古典ライブラリー

古今和歌集 巻第一 春歌上 17番

春日野は

読人しらず(よみびとしらず)

春日野は今日は野焼きをしないでおくれ。若草のようにいとしい妻も隠れているし、私も隠れているのだから。

春日野の若草に身を隠す二人。野焼きをしないでほしいと願う歌に寄せ、野を恋の隠れ場所として描いた情景。
春日野の若草に身を隠す二人。野焼きをしないでほしいと願う歌に寄せ、野を恋の隠れ場所として描いた情景。
詞書
「題しらず」(前の歌と同じ詞書)
作者
讀人しらず(読人しらず)
  1. 1春日野かすがの春日野かすがのかすがのははは初句
  2. 2今日けふ今日けふきょうはははななな燒や燒ややきそきそきそ二句
  3. 3若草わかくさ若草わかくさわかくさののの三句
  4. 4妻つま妻つまつまもこもれりもこもれりもこもれり四句
  5. 5われもこもれりわれもこもれりわれもこもれり結句

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

春日野は今日は野焼きをしないでおくれ。若草のようにいとしい妻も隠れているし、私も隠れているのだから。

意訳

春の野焼きの日、恋人と春日野の草むらに隠れている男が、どうか今日だけは焼かないでくれと呼びかける。若草の萌える野での恋を、民謡風の繰り返しで歌う。

語釈・文法注

な焼きそ
「な…そ」で禁止。
若草の
「妻」にかかる枕詞。
こもれり
「り」は存続。隠れている。

和歌

作者
読人しらず(よみびとしらず)
作者の名が伝わらない歌。『古今和歌集』の約四割を占め、撰者の時代より古い歌や、民謡・宴席で歌い継がれた歌、身分の低い人や女性の歌などを含む。
出典
『古今和歌集』巻第一・春歌上・17番
歌体
短歌
状況
題しらず(詠まれた事情は伝わらない)。

修辞

枕詞
「若草の」が「妻」にかかる。
反復
「こもれり」を繰り返す。

解説

『伊勢物語』第十二段では、「武蔵野は今日はな焼きそ」として、盗んだ女と武蔵野に隠れる男の話に用いられている。古い歌謡の面影をとどめる歌。

関連

出典

底本
有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、4頁(コマ15)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日