古典ライブラリー

古今和歌集 巻第一 春歌上 63番

今日こずば

在原業平(ありわらのなりひら)

今日私が来なかったら、明日には花は雪のように散り降っていただろう。たとえ消えずに残っていても、それを花と見ることができようか。

今日訪れたからこそ見られた桜を前に、返歌を交わす在原業平。明日には雪のように散るかもしれない花の情景。
今日訪れたからこそ見られた桜を前に、返歌を交わす在原業平。明日には雪のように散るかもしれない花の情景。
作者
業平朝臣(在原業平)
  1. 1かへしかへしかへし詞書
  2. 2今日けふ今日けふきょうこずばこずばこずば初句
  3. 3明日あす明日あすあすははは雪ゆき雪ゆきゆきとぞとぞとぞ二句
  4. 4降ふ降ふふりなましりなましりなまし三句
  5. 5消き消ききえずえずえずははは有あ有あありともりともりとも四句
  6. 6花はな花はなはなととと見み見みみましやましやましや結句

引用の仕方

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現代語訳

〔詞書〕返歌。

今日私が来なかったら、明日には花は雪のように散り降っていただろう。たとえ消えずに残っていても、それを花と見ることができようか。

意訳

前の歌に対し、自分が今日来たからこそ花を見られたのだ、明日では雪のように散っていただろう、と切り返す。「あだなり」と言われた桜の性質を逆手にとり、自分の訪問を誇る。

語釈・文法注

こずば
来なかったならば。
降りなまし
「な」は強意、「まし」は反実仮想。
見ましや
「や」は反語。

和歌

作者
在原業平(ありわらのなりひら) 825–880
平城天皇の皇子阿保親王の子。右近衛権中将などを務め、「在五中将」と呼ばれた。仮名序は「その心餘りて詞たらず」と評する。『伊勢物語』の主人公「昔男」のモデルとされる。六歌仙・三十六歌仙の一人。
出典
『古今和歌集』巻第一・春歌上・63番
歌体
短歌
状況
詞書「かへし」(返歌)。

修辞

見立て
散る花を雪に見立てる。
反実仮想
「こずば…まし」。

解説

在原業平の返歌。相手の皮肉を巧みにかわす、贈答歌の機知の典型である。

関連

出典

底本
有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、11頁(コマ19)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日