古典ライブラリー

古今和歌集 巻第一 春歌上 47番

散ると見て

素性法師(そせいほうし)

散ってしまったと見て、そのままあきらめていればよいのに、梅の花は困ったことに、香だけが袖に残っていることだ。

散ってしまった梅を見ながら、袖に残る香を惜しむ素性法師。失われた花と消えない余韻を重ねた情景。
散ってしまった梅を見ながら、袖に残る香を惜しむ素性法師。失われた花と消えない余韻を重ねた情景。
詞書
「寛平の御時后の宮の歌合の歌」(前の歌と同じ詞書)
作者
素性法師
  1. 1散ち散ちちるとるとると見み見みみててて初句
  2. 2あるべきあるべきあるべき物もの物ものものををを二句
  3. 3梅うめ梅うめうめののの花はな花はなはな三句
  4. 4うたてにほひのうたてにほひのうたてにおいの四句
  5. 5袖そで袖そでそでにとまれるにとまれるにとまれる結句

引用の仕方

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現代語訳

散ってしまったと見て、そのままあきらめていればよいのに、梅の花は困ったことに、香だけが袖に残っていることだ。

意訳

花が散ってしまえば忘れられるのに、香だけが袖に残っていて、かえって恋しさをかきたてる、と梅を恨むように言う。

語釈・文法注

あるべきものを
(散ったと見て)それですむはずなのに。
うたて
いやに、困ったことに。
とまれる
「る」は存続「り」の連体形。

和歌

作者
素性法師(そせいほうし) 生没年未詳(九世紀後半〜十世紀初め)
僧正遍昭の子。俗名は良岑玄利(よしみねのはるとし)といい、父の命で出家した。雲林院や大和の石上の良因院に住み、宇多天皇・醍醐天皇の歌会や屏風歌に召された。三十六歌仙の一人。
出典
『古今和歌集』巻第一・春歌上・47番
歌体
短歌
状況
詞書「寛平の御時后の宮の歌合の歌」(寛平の御時、后の宮の歌合の歌)。

解説

前の歌の「形見」の願いに対し、残り香がかえって悩みの種となると詠む、素性法師の歌。

関連

出典

底本
有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、9頁(コマ18)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日