで。
和歌
- 作者
- 読人しらず(よみびとしらず)
作者の名が伝わらない歌。『古今和歌集』の約四割を占め、撰者の時代より古い歌や、民謡・宴席で歌い継がれた歌、身分の低い人や女性の歌などを含む。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第九・羇旅歌・412番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 題しらず(詠まれた事情は伝わらない)。
修辞
- 寓意
- 数の減った雁の列に、夫を失った自分を重ねる。
解説
左注が詠作事情を伝える。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、79頁(コマ53)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日