古今和歌集 巻第一 春歌上 21番
君がため
あなたのために春の野に出て若菜を摘む私の袖に、雪が降り続いている。

現代語訳
〔詞書〕仁和の帝(光孝天皇)がまだ親王でいらっしゃった時、人に若菜を贈りなさった時の御歌。
あなたのために春の野に出て若菜を摘む私の袖に、雪が降り続いている。
意訳
若菜を贈る相手への思いやりを、雪の降る野で自ら摘んだという労苦によって示す。雪の白と若菜の緑の色の対比も鮮やかな、温かみのある贈答の歌。
語釈・文法注
- 仁和のみかど
- 光孝天皇。即位前は時康親王。
- 若菜
- 正月に摘む春の七草などの若菜。食べると邪気を払い長寿を得るとされた。
- ふりつつ
- 「つつ」は反復・継続。
和歌
- 作者
- 光孝天皇(こうこうてんのう) 830–887
仁明天皇の皇子。陽成天皇が退位したのち、五十五歳で即位した(在位884–887)。和歌や和琴をたしなんだ。仁和の帝とも呼ばれる。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第一・春歌上・21番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「仁和のみかど皇子におましましける時に人に若菜たまひける御歌」(仁和の帝(光孝天皇)がまだ親王でいらっしゃった時、人に若菜を贈りなさった時の御歌)。
解説
百人一首第十五首にも採られた名歌。即位前の、まだ不遇であった親王時代の作とされ、素朴で誠実な人柄がしのばれる。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、4頁(コマ15)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日