古典ライブラリー

古今和歌集 巻第一 春歌上 34番

宿近く

読人しらず(よみびとしらず)

家の近くに梅の花は植えまい。むなしいことに、待っている人の香と取り違えてしまったよ。

梅の香に、待ち人の訪れを思い違える女性。宿近くに咲く花と、まだ誰も来ない門口を描いた情景。
梅の香に、待ち人の訪れを思い違える女性。宿近くに咲く花と、まだ誰も来ない門口を描いた情景。
詞書
「題しらず」(前の歌と同じ詞書)
作者
讀人しらず(読人しらず)
  1. 1宿やど宿やどやど近ちか近ちかちかくくく初句
  2. 2梅うめ梅うめうめののの花はな花はなはなうゑじうゑじうえじ二句
  3. 3あぢきなくあぢきなくあじきなく三句
  4. 4待ま待ままつつつ人ひと人ひとひとののの香か香かかににに四句
  5. 5あやまたれけりあやまたれけりあやまたれけり結句

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

家の近くに梅の花は植えまい。むなしいことに、待っている人の香と取り違えてしまったよ。

意訳

梅の香が漂うたびに、恋しい人が来たのかと思ってしまう。期待しては裏切られるので、もう家の近くには梅を植えまい、と恋人を待つ切なさを詠む。

語釈・文法注

うゑじ
「じ」は打消の意志。
あぢきなく
つまらなく、むなしく。
あやまたれけり
「れ」は自発。思わず取り違えてしまった。

和歌

作者
読人しらず(よみびとしらず)
作者の名が伝わらない歌。『古今和歌集』の約四割を占め、撰者の時代より古い歌や、民謡・宴席で歌い継がれた歌、身分の低い人や女性の歌などを含む。
出典
『古今和歌集』巻第一・春歌上・34番
歌体
短歌
状況
題しらず(詠まれた事情は伝わらない)。

解説

香から人を連想する発想は前の歌と同じで、梅の香の歌が続けて並べられている。

関連

出典

底本
有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、6頁(コマ16)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日